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折々の記録

2011~2013年

2013年
2013年12月17日(火) 里山コンサート横浜の開催

  里山コンサート横浜を横浜みなとみらいホールで開催した。約400名の方が来場して満席、盛況のうちに無事終えることができた。このコンサートは、里山の自然や人のくらしを巧みに織り込んだ日本の唱歌を集め、歌やピアノ・ヴァイオリン演奏、踊りやお話などを通じて里山のすばらしさ、たいせつさを伝えるものだ。
   http://satocon2013.jimdo.com/
  私たちの里山コンサートはこれで3回目だが(1回目は東京、2回目は宇都宮)、今回、出演者の美しい歌声や演奏、踊りなどを見聞きして、あらためてほれぼれした。すばらしいコンサートだった。終了後、たくさんの方からご連絡をいただいたが、みな、とても楽しまれた様子で、たいへんうれしく思っている。
  いくつか困難はあったが、とてもやりがいのあるものだった。次回はどこにしようか、宮城?長野?愛知?、それともボストン?などと夢をふくらませている。


 さくらさくらの一コマ。 
 撮影:岸本 伸彦            


2013年12月16日(月) 京都でカラスによるぼや騒ぎ

  15日午後に、京都の伏見稲荷でカラスによると思われるぼや騒ぎが発生した。この日の午後から取材の依頼が入り、きょうの夜まで新聞やテレビのいろいろな取材を受けた。以下は読売新聞の記事。
  http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20131216-OYO1T00163.htm
  私は2002年に同地で、ハシブトガラスによるろうそくの持ち去り行動を観察、撮影した(左の写真)。カラスは野外に立てられているろうそくにやってきて、火をまったくおそれず、くちばしでスパっとろうそくを切って持ち去り、林床の落ち葉や藁ぶき屋根のわらの間に隠す。この場所に立てられるろうそくは和ろうそくなので芯が太く、火種が残っていることがあり、野火に至ることがある。隠したろうそくは、あとになって取り出し、かじって食べる。ろうそくは油脂分をふくむので、カラスの好物と思われる。貯食の対象としてろうそくを使っているということだ。
  今回の件も、こうしたカラスの食習性の結果として発生したものと考えられる。

2013年12月6日(金) 『日本のタカ学―生態と保全―』発刊

  上記の書籍が東京大学出版会から出た(樋口広芳編、定価5000円+税)。18人の執筆陣によるもので、全体で4部(I 分布と環境利用、II 行動圏と資源利用、III 渡り、IV 保全と管理)20章(序章や終章などをふくむ)からなる。執筆陣は大学などの機関研究者だけでなく、在野で生態・保全研究に取り組んでいる研究者をもふくんでいる。現時点で日本のタカ類研究の最前線を紹介した書と言える。
  タカ類の魅力をより深く知りたい方、タカ類の調査、観察に関心をもつ方、タカ類の保全にかかわる方たちにお勧めの一冊である。
  書店に並ぶのは12月10日ころから。



2013年12月2日(月) NHK BSで「アネハヅル 驚異のヒマラヤ越えを追う」放映

  夜8時から1時間、NHK BSプレミアム「ワイルドライフ」で上記の番組が放映された。ヒマラヤの白い峰を越えるアネハヅルの群れや、モンゴルでの子育ての様子などが見事にとらえられており、見ごたえがあった。とくに若いツルの群れが、山腹に発生する上昇気流に乗るために飛行を続ける光景が印象的だった。
  私は番組製作に当初から参加し、ヒマラヤ(ネパール・ジョムソン)での撮影にも同行した。番組の中にも少し登場し、アネハヅルがヒマラヤ越えをする様子や仕組について解説した。よい番組に仕上がっていたので嬉しかった。
  番組の紹介は以下。
 http://www.nhk.or.jp/wildlife/program/p150.html
  左の写真は、ニルギリを望むジョムソンにて2012年10月撮影。

2013年11月26日(火)~28日(木) 韓国ウルサン

  韓国南部の都市ウルサンでInternational Symposium on Migratory Birds2013が開かれ、基調講演をした。演題はMigration and conservation of birds in East Asia。ほかの講演は、オーストラリアの研究者によるシギ類の渡りと保全、台湾の研究者によるバードウォッチングを利用したエコツーリズム、韓国の研究者による韓国南部の鳥類の渡りと保全などについてのものだった。主催はウルサン市、会場はウルサン市庁。市民を中心に300名ほどが参加していた。
  ウルサン市は、ミヤマガラスが秋冬期に大集結することで有名な場所。夕刻と早朝に、Taehwa川沿いの竹林のねぐらから出入りする約3万羽のミヤマガラス(とコクマルガラス)のおびただしい群飛を観察することができた(写真)。Taehwa川には、ほかにオオバン、ヒドリガモ、マガモ、カルガモ、アオサギ、カワウ、カンムリカイツブリなどが群れていた。


2013年11月17日(日) 東京で講演

  藤原ナチュラルヒストリー財団主催のシンポジウム「暗黒の自然史」で「鳥の渡りを追う」について講演した。具体的には、鳥によって異なる渡り経路、夜間の移動の実態、日中や夜間の方向定位などについて話した。会場は上野の国立科学博物館の講堂。ほかには、「地中世界のモグラを追って」(川田伸一郎、国立科博)、「暗闇に光るヒカリゴケ」(樋口正信、国立科博)、「暗闇が生み出した究極の深海動物の自然史」(和辻智郎、海洋開発研究機構)などについての講演があった。
  暗闇の世界でいろいろな生きものがどのようにくらしているのかを学ぶよい機会だった。終了後、懇親会があり、関係者と歓談した。楽しく、有意義な時をすごすことができた


2013年11月14(金)~16日(土) 京都、大阪へ

  龍谷大学での講義や大阪バードフェスティバルでの講演のため、京都、大阪方面に出かけた。15日の龍大深草キャンパスの講義では、「鳥のくらしと人のくらしー生命(いのち)のにぎわいを求めてー」について話した。また、終了後、同大の深草町屋キャンパスで有志対象に「放射能汚染が動植物の繁殖、生存、分布に及ぼす影響 ―チェルノブイリ原発事故25年後の自然の世界―」について話した。
  同日、午前中には、特別のはからいにより、西本願寺で建物内の襖絵や欄間の彫り物などを見せてもらった。襖絵などには、ガン、ツル、コウノトリ、スズメなど、いろいろな鳥が描かれ、あるいは彫られており、とても興味深かった。
  翌16日の大阪では、バードフェスティバルの招待講演として「鳥の渡りと生物多様性の保全」について話した。会場は大阪市立自然史博物館の講堂。230席ほどが満席になる盛況ぶりで、話しがいがあった。帰路、園内で人慣れスズメに出合った(左の写真)。人の手のひらに積極的に乗る気配はなかったが、10羽前後のスズメが人をおそれずに近寄り、手から餌をもらって食べていた。

2013年10月27日(日) 横浜市氷取沢

  台風一過、秋晴れの氷取沢を訪れた。実が多数なる柿の木で、何羽ものハシブトガラスが入れ替わり立ち替わり大きな実をもぎり、くわえたまま飛び去ったり、その場や近くの樹上で食べたりしていた(写真)。くわえていく場合、枝ごともぎとって持ち去ることもあった。大きな実をくちばしにくわえて飛ぶのは重いのではないかと思われたが、そんな様子はなかった。その場で食べているものの中には、食べ残しの実を同じ太枝上の近くの小枝に挟んでおくものもいた。モズのはやにえのような感じだ。貯蔵の一種なのだろうか。
  ヤマガラが数羽、木の実をつついて食べている様子もよく観察できた。高木の中ほどから地表付近まで移動しながら、採食を続けていた。ほかのカラ類と混群をつくっている様子はなかった。



2013年10月21日(月) 茅ヶ崎里山公園

  久しぶりに茅ヶ崎里山公園を訪れた。あちこちの梢でモズが高鳴きをし、田んぼや畑にはハクセキレイが多数いた。池にはカルガモとコガモ。鳥以外では、アキアカネが池のほとりの手すりに、一定間隔で多数とまっていた。
  農家の庭先などには、柿の木が鈴なりになっていた。ススキの穂が風にたなびき、すっかり秋の気配。しかし、ちょっと汗ばむような暖かさもあり、そのせいか、ミンミンゼミが1個体、最後の声を振り絞るようにミ~ン、ミ~ン、ミ~ンと力なくゆっくり鳴いていた。ハクセキレイの中には、水田で気持ちよさそうに水浴びをし(写真)、羽づくろいするものもいた。

2013年10月19日(土) 自然環境保全センターで講演

  厚木市七沢にある神奈川県立自然環境保全センターで、「鳥の渡りと地球環境の保全」について講演した。中学生から熟年層まで多数来場し、いろいろな質問も出て有意義な時をすごすことができた。
  同センターは県内、とくに丹沢・大山地域の自然環境保全に力を注いでいる。また、敷地内には林や小川、池沼などが広がり、散策しながら自然観察を楽しむことができるようになっている。この自然を生かした啓蒙普及活動も、いろいろ行なわれているようだ。傷病鳥獣のリハビリ施設もあり、オオタカ、ハヤブサ、トビ、タヌキ、ハクビシンなどが収容されていた。
  時間が限られていたので、次の機会には自然観察を目的に訪れてみたい。

2013年10月15日(火) 車の窓ガラスやバックミラーを見てまわるヤマガラ

  早朝、SFCの中を歩いていたら、車の窓ガラスやバックミラーに映る自分の姿を見てまわるヤマガラに出合った。このヤマガラは、駐車スペースに止めてある車を順に飛びまわりながら、その行動を続けていた。20分くらいの間に見てまわった車の数は15台くらい。窓ガラスにとりついたり、バックミラーをのぞきまわったり、忙しく動きまわっていた。ただし、ガラスや鏡に映る自分の姿に跳びかかるようなことはしなかった。
  数日前には、近くの教職員用レストランの窓辺にきて、ガラスを見てまわるヤマガラがいたとのこと。おそらく同じ個体なのではないかと思われる。鏡の中の個体(自分)に攻撃するわけでもなし、鏡に映る自分の姿を楽しんでいるのでもないだろうし、ちょっと奇妙でおもしろい行動だ。



2013年10月14日(月) 舞岡公園

  久しぶりに横浜の舞岡公園を訪れた。体育の日の休日とあって、たくさんの人が訪れていた。散策する人たち、キノコ狩りのグループ、鳥の写真をとる人たちなど、それぞれに楽しんでいるようだった。
  冬鳥の渡来にはまだ早いようだったが、渡り途中のキビタキ、高鳴きをするモズ、エゴノキの実をせっせと貯えるヤマガラ(写真)などがあちこちで見られた。あるエゴノキの木には、少なくとも5羽以上のヤマガラが次々にやってきていた。
  池のほとりでは、カワセミを比較的近い距離からじっくりと見ることもできた。
  舞岡の駅の近くでは、ソメイヨシノが花を咲かせていた。秋の狂い咲きだろうか。春の花のような華麗さはなく、花数も限られていた。

2013年10月8日(火) 新宿御苑

  新宿御苑で会議があり、終了後、園内を散策した。シジュウカラ、コゲラ、メジロ、ヒヨドリなどが見聞きできたが、鳥の気配は全体に希薄だった。池にはカルガモと右の写真のシラサギがいた。このサギはダイサギほど大きくなく、首もそれほど長くない。が、くちばしはダイサギ並みに長い。チュウサギのように首を斜めに伸ばして、魚の動きを追うこともする。まぎらわしい鳥だったので、また至近距離まで近づけたので、写真をたくさん撮っておいた。
  都内にこれだけの緑地があるのはすばらしいことだ。あらためてそう感じた。海外の人も数多く散策していた。



2013年10月6日(日) スズメやムクドリのねぐら

  各地でスズメやムクドリの大きなねぐらが見られるようになっている。きょうは、逗子の亀岡八幡宮境内の樹木で集団ねぐらをとるスズメやムクドリを観察した。神社に隣接する道を歩いているだけでものすごい数の鳥の声が聞こえてくる。5000~6000羽はいるものと推定される。ムクドリはムクドリと、スズメはスズメとねぐらをとる傾向がある。
  道行く人たちは、これらの鳥をとくに気にする様子はない。が、境内の中にいると、樹上から糞が落ちてくる。数がもっと増えてきたら、騒ぎになるかもしれない。
  写真は樹上でねぐらをとるムクドリの群れ。

2013年9月27日(金)~30日(月) 台湾

  テレビ番組の取材協力のため、台湾を訪れた。タカ類の生息状況についての情報収集が目的で、台北とその近郊の烏来、台中とその近郊の埔里などの主に森林地帯を見てまわった。久しぶりの台湾訪問だったが、緑に包まれ、山並みの美しい大地が連なる景色に安らぎを感じた。宿泊は台北、台中ともに行政院林業試験所のゲストハウス。どちらも深い山中にあったが、森林に囲まれ、鳥たちのさえずりが響きわたり、快適だった。
  期間中ずっと、台湾猛禽研究会のメンバーが同行してくださり、とても親切にしてくださった。台湾と日本のタカ類やほかの鳥、自然をめぐっていろいろな情報交換ができ、すばらしい時間をすごすことができた。深く感謝している。
  タカ類ではカザノワシ、カンムリワシ(右の写真)、トビ、ハチクマなどが見られた。カザノワシが森林の上空をゆうゆうと舞う様子は見事だった。ほかの鳥では、チメドリ類、ズグロミゾゴイ、クロヒヨドリ、シロガシラなどが目についた。哺乳類ではキョンやタイワンリス、アカゲザルをまじかで見ることができた。



2013年9月22日(日) ボラの群れ

  横須賀港の沿岸付近にボラが群れていた。体長数センチの幼魚から数10センチになる大きなものまで、大きさごとに異なる群れをつくって泳いでいた。行ったり来たりしながら海面付近を泳ぎ、時おり空中にジャンプしていた。数100尾からなる群れは、海面付近にもりあがるように密集していた。
  道行く人たちもこの魚影に気づき、みな驚きながら見ていた。この時期のボラの群れは、秋の風物詩の一つになっているようだ。

2013年9月13日(金)~16日(月) 日本鳥学会大会に参加

  名古屋の名城大学で開かれた鳥学会大会に参加し、「ハチクマの興味深い渡り事例」について一般講演した。話の内容は、秋に春の経路を逆戻りするように朝鮮半島を北上する例や、春に朝鮮半島の南端どまりで日本の繁殖地に戻ってこない例など、通常とは異なる渡りの紹介だった。今年の参加者は500名ほど。大会シンポジウム「鳥類がもたらす生態系サービス」が、ちょっともの足らなかったが、興味深かった。
  各地に大雨や暴風をもたらした台風18号の影響を受けて、帰りの新幹線への乗車に苦労した。が、どうにか無事に戻ってくることができ、ほっとした。

2013年9月4日(水)~11日(水) サハリン

  ロシア科学アカデミー極東支所の招待で、国際シンポジウム“Avian Migration in the Northern Pacific: Breeding and Stopover Sites in Changing Earth”に参加。Bird Migration and biodiversity conservation in Asiaについて基調講演した。東アジアの渡り鳥の生態と保全をめぐるシンポジウムだったので、これまで追跡してきたカモ類やハクチョウ類などの中継地や繁殖地での現状を知る上でとても参考になった。また、Dr. A. V. Kondratievなど、関連研究を行なっているロシアの研究者と知り合いになれたのも、大きな収穫だった。
  後半は、3日間フィールドツアーに参加した。東海岸のTikhaya Bay、西海岸のNovoselovo Village、南端のAniwa Bayなどに出かけた。オジロワシ、トウネン、ミユビシギ、キアシシギ、キョウジョシギ、アオアシシギ、ハマシギ、メダイチドリ、ダイゼン、ハシボソガラス、オオセグロカモメ、ウミネコ、セグロカモメ、ユリカモメ、ヒメウなどが観察できた。海岸線はどこも広大で、すばらしい景観をつくり出していた。
  この時期、サケがあちこちの川を遡上しており、そうしたところでは、カモメ類がサケの死体をついばむ光景が見られた(写真)。



2013年8月27日(火) ツバメの遅い育雛

 京浜急行神武寺駅の構内で、ツバメが遅い子育てをしている。ひなの数は4羽。今月末までにひなが巣立つことはむずかしいのではないか。が、4羽はともかく元気に育っている。通勤に使っている駅なので、毎日、成長の様子を見ることができている。
 ツバメは、毎年この駅の構内に巣をつくる。繁殖に入るのはいつも8月に入ってから。ほかで繁殖したつがいが、ここで年の最後の子育てを行なっているようだ。少し奥まった位置に巣をつくるので、カラスによる捕食には遭わずにいる。
 猛暑が続いた今年の8月も、あと4日で終わり。まだ暑さは続いているが、多少涼しさも感じられるようになってきており、夜には虫の音が響いている。

2013年8月21日(水) 谷津干潟

 習志野市の谷津干潟に出かけた。ラムサール条約の登録湿地だが、干潮時には干潟の3分の2ほどがアオサでおおわれ、その部分は水鳥の生息地としてはほとんど機能しない。近年、シギ・チドリ類の渡来数の減少も著しい。
 限られたいくつかの砂泥面に、オグロシギ、オオソリハシシギ、キアシシギ(写真)、トウネン、キョウジョシギ、メダイチドリ、ムナグロなどが群れていた。総数150ほど。オグロシギやオオソリハシシギの中には、夏羽を一部残している個体もいた。キョウジョシギは、貝や石のたまっている部分で、それらをくちばしでひっくり返しながら採食していた。
 夕方、潮が満ちてきた折、ひとかたまりになった鳥たちの姿が水面に映り、美しい情景をつくり出していた。キアシシギの哀愁に満ちた鳴き声も、耳に残った。



2013年8月15日 三宅島

 休養をかねて、昨日から三宅島にきている。東京のような暑さではないが、やはり暑い。鳥たちの多くもなりをひそめている。換羽期であることも、もちろん関係しているのだろう。比較的目につくのは、メジロの若鳥(写真)やカラスバト。また、海岸の磯付近では、イソヒヨドリの雄どうしがなわばり争いをしている。空中をひらひら飛びながらさえずり、侵入個体を追い払う光景が見られる。
 オニヤンマが家の中に飛び込んできた。めずらしいことだ。
 

2013年8月11日(日) 森ヶ崎でコアジサシの観察

 リトルターンプロジェクトの有力メンバーの案内で、東京都大田区の水再生センター屋上で繁殖するコアジサシの状況を観察した。今年は、ここ2,3年の中ではもっとも多くのコアジサシがこの場所で繁殖した。推定述べ繁殖例数は150ほど。今の時期は遅い繁殖例だが、まだ5,6つがいで巣内あるいは付近にひながいた。
 ここ数年、カラスによる捕食が続いていたが、今年はカラス対策グッズ「いやがらす煌き」が功を奏してか、ほとんど捕食されていない。
 この場所では、約6haの広大な屋上がコアジサシの繁殖用に確保されている。これまでで最多の営巣数は約2000。年によって大きなばらつきがある。熱心なボランティアの方たちや地域の行政などの努力によって、生息地の管理その他がおこなわれている。



2013年8月9日(金) 舞岡公園

 うだるような暑さの中、舞岡公園を歩いた。あいかわらず、シオカラトンボがあちこちで多数見られ、ショウジョウトンボ(写真)が散見された。ウグイスをふくめて、鳥たちの声はあまりせず。カイツブリが1羽、池の巣の残骸のそばにいた。植物ではタマアジサイの花が目についた。舞岡駅から舞岡公園に向かう途中、サルスベリのピンクの花がきわだっていた。

2013年7月28日(日) 横浜、舞岡公園

 真夏の舞岡公園を訪れた。イネが高さ40~50㎝ほどに伸び、水田が緑に輝いていた。ボランティアの人たちがスズメよけの青いネットを張っていた。田んぼや池では、シオカラトンボがあちこちで見られ、ショウジョウトンボも散見された。チョウのルリシジミも目についた。
 池では、カイツブリ(写真)のつがいが巣の補修をしていた。巣は、おそらく人工の台座の上に枝葉を積み重ねてつくってある。この補修のような行動は、半月ほど前から行なっている。小鳥たちは換羽の時期に入ったのか、おとなしかった。外来種のガビチョウだけが、大きな声でさえずっていた。



2013年7月20日(土)~22日(月) 熊本水前寺公園ほか

 ササゴイの投げ餌漁についての講演と観察のため、熊本を訪れた。投げ餌漁とは、魚の生き餌になる昆虫やミミズ、疑似餌となる木の葉や羽毛などを使って魚を引きつけ捕らえる漁法だ。野外観察は、熊本マリスト学園高校の生徒や教員、日本野鳥の会熊本支部の会員の方などとともに、水前寺公園や江津湖の周辺などで行なった。
 投げ餌漁は複数個体を対象にじっくりと観察、撮影できた。1980年代に観察したような、非常に高度な投げ餌漁を見せる個体はいなかった。が、これらの例は、行動の発達段階を知る上ではとても参考になった。
 当地のササゴイによる投げ餌漁は、1980年代から30年ほども継続して見られている。ササゴイは世界中に分布しているが、これほど長期にわたって投げ餌漁を見せる個体のいる地域は、ほかにほとんどない。写真は、イトトンボを餌にして投げ餌漁を行なうササゴイ。

2013年7月7日(日) 葉山・森戸川

 このところ、神奈川県葉山町の森戸川に頻繁に通っている。ホトトギスの托卵について調べるためだ。また、ヤマガラやオオルリ、サンコウチョウ、カワセミ、キセキレイなどが観察しやすいので、それも楽しんでいる。
 この時期、数多くの人がオオルリやサンコウチョウの撮影のためにこの場所を訪れている。今年は見やすい位置にサンコウチョウが巣をかけたために、その撮影に1日だけで30~50人ほどの人が集まってくる。大部分は60代から70代の方だ。高価な望遠レンズをカメラにつけて撮影している人が多い。
 一日中、たくさんの人が見つめる中でサンコウチョウは子育てを続けている。人の群れをそれほど気にしているようには見えないが、ヘビなどの捕食者に巣やひなが気づかれないか、心配だ。私はこの巣の付近では、いつも短い時間だけそっと観察、撮影して、その場を立ち去っている。無事にひなが巣立つことを願わずにはいられない。

2013年6月26日(水)~30日(日) 山形から長野へ

 インドネシアの研究者二人とともに、ハチクマの環境選択調査のために山形県と長野県を旅した。山形では南部地域を、長野では北部から中央部にかけてまわった。衛星画像上に落とした衛星追跡地点をたどりながら、目視で環境特性を確認していく作業を行なった。
 インドネシアの研究者、リアさんとアフラさんは、ともにボゴール農科大学の専任講師。地理情報の解析を専門にする人たちで、衛星追跡したハチクマの越冬地での環境解析にこれまでたずさわってきた。繁殖地の環境も見てみたいということで、今回、一緒に見てまわることになった。
 山形、長野ともに、ハチクマ研究者とのよい交流の機会があった。
 梅雨時であるにもかかわらず、期間中ほとんど雨に降られず、山形では飯豊連峰の美しい山並みをながめることができた(写真)。


2013年6月25日(火) THE JOURNEY OF BIRDS -Satellite-tracking Bird Migration-の発行

 『鳥たちの旅―渡り鳥の衛星追跡―』(NHK出版、2005年)の英語版が電子書籍として発行された(天野麻里・訳、SELC Co. Ltd.発行、定価880円)。iPadを使って購入、利用することができる。英語版ではあるが、単なる日本語から英語への翻訳ではなく、最新の研究成果を加えてある。とくにハチクマの渡りについては、その後の多くの情報をとりこんである。
 これで中国語版、韓国語版、英語版の3つが出たことになる。現在、インドネシア語版も準備中だ。英語版の電子書籍は、日本語版などでは白黒だった写真やイラストがカラーになっており、より見ごたえのあるものとなっている。
 英語圏の方を中心に、多くの方に読んでいただけることを願っている。
2013年6月24日(月) 「ハチクマプロジェクト」春の渡り追跡、終了

 Naoの新しい位置が経路図上になかなか出てこないが、LCBの低い精度の位置情報からすると、韓国の南端に滞在しているようだ。対馬を目前に控えた場所だが、このまま滞在し続けるものと予想される。
 「ハチクマプロジェクト」春の渡り衛星追跡の公開は、本日で終了とさせていただいた。Kuroの位置情報がマレー半島中央部で途絶えてしまったが、KenとYamaは昨年夏の繁殖地まで追跡することができた。またNaoも、意外な結果だったが、旅の終わりまで明らかにすることができた。
 春の渡り追跡は、はらはらどきどきの連続だった。時間がたって送信機の状態がよくなくなってきたためなのか、東アジアのこの時期の受信状況が好ましくないからなのか、予定された日に位置が現れないことがよくあった。しかし、その分、移動の様子をしっかりとながめることができた。私自身、こんなに克明に、何度も何度も、滞在地点や移動の様子を見たことは今までなかった。
 昨年9月の秋の渡り開始時点からすると、9か月が経過している。途中、冬の2か月間の休止時期を除いても、7か月間、Ken, Yama, Nao, Kuro4羽の移動の様子を見てきたことになる。あらためて秋と春の渡り経路をながめてみると、ハチクマたちの渡りは、すごい!の一言につきる。大きな迂回経路をたどって越冬地や繁殖地にたどりついていること、90度かそれに近い角度で何度も方向転換していること、春は朝鮮半島をぐるっとめぐって日本に入ってくること、であるにもかかわらず戻る場所は前年の繁殖地と変わらないことなど、見れば見るほど驚きだ。
 このハチクマプロジェクトは、多くの団体や個人の方々のご寄付によって実施することができた。経路図の自動化やウェブサイトの構築、多言語での情報発信、野外調査などは、プロジェクトメンバーのボランティア活動によって行なわれた。ご寄付、ご協力いただいた方々に、厚くお礼申し上げたい。また、追跡期間中には、ごらんいただいている皆さんから、さまざまなご意見や情報提供をいただいた。たいへん励みになり、うれしかった。
 渡りの衛星追跡公開プロジェクトは、今後、しばらく時間をおいて、おそらく別の鳥を対象にして行ないたいと思っている。その折にはまたごらんいただき、ご意見や情報提供などいただきたい。


2013年6月16日(土)~17日(日) 淡路島でビワ調査

 カラスによるビワの種子散布を調べるため、兵庫県の淡路島を訪れた。淡路島はビワの産地としてよく知られている。現地の方の案内で、島の北から南までビワ園とその周辺を広く見てまわった。野生化したビワは、島の北側と南側を中心にあちこちで見られた。ビワ園から雨や風によって逸出したものもあるようだが、なんでこんなところにと思われるものも多く(写真)、おそらくカラスが種子散布した結果であると思われた。
 淡路島のビワ園は、カラスやイノブタなどによる食害、ビワ農家の後継者不足など、いくつか重大な問題を抱えている。大規模に放棄されたビワ園もいくつか見られた。そこでは、袋がけされないビワの実が黄色くたわわになっていた。
 今年は、東京と神奈川でも、カラスによるビワの種子散布の調査を行なっている。淡路島の例と合わせて、「カラスがつくるビワ園」についていろいろ興味深い結果が得られている。
 

2013年6月1日(土)~3日(月) 山形へ

 ハチクマ関連の調査のため、山形県の米沢近郊に出かけた。梅雨入り宣言後まもない時期なのに好天が続き、山の新緑が目にまぶしかった。ホオノキ、トチノキ、タニウツギ、フジなどの白やピンク、紫の花があちこちで見られ、緑の中に映えていた。衛星追跡中の複数のハチクマを、目視や受信機などによって確認することができた。渡りの公開プロジェクトでつぶさに追跡してきたこともあって、ハチクマの姿を見るたびに、あんな長い長い旅を経てここにきているんだなぁとあらためて感動した。
 ハチクマ以外には、ノジコ(右の写真)、ホオジロ、キビタキ、ヒヨドリ、ホトトギス、ツツドリ、ヨタカなどを見聞きした。鳥以外の動物では、、ウスバシロチョウ、ツチガエル、モリアオガエル、タヌキ、ニホンノウサギなどを見ることができた。


2013年5月24日(金)~27日(月) 三宅島

 噴火後の生態系回復状況の調査のため、三宅島を訪れた。天候に恵まれ、すばらしい時をすごすことができた。太路池は、照葉樹林の新緑が終わり、森の緑が少しずつ濃さを増していた(右の写真)。湖の周辺では、ホトトギスのけたたましい声に混じって、カッコウののどかな声も聞かれた。カッコウは伊豆諸島では繁殖せず、通過するだけ。山の緑も、いくつかの場所で上方にせりあがってきている。ただし、依然として崩壊状態のところも多い。
 島の東北部にある住まいの周辺は、ウチヤマセンニュウの繁殖地になっている。住まいの窓からでも、さえずっている様子を見ることができる。朝はホトトギスとウチヤマセンニュウの声で目がさめる。幸せなことだ。


2013年5月10日(金) Journal of Ornithologyの総説論文

 Springer社から連絡があり、昨年Journal of Ornithology誌に掲載された以下の私の論文が、昨年同誌に掲載された論文中、数多くダウンロードされた論文トップ10の中に入ったとのこと。うれしい知らせだ。

Higuchi, H. 2012. Bird migration and the conservation of the global environment. Journal of Ornithology Volume 153, Issue 1, Supplement:3-14.

 Journal of Ornithologyはドイツ鳥類学会の国際誌で、発行160年の歴史をもつ。ドイツ鳥類学会編集のもとで、Springer社が発行している。上記の私の論文は、2010年にブラジルで開かれたInternational Ornithological CongressのおりのPlenary Lectureにもとづくものだ。


2013年5月9日(木) 『鳥・人・自然―いのちのにぎわいを求めて―』を出版

  東大出版会から上記の本を出版した。あす、店頭に並ぶ予定。以下、「はじめに」より抜粋。「鳥とのつき合いは、鳥をとりまく自然とのつき合いであり、また鳥や自然とかかわる人とのつき合いでもある。そこにはいろいろなドラマがあり、刺激に満ちた時間がある。本書で私は、私がこれまでに見聞きしてきた鳥の世界のおどろきや不思議、また鳥を生かす自然の成り立ち、そして鳥にかかわるさまざまな人間模様について紹介していこうと思う。とりあげる話題は、身近な鳥との出合い、一期一会とも言える貴重な出合いから、カラスの多様な食習性、鳥たちの不思議な旅、最近の原発事故が鳥や自然におよぼす影響、テレビドラマに登場する鳥たちに至るまでいろいろである。後半では、関連の研究を志す若い人たちへの参考となることを願って、私個人の研究の筋道についても紹介したい。」
 多くの人に読んでいただければ嬉しい。

2013年5月5日(日) アメンボの観察

 本日も快晴。葉山の森戸川に出かける。今年はオオルリの密度が、例年の3分の2くらいでしかない。センダイムシクイは例年と同様。ヤブサメやサンコウチョウは、見聞きできない。
 川辺に降りて、アメンボを観察した。長細い足をいっぱいに開き、表面張力を利用して水面を自在に動く(写真)。すばらしい体のつくりと移動の仕方に、感動せざるをえない。こんな小さな生きものにも、生きかたのありようにいろいろな工夫が(もちろん進化上の)見られ、実に興味深い。足もとの水のへこみが、水底に影をつくり、おもしろい造形美をつくり出していた。
 ミズキやヤブデマリの白い花が、とてもよく目立った。ノダフジの花は、最盛期をすぎているが、場所によってはまだ十分に美しかった。


2013年4月4日(土) クロアシアホウドリの生息地発見のニュース報道

 本日早朝、NHKのニュースで、八丈小島のクロアシアホウドリの楽園誕生が報道された。私の撮影したビデオ映像も使用された。以下のサイトで見ることができる。

   http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130504/k10014358191000.html

 関心のある方は、ごらんいただきたい。


2013年5月3日(金) 葉山・森戸川

 連休後半の初日、快晴のなか、森戸川に出かけた。新緑がまぶしいくらいに美しく、川沿いの森の散策はすばらしく快適だった。オオルリ、センダイムシクイなどの夏鳥のほか、常連のヤマガラ、シジュウカラ、ヒヨドリ、メジロ、カワセミ、ハシブトガラス、ガビチョウなどを見聞きできた。
 チョウやトンボの観察も興味深かった。チョウは、アオスジアゲハ、カラスアゲハ、モンキアゲハ、ジャコウアゲハ、コミスジなどが飛んでいた。トンボでは、ニホンカワトンボとアサヒナカワトンボ(写真)と思われる個体が、近接するコクサギの葉にとまっていた。この2種のトンボは分類がむずかしく、雌雄や個体変異をめぐって野外での種の識別は困難なようだ。

2013年4月25日(木) 八丈小島にクロアシアホウドリの楽園誕生

 伊豆諸島の八丈島の属島で無人島の八丈小島に、クロアシアホウドリの楽園が誕生した。保全上などの目的でこれまで情報を伏せてきたが、現在、30~50羽ほどが生息している。今月下旬、私自身も確認した(右の写真)。
 小島では、すでに求愛行動が盛んに行なわれており、一部の個体は地表面に産座のへこみもつくっている。早ければ、今秋にも産卵するのではないかと推測される。
 本日、地元紙をふくむ新聞各紙に状況が掲載された。
   →毎日新聞の報道
 今後、立ち入りを制限したり、鳥たちの行動を監視する自動カメラを設置するなどの措置がとられる必要がある。クロアシアホウドリの個体数が増えてくれば、いずれアホウドリもやってくることが期待される。そうなれば、この地は近い将来、世界的に注目されるアホウドリ類の繁殖地になるのではないかと思われる。


2013年4月25日(木) 日比谷公園に人慣れスズメ

 東京千代田区の日比谷公園内にあるレストランで食事をしていたら、スズメがテーブルまでやってきた(写真)。上野公園のスズメほど人に慣れているわけではないが、テーブル上の食物のかけらなどを抵抗なくついばんでいった。3羽ほどが、入れ替わり立ち替わりやってきていた。
 店の人の話では、席を立つと皿の上の食物をどんどんついばんでしまうので注意してほしい、とのことだった。別のテーブルで手から何かを与えようとしている人がいたが、スズメは少し警戒している様子だった。
2013年4月18日(木) 「触れる地球展2013」のトークショウに出演

「触れる地球」の普及版ができたのを祝って、東京・六本木のギャラリーLe Bainでトークショウが行なわれた。触れる地球は、京都造形芸術大学の竹村真一教授がプロデュースしたもの。ハイテク地球儀の中に、気象、地震、津波、生物、社会などさまざまな情報が組み込まれている。
 トークショウには、竹村先生、東京大学名誉教授で大気海洋科学の山形俊男先生、フォトジャーナリストの広河隆一さんと私の4名が出演した。触れる地球にそれぞれのかかわる画像や映像を映し出し、会場の参加者からの質問も受けながらいろいろ議論した。私は鳥の渡りを通じた地球環境の保全について話した。山形先生の海洋科学の話題、とくにエルニーニョをめぐる研究は、たいへん興味深く、また鳥の渡り研究ともつながるところがあり、学ぶところが多かった。
 異分野の方との交流は、いつも刺激に満ちている。


2013年3月29日(金) SFCでの生活、一年経過

 10日ほど前から、鴨池のカモ類の種構成が変わってきている。冬の間優占していたマガモが姿を消し、代わりにカルガモが増えてきた。また、新たにヒドリガモが少数加わった(左の写真)。現在、カルガモ約50羽、コガモ約20羽、ヒドリガモ約5羽といったところだ。アヒルはいつもと変わらずいついている。
 SFCにきてから1年が過ぎようとしている。キャンパスの様子もだいぶわかってきた。周囲をふくめて自然に恵まれ、またよい仲間や学生にも恵まれ、充実したときをすごすことができている。
 この日、満開のサクラのあちこちにヒヨドリが吸蜜にやってきていた。新しくしたトップページの写真は、そうした一コマだ。

2013年3月28日(木) サクラ満開

 南関東では、サクラが満開を迎えている。ソメイヨシノ、ヤマザクラ、オオシマザクラ、どれも満開か、場所によってはそれを少し過ぎている。きょうは舞岡公園に出かけ、自然探索しながらサクラの写真を撮った(右の写真はソメイヨシノ)。
 木々が葉を開き始め、里の景色がうっすら緑色になっていた。コジュケイがあちこちでやかましく鳴いていた。姿も比較的目についた。繁殖時期を迎えつつあるのだろう。池のアオサギやカルガモ、田んぼのハシボソガラスなどの採食の様子がよく観察できた。
 暖かでよい一日だった。



2013年3月24日(日) 横須賀安針塚

 韓国出発前には目立たなかった桜の花が、帰国してみたらすでに見ごろになっていた。今年はこの時期、モモ、ヤマザクラ、オオシマザクラ、ソメイヨシノ、コブシ、キブシ(写真)、タチツボスミレ、ウラシマソウなどの花が同時に見られる。例年だと少しずつ開花時期がずれるのに、みな一斉に咲き始めた感がある。
 きょうは横須賀の安針塚を散策し、上記のいろいろな花を楽しんだ。花曇りの日であったが、心地よい気温のもと、快適にすごすことができた。ソメイヨシノの木々の下では、観光客がお花見を楽しんでいた。

2013年3月20日(水)~22日(金) 韓国ソウル

 森林性鳥類の保全についての国際ワークショップに参加し、講演した。会場はソウル市内にある唯一の国立公園、Bukhan National Park内のホテル。参加者は韓国、日本、タイ、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、イギリスなどの研究者や保全関係者(写真)。東アジアでの森林性鳥類の現状、モニタリングなどの実施状況、今後の協力体制のあり方などについて議論した。
 私は2日目、各国からの現状報告のセクションの座長をつとめ、またPopulation decline of tropical migratory forest birds in Japanと題して、日本での夏鳥の現状について講演した。東アジアでのこの分野の調査、研究は非常に遅れているが、それを共通認識とし、今後の協力について議論できたのはたいへん実り多いことだった。



2013年3月17日(日) 横浜・氷取沢

 きょうは山道の散策。春霞の天候であったが、暖かくて快適だった。
 あちこちの林縁にキブシの花が咲き、春景色をつくり出していた。コブシも見頃。林床にはタチツボスミレが咲き誇り(写真)、にぎわいを増していた。
 市民農園のキャベツ畑が、タイワンリスやヒヨドリにひどく食い荒らされていた。収穫可能な残り少ないキャベツを、親子が収穫しているのが印象的だった。

2013年3月16日(土) 横浜市舞岡公園

 暖かな日差しの中、舞岡公園で自然探索した。10日前と少し違って、コブシ、モモ、タチツボスミレなどの花が見事に咲いていた。農家の庭に咲くウメとモモの花がひときわ美しかった(写真)。ウグイスがあちこちでさえずり、シジュウカラ、ヤマガラ、アオジ、、ヒヨドリ、メジロ、モズ、ムクドリ、アオゲラ、キジバト、コジュケイなどがよく観察できた。タイワンリスの巣があちこちにあり、鳴き声も聞かれた。
 あと1週間もすれば、ヤマザクラやソメイヨシノの花が見られるだろう。



2013年3月6日(水) 横浜市舞岡公園

 講義や実習の資料を集めに、横浜市戸塚区にある舞岡公園を訪れた。舞岡公園は、昔ながらの谷戸の田園風景を残した自然公園だ。初めて訪れたが、私が高校時代まですごした金沢区の風景を思い出させる場所だった。
 金沢の谷戸では当時、夏にはオニヤンマやギンヤンマが飛び交い、タニシやシジミがとれ、秋にはシギやチドリが訪れた。この舞岡公園では、今でもそんな生きものの世界が展開されているのだろう。林や田んぼのあちこちでは、多くの人が散策を楽しんでいた。バードウォッチャーの姿も目についた。
 これから四季を通じて、この場所を訪ねることにしよう。

2013年3月2日(土) ウメの花が見頃

 湘南地方でウメの花が見頃を迎えている。今年は冬の寒さがきびしいためか、開花や見頃の時期がだいぶ遅れている。
 きょうは横須賀の武山付近を散策した。畑の縁でそこはかとなく咲くウメも、家の庭で見事な花を開くウメも(写真)、ともに春の訪れを知らせている。
 野辺にはスイセンや菜の花が咲き乱れ、ササやぶからはウグイスのさえずりも聞こえてきた。武山付近はイチゴの生産地として知られている。観光農園があちこちにあり、この時期、イチゴ摘みに訪れる人が多数いる。



2013年3月1日(金) 西丹沢

 バードライフ・アジアの岸本伸彦さんの案内で、シカによる森林被害などを見るために西丹沢を訪れた。丹沢に出かけたのは10数年ぶり。春一番が吹き荒れる天候であったため、山歩きは控えめにし、標高500~600mのあたりを中心に見てまわった。予想どおり、林床植生は大きな被害を受けており、造林樹木の地表から数mまでの幹のまわりには、食害よけに網がまかれていた。
 印象的だったのは、ミツマタがあちこちで目についたこと(写真)。シカに食べられないため、貧弱な林床や林縁で目立っているようだ。
 途中、「足柄の秘湯」中川温泉で湯につかり、快適な時をすごした。

2013年2月18日(月) 三宅島

 昨日から三宅島にきている。目的は2000年噴火後の生態系の回復状況調査。これまで太路池、村道雄山線、薬師堂神社などを見てまわった。山腹をハチジョウススキやイタドリなどが、かなりせりあがってきている。はちまき道路のあった付近は裸地のままのところが多いが、この春には緑がまた増えるのではないかと予想される。
 昨年の同じころには鳥が少なかったが、今冬は多め。島のいたるところにウソがいる。お腹の赤っぽいアカウソがよく目につく。マヒワも多い。ウグイスやミソサザイはさえずっている。アカコッコ、カラスバトは少数、どこにいっているのか。ヤブツバキが花盛り(写真)。メジロが吸蜜にきているが、予想に反して多くない。
 昨日、山頂付近に雪が降り、みごとな雪景色をつくり出した。まだしばらくは寒さが続く模様。




2013年2月14日(木)~15日(金) 秋田県横手へ

 雪まつり「かまくら」の写真を撮りに横手を訪れた。この時期はちょうど、このまつりの期間中。「かまくら」はまつりの名であると同時に、雪を円筒形に積み上げ、中をくり抜いてつくられる雪洞の名称でもある。正面中央には神棚がつくられ、水神様が祀られる。
 地元の中学生に招き入れられ、一つのかまくらの中でおもちや甘酒をごちそうになった(写真)。かまくらの中は比較的暖かく、快適だった。中学生とのとりとめのない会話も楽しかった。街は全体に雪景色。大きなかまくらとともに、中にろうそくが灯されるミニかまくらがあちこちにつくられ、幻想的な雪あかりの情景をかもしだしていた。

2013年2月13日(水) 環境サイエンスカフェで講演

 東京神田・神保町で開かれた環境サイエンスカフェで、「鳥の渡りと地球環境の保全」について講演した。主催は日立環境財団。衛星追跡の成果を中心に、渡り鳥が世界の自然と自然、人と人をつないでいることを話した。参加者は大学、マスコミ、出版社、環境NPOなどの関係者。予想していたとおり、参加者はとても熱心で、いろいろな質問が出た。講演終了後には懇親会も。異分野の人たちとの交流は、いつも刺激的だ。
 最近、このようなサイエンスカフェがあちこちでおこなわれているようだ。じっくりと交流できる、よい機会であるように思われる。

2013年1月27日(日) 葉山・久留和

 快晴の中、葉山の久留和海岸から子安の里を散策した。海岸では、富士山が見事な山容を見せていた(写真)。慶應大SFCからの富士のながめもよいものだが、海岸から見るのも醍醐味がある。桟橋にはカワセミがおり、海面をながめていた。
 子安の里では、アオジ、ホオジロ、メジロ、ヒヨドリ、ヤマガラ、シジュウカラなどがよく観察できた。植物では、ウメはまだつぼみだったが、スイセンやツバキが美しい花を咲かせていた。この地域には、アシタバが少なからず自生している。伊豆諸島を想わせる雰囲気がある。



2013年1月23日(水) オオハクチョウの死体に群がるトビやカラス

 宮城県の伊豆沼から南三陸に向かう途中、河原でオオハクチョウの死体に群がるトビやハシブトガラスに遭遇した。雪上に倒れたオオハクチョウの内臓は、すでにえぐられていた(写真)。1羽のトビは、ハクチョウの頭を突いていた。
 オオハクチョウの死因は不明。付近には20羽ほどのハクチョウたちが泳いでいた。自然界のできごととはいえ、すさまじい光景を目にすることになった。

2013年1月19(土)~24日(木) 宮城でコクガン調査

 南三陸一帯でコクガンの生息状況を調査した。コクガンは2011年3月の東日本大震災の影響を受けて、アマモ場などの本来の採食場所を失っている。が、アカハタやアナアオサなどのある場所を見つけ、たくましく生きている。宮城県内の渡来数は、震災前とあまり変わっていない。今回も各地で15~50羽程度の群れをいくつも見ることができた。
 コクガンは海の景色を一変させる。白黒の美しい色模様のコクガンがいると、あたり一帯の景色が活気に満ちてくる(写真)。震災で破壊された沿岸部は相変わらずの惨状だが、コクガンのいる景色は、自然がしっかりと息づいていることを知らせてくれる。
 三陸沿岸のコクガンの生息状況については、今春発行される日本鳥学会誌に発表される予定だ(嶋田哲郎ほか)。


2013年1月17日(木) 新潟でハクチョウ類の観察

 瓢湖や佐潟などの湖沼とその周辺地域で、ハクチョウ類などの水鳥を観察した。これらの地域では、近年、温暖化などの影響でコハクチョウが急増している。今回は、雪の中でハクチョウ類がどのように採食しているかなどに焦点をあてて観察した。
 瓢湖などの給餌場に集まっているのは主にオオハクチョウで、コハクチョウは田んぼや河川に出ているものが多かった。きょうは積雪がかなりの量になっていたので、田んぼにいるものの多くは採食できずに、雪上で休んでいた。ただし、新潟の中心地近くは周辺地域と比べて積雪量が比較的少ないため、たんぼで採食している個体も目についた。雪の中に頭を突っ込んで採食しているものもいた。
 ハクチョウ類以外では、瓢湖ではオナガガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、オオバンなどが目についた。一方、佐潟では、マガモとコガモが多かった。写真は瓢湖でのひとこま。


2013年1月15日(火) SFCの鴨池

 前日に降った雪でキャンパス内は白銀の世界!鴨池には氷が張り、カモ類が氷の上で休んでいた(写真)。暖かな日差しが降り注ぎ、雪や氷の上が輝いていた。雪国にでも来たような雰囲気だ。
 カモ類はマガモとコガモ、それにアヒルがいる。4日前には、ここでカモ類などの観察実習を行なった。外国人向けのEG2という講義の折だが、みなとても喜んで鳥を見ていた。その時の参加者の一人が、きょう私が鴨池に行ったとき、そこで鳥たちの様子を見ていた。実習がよいきっかけになったようだ。

2013年1月5日(土) 湘南地方の散策

 元日からきょうまで、湘南とその近辺を自然散策した。1日久里浜、3日真鶴岬、4日葉山・久留和海岸、5日横浜・氷取沢といった具合だ。印象に残った鳥との出合いは、久里浜でのシロハラ、真鶴でのクロサギ、葉山でのカワセミ、氷取沢でのクロジなど。葉山のカワセミは、桟橋の先端で海を見つめていた。この冬、注目すべきはウソがどこでもよく見聞きできること。しかも、お腹の赤っぽい亜種アカウソが多い。
 写真は氷取沢のキジバト。1980年代ころまで、山野にすむキジバトは警戒心がとても強かった。しかしその後、山の中でも、この個体のように1~2mまで近づけるものが見られるようになった。ハンターの数が減り、追われることが少なくなったことが原因しているのかもしれない。



2012年



2012年12月23日(日) タイワンリスの観察

 逗子のすまい近くの神武寺で、外来種のタイワンリスの観察をした。午後2時から3時30分くらいにかけて、神武寺の境内で2~3頭のタイワンリスがよく見られた。ツバキの花芽やほかの植物の種子などをさかんに食べていた。あまり警戒心がなく、2~3mほどの距離からじっくりと採食や移動の様子を見ることができた(写真)。
 タイワンリスは、逗子、鎌倉、藤沢、横浜あたり一帯にふつうにすみついている。鎌倉の源氏山にいたものが、近年分布を拡大している。住宅地にもふつうにすんでおり、電線を巧みに走りわたる光景なども見られる。柑橘類やツバキなどの実を好んで食べる。被害がどのくらい出ているのかは不明。

2012年12月16日(日) 横浜金沢から鎌倉天園へ

 暖かで気持ちのよい一日、横浜南部の氷取沢から鎌倉の天園まで散策した。メジロ、ヤマガラ、ヒヨドリ、ルリビタキ、クロジなどの鳥が観察できた。
 気になったのは、このあたり一帯のスギやヒノキの造林地がすべて放置され、荒れたままになっていることだ(写真)。林業の後継者不足や国内での木材生産の採算がとれないことが関係しているのだろうが、このままでよいのだろうか。海外の木材に依存し、海外での森林伐採には深くかかわりながら、国内では造林地を放置しているという状況は、明らかに好ましいとは言えない。
 林業の衰退は、湘南地方だけに限ったことではない。日本の自然の森林をこれ以上伐採することは控えるべきだが、今後必要とされる木材の供給をどうするかは、きわめて重要な問題だ。暖かな木漏れ日が射す森の中を歩きながら、少し暗い気分になった。



2012年12月13日(木) 大学構内、鴨池のカモ

 今週11日(火)から、慶應大SFCの通称「鴨池」にいるカモ類の数が急激に増えた。おそらく東北や北陸の寒波、大雪と関連していると思われる。きょう、撮影をかねて調べたところ、マガモ約60羽、コガモ約15羽を数えた。ほかにアヒル約10羽、カワウ数羽、ハクセキレイ1羽がいた。マガモもコガモも雄の羽色はきれいになっている(写真)。
 やはり11日ころから、ここでも気温が下がり、池には日中でも氷が張っている。カモもセキレイも氷の上を移動しているのが見られる。氷は陽の光に照らされ、複雑な色模様をつくりだしている。
 本格的な冬がやってきたようだ。

2012年12月9日(日) キンケイの撮影

 執筆中の本の中に使うキンケイの写真を撮りに、平塚市のふれあい動物園に出かけた。金網越しであったが、まずまずの写真が撮れた(右の写真)。執筆中の本は、『鳥、人、自然―いのちのにぎわいを求めて―(仮題)』。内容は、人慣れスズメとの出合いから、カラスの多様な食習性、鳥たちの不思議な旅、最近の原発事故が鳥や自然におよぼす影響、テレビドラマに登場する鳥に至るまでいろいろである。後半では、私自身の研究の筋道についても紹介する予定だ。キンケイは、鳥類への強い関心をもつきっかけになった鳥として登場する。
 久しぶりにキンケイを見て、中学、高校のころに夢中でいろいろな鳥を飼育し、観察した思い出がよみがえってきた。あれから50年ほどになる。今でも鳥とのつき合いを続けていられるのは、幸せなことだ。


11月29日(木) ハチクマプロジェクト、秋の部終了

 追跡公開中の4羽の移動が安定期に入った模様だ。今後多少の動きがあるかもしれないが、渡り衛星追跡の秋の部を終了することにした。
 最初の一羽、クロが青森を出発したのが9月20日。あれから2か月と10日ほどが過ぎた。この間、予想もつかないことをふくめて、さまざまな驚きと感動があった。サイトを見てくださっている国内外の多くの方からも、いろいろな感想や情報をいただいた。数多くの方とともに楽しく刺激に満ちた時間を共有できたことを、とてもうれしく思っている。
 またなによりも、4羽が無事、越冬地までたどりついてくれたことがうれしい。
 春の渡りは、2月から開始されると予想される。その時期がきたら、サイトを再開する予定だ。この鳥たちが、はたしてどのような経路をたどって日本に戻ってくるのか、秋とは違う驚きや感動があるに違いない。乞う、ご期待!


2012年11月24日(土) 京都へ

 紅葉の嵯峨野を訪れた。常寂光寺や二尊院方面を散策し、色とりどりの紅葉を堪能した。紅葉はちょうど見頃の時期であったが、ものすごい人出で、道も社寺も人でごった返していた。
 紅葉の枝葉の間でイカルやメジロが見聞きできた。道すがらいただいたみたらし団子がおいしかった。 
 写真は二尊院方面の紅葉。

2012年11月23日(金) 動物行動学会公開シンポジウムで講演

 日本動物行動学会の大会公開シンポジウム「解き明かされる動物たちの多様な行動?アリからサルまで?」で、「カラスの特異な食習性と地域食文化」について講演した。会場は奈良女子大学。ほかに「働くアリと働かないアリ」(長谷川英祐、北大)、「ほんとうは賢い魚たち」(幸田正典、大阪市大)、「反芻するサル? ~ ボルネオ島にテングザルを追う~」(松田一希、京大)の3題についての講演があり、どれも興味深かった。

2012年11月17日(土) カラスシンポジウム

 カラスの研究者が一堂に会し、カラスシンポジウムが開催された。会場は宇都宮大学の大学会館。
 私は「カラスの多様な食習性と地域食文化」という演題で基調講演した。カラスの形態学的特徴、社会や認知にかかわる諸問題など、カラスの社会や生態を考える上で参考になる講演や発表がいろいろあった。カラスの被害に悩む自治体や農家の関係者も多数参加し、会場は熱気に包まれていた。
 シンポジウム終了後、懇親会が開かれ、そこも情報交換のよい場だった。写真は懇親会用に用意された特製ケーキ。



2012年11月13日(木) ソメイヨシノの秋咲き

 久しぶりに茅ヶ崎の里山公園に出かけた。SFCから歩いて15分ほどで行ける距離にある。
 エナガ、シジュウカラ、セグロセキレイ、ホオジロ、メジロ、ヒヨドリなどの常連に加えて、冬鳥のジョウビタキの姿や声が何か所かで見聞きできた。付近の水田付近では、オオタカの姿も目にした。
 帰路、SFCの付近でソメイヨシノが花をつけているのを2、3か所で見つけた(写真)。温暖化の影響のようだが、ここ数年、秋咲きのソメイヨシノが全国的に見られている。

2012年10月28日(日) 上野で講演

 日本バードカービング協会主催の講演会で、「鳥の渡りと地球環境の保全」について話しした。会場は東京都美術館の講堂。協会設立15周年を記念しての講演会であったようだ。バードカービングのコンクールも同美術館で開かれていた。
 芸術の秋を象徴するように、この時期、上野の各種美術館ではいろいろな催しが開かれており、一帯はたくさんの人でごったがえしていた。
 国立科学博物館では、日本鳥学会100周年を記念した「鳥類の多様性―日本の鳥類研究の歴史と成果―」展が開かれていた。いろいろな興味深い資料とともに、私たちの研究グループによる渡り鳥の衛星追跡研究も紹介されていた。

2012年10月21日(日) 神武寺

 秋晴れの一日、すまい近くの神武寺周辺を散策した。暖かな木漏れ日が森の中に差し込み、心地よかった。鳥はメジロ、ヒヨドリ、シジュウカラ、ヤマガラなどが観察できたが、森の中はむしろ静かだった。道ばたのところどころにホトトギスの花が咲いており(写真)、目を楽しませてくれた。
 東逗子の駅の付近にイソヒヨドリの雄がいた。逗子の内陸部では、この鳥を観察することがまったく珍しくなくなっている。住宅の庭では、キンモクセイの花が盛りを迎え、よい香りをただよわせている。



2012年10月7日(日) ネパールから帰国

 ヒマラヤでの調査を終えて、本日帰国した。ニルギリやダウラギリを望む美しい景観の中で観察したアネハヅルの群れは、すばらしいものだった。地元の人とのいろいろな交流も楽しかった。とくに鳥類学者ラジェンドラ・スウォールさんからは、ネパールの鳥や自然についてさまざまなことを学んだ。ヒマラヤを越えるアネハヅルの渡来時期や渡去時期に影響する諸要因についても、具体的に考えることができるようになった。
 帰路、ポカラの街から見たアンナプルナ連山の景観は、筆舌につくしがたく美しかった(写真)。とりわけ、鋭くそびえたつマチャプチャレの山容が、強く印象に残っている。
 16日間におよぶ少し長い旅だったが、同行した人がみな気持ちのよい人たちだったこともあって、快適に過ごすことができた。
 また近い将来、あののどかな雰囲気のジョムソン村、カリガンダキの谷合いですごす機会があるに違いない。

2012年10月2日(火) カランクルンの第一陣到着

 本日午前11時、アネハヅル=カランクルンの第一陣がジョムソンに到着した。500羽ほどが見事なV字型編隊で現れ、高度6,000mほどのところを飛翔していた。強風の中、時には風に押し戻されながら、編隊の形をいろいろに変化させていた。雲が多かったため、どこに降りたのかは不明。30分後には300羽ほどの第二陣が到着。
 あすからの観察が楽しみだ。

2012年9月29日(土) ネパール、ジョムソンに滞在中

 NHKの取材に同行して、24日から当地にきている。ヒマラヤを越えるアネハヅルの取材だ。宿営地(2800m)からは、眼前にアンナプルナ連山の一つニルギリ(7061m)が、少し遠目にダウラギリ(8167m)が見える。ジョムソンはカリガンダキのほとりにあり、そば畑などが広がるのどかなところだ。
 アネハヅルはまだきていない。あすあたりに来るのではないかと期待している。毎日、真っ白な雪をかぶるニルギリ(右の写真)をながめながら、ツルの渡来を待っている。当地でアネハヅルは、鳴き声にちなんでカランクルンと呼ばれている。早く、カランクルンを見聞きしたいものだ。
 周囲の環境は、常緑の低木が点在する裸地や岩山で、Red-billed Chough, Himalayan Griffon Vulture, イワシャコ、ハクセキレイ、ハシブトガラス、スズメなどが見られる。


2012年9月20日(木) 公開中のハチクマ、渡り開始

 ついに、青森県に滞在中のハチクマの一羽、クロが南下を始めた。現在、秋田市の東の方にいる。待ちに待った渡りの開始だ。きょうはおりしも秋晴れ。「いい日、旅立ち」となった。
 天高く、タカ渡る秋、がやってきた。


2012年9月14日(金)~17日(月) 日本鳥学会100周年記念大会

 日本鳥学会が創立100周年を迎え、記念大会を東京大学で開催した。通常の一般講演や自由集会のほかに、記念式典、海外の研究者による特別講演、記念シンポジウムなどが開かれ、たいへん充実したものだった。私は「人慣れスズメーその出現の記録と背景ー」について一般講演したほか、記念シンポジウムの司会・進行をつとめた。
 記念シンポジウムのタイトルは、「Phylogeography of Birds in East Asia(東アジアにおける鳥類の系統と進化)」。ロシア、中国、台湾、日本の研究者が、それぞれの国や地域での関連研究の内容を紹介した(ただし、中国の研究者は欠席。日本の研究者が講演内容を代読)。東アジアでは、鳥の系統地理にかかわることがらについてこれまで情報交換がほとんど行なわれてこなかったので、とてもよい機会になった。
 この記念大会に先立って、2014年に東京で開催予定の国際鳥類学会大会の準備委員会が立教大学で開かれた。Science Program Committeeのメンバー15名ほどが集まり、大会全体の枠組み、基調講演の演者の選定、シンポジウム内容の検討などを行なった。会議は3日間にわたり、連日、白熱した議論がたたかわされた。写真は、立教大学で会場となる教室を視察するSPCメンバー。

2012年9月5日(水) ハチクマプロジェクトのサイト公開

 ハチクマの渡り衛星追跡をリアルタイムで公開する「ハチクマプロジェクト」のサイトを公開した。

    http://hachi.sfc.keio.ac.jp/

 このサイトでは、最新の渡り経路図を複数の種類の地図で図示するだけでなく、facebookを通じて渡りの状況をいくつかの言語で発信できるようになっている。追跡対象は4羽のハチクマ。現在、まだ青森と山形に滞留中だが、1,2週間のうちには移動し始めるものと思われる。
 サイトはたいへん好評なようで、facebookの日本語「いいね」がこの日だけで50以上も付いた。

2012年8月29日(水)~31日(金) なつみずたんぼの視察

 昨年に続き、オリザネットの方たちの案内により、埼玉県北部から栃木県南部、山形県南部に「なつみずたんぼ」の視察に出かけた。「なつみずたんぼ」とは、生産調整によって麦への転作をした田んぼに、夏の休耕期に水を張ったものだ。水を張ることによって、雑草の防除と連作障害の防止に役立ち、同時にシギ・チドリ類などの誘致につながる。
 上記の地域では、一部の農家の方たちがこの取り組みに積極的に参加している。今年はシギ・チドリ類の渡来状況が思わしくないようで、それぞれの地域で多数のシギ・チドリ類を見ることはできなかったが、農家や地域の役所の方などとよい情報交換ができた。
 写真は山形県鶴岡市のなつみずたんぼ。


2012年8月25日(土) 横須賀市市民大学でカラス関係の講義

 上記の夏季特別講座で「カラスと人間生活~さまざまなかかわりを探る~」について講義した。会場はウェルシティ市民プラザ。カラスと人間の関係史、カラスと人間生活との軋轢、カラスの多様な食習性と地域食文化の3つで構成して話した。
 カラスについては多くの人が何らかのかかわりをもっているので、このような講義はよい情報交換の場ともなる。今回も、参加者から興味深い経験談などをいくつも聞かせていただくことができた。
 気持ちよく話すことができたし、楽しく、有意義なひとときだった。

2012年8月21日(火) 横須賀で講演

 横須賀国際交流協会主催のシンポジウム、「かけがえのない自然の恵み~失われるともどってこない~」で講演した。演題は「生命(いのち)にぎわう青い星-生物の多様性と私たちのくらし」。会場はヴェルク横須賀。生物多様性、自然の恵み、生態系サービス、保全・管理などのキーワードを使いながら、自然や生きものの世界が私たちのくらしときわめて密接にかかわっていることを話した。
 講演後には、モンゴル、ドイツ、インドネシアの人たちをパネリストに迎え、パネルディスカッション「それぞれの国で受けている自然の恵みを守り続けよう」が開かれた。いろいろな国の事情や取り組みが紹介され、興味深かった。


2012年8月16日(木) タカサゴユリ花盛り

 湘南地方で、外来種のタカサゴユリが花盛りを迎えている。いつのまにこんなに拡がってしまったのか、と思うくらい、あちこちに咲いている。庭先から崖地、あるいは線路沿いまでだ。場所によってはものすごい密度で生育している。花はとてもきれいだ。
 タカサゴユリは台湾原産。細長い白い花をつけ、花の外側が赤紫色を帯びる。大正年代に日本に入り、現在では西日本を中心に広く分布している。開花時期は8月。種子によって繁殖し、種子は風散布される。そのため、増え始めると一気に拡がるようだ。
 写真は東逗子で撮影。

2012年8月12日(日) 神武寺付近

 逗子市池子にある住まいから神武寺方面の山野を散策した。住まいの近くには、あいかわらずイソヒヨドリの2つがいが隣り合ってくらしており、時おり追いかけ合いをしている。ガビチョウやウグイスがまださえずっている。ホトトギスは8月になってからは声がしない。ミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシ(写真)などのセミ類の声が耳につく。タカサゴユリがあちこちで花をつけているが、日当たりのよいところ以外、花はまだ開いていない。斜面の崩壊地のようなところに多く生育している。
 暑い日が続いているが、暦の上では立秋をすぎている。夕刻のヒグラシの声が、なんとなく物悲しく感じられる。



2012年8月4日(土) 世田谷で対談

 「渡り鳥の眼で地球を旅する」をテーマに、京都造形芸術大学の竹村真一教授と対談した。場所は世田谷文化生活情報センター生活工房。この催しは、生活工房15周年記念企画「地球に触ろう“希望の地球”を語ろう!」の一部。竹村教授は「触れる地球」(左の写真)の開発者。
 「触れる地球」は、さまざまな環境情報、社会情報を取り込み、画像化することのできるデジタル地球儀。衛星追跡されたマナヅル、アネハヅル、コウノトリの渡り経路なども取り込まれている。
 対談では、地球が抱えるさまざまな環境問題、世界の自然をつなぐ渡り鳥の生態、生態系サービスなど多岐にわたることがらに話が及んだ。楽しく、有意義な催しだった。

2012年7月24日(火) 渡り公開プロジェクトに向けてのキックオフミーティング

 ハチクマの渡り衛星追跡を国内外に向けて一般公開することになった。数年前から準備していたことだが、ようやく公開に向けて準備が整ってきた。本日、ハチクマの捕獲や送信機装着にかかわった人、コンピュータソフトの開発者、ウェブサイトの作成者、衛星追跡情報の提供者などが集まって、キックオフミーティングを行なった。場所は慶應大SFC。
 この公開プロジェクトでは、鳥たちの位置や移動経路を単に地図上で示すだけでなく、経路沿いの人たちの交流を促進するための情報発信もしていく予定だ。SFCの留学生などに協力してもらいながら、日本語、英語、韓国語、中国語、インドネシア語などで折々の状況を伝える一方、現地の人たちから、実際の渡りの様子や利用している環境などについての情報を提供してもらいたいと思っている。
 公開は9月初旬の予定。くわしくは後日、このサイト上でも伝える予定。乞う、ご期待!

2012年7月21日(土) ツバメのひな、巣立ち間近

 逗子の住まい近くで育つツバメのひなが、大きく成長している。このくらいになると、眼がくりくりしてきてかわいらしい。食べものをねだる声も大きくなっているので、道行く人の目にも触れやすい。建物の奥まったところにある巣なので、また人どおりの多い場所でもあるので、カラスによる捕食からはまぬがれているようだ。
 親鳥は数分おきに給餌に訪れる。巣のふちにとまるかとまらないかの瞬間に給餌すると、すばやくその場を立ち去る。人がそばを通っても、ほとんど目もくれない。それだけ給餌に忙しいのだろう。
 あと数日で巣立つと思われる。


2012年7月19日(木) 名誉教授の称号授与式

 東京大学で名誉教授の称号授与式があったので出席した。大学構内に入るのはほぼ4か月ぶり。赤門から入って三四郎池のほとりを通り、会場の弥生講堂まで歩いた。あらためて東京大学のキャンパスのすばらしさを感じた。授与式終了後、パーティがあり、知り合いの先生方と歓談した。退職してすでに何年にもなっている先生方もきておられたので、なつかしく、楽しい時をすごすことができた。これからもよい交流を続けていきたい。


2012年7月8日(土) クサフグの産卵

 今年も、クサフグの産卵を見に三浦半島の油壺に出かけた。数時間前に何度か観光客が近くの海に飛び込んだりしたため、午後5時をすぎても岸辺にはなかなか寄ってこなかった。午後6時ちょうど、一群が岸辺で身をくねらせて水をはじき飛ばし、産卵行動を見せ始めた。継続して観察している方からの情報によると、昨日までと比べて40~50分ほど遅いとのこと。その後、20分ほどの間に、5,6回、産卵行動が見られた。
 いつ見ても、何度見てもすばらしい、生命(いのち)の輝きだ。

2012年7月6日(金) 横浜の人慣れスズメ

 横浜公園付近のコーヒーショップの屋外で食事をしていたら、スズメが寄ってきた。人をおそれる気配はほとんどない。テーブルの上に散らばっているパンのかけらをついばんでいた。周囲に5~10羽ほどのスズメがいたが、寄ってくるのは2,3羽だけ。警戒心にははっきりした個体差がある。
 この一帯は、以前から人慣れスズメがいるので知られたところ。1987年この地で、日本ではじめて人の手から餌を食べるスズメが観察された。とびぬけて早い記録だ。


2012年7月3日(火) 東京大学名誉教授

 数日前、東京大学から、6月19日付で東京大学名誉教授になったとの連絡があった。これからも深いつながりをもつことができるようになったので、うれしく思っている。今月19日には、名誉教授の称号授与式が学内で行なわれる予定。


2012年6月30日(土) 葉山・森戸川

 よいお天気にめぐまれたので、久しぶりに森戸川に出かけた。すっかり濃くなった緑の森の中では木漏れ日が舞い、ゆったりと快適な時をすごすことができた。河原では、家族連れが水遊びを楽しんでいた。4時間ほどの山歩きの間に、ウグイス、ヤマガラ、オオルリ、キビタキ、サンコウチョウ、ホトトギス、カワセミ、カルガモ、ガビチョウなどを見聞きした。オオルリ、キビタキ、サンコウチョウのさえずりは、盛期をすぎていた。ホトトギスによるウグイスへの托卵例があるのではないかと思って巣探しを試みたが、托卵してある巣は見つからなかった。
 鳥を観察、撮影している人たちが、林内のあちこちにいた。人が集まっている場所には、たいていオオルリ、サンコウチョウ、あるいはカワセミなどがいた。森戸川は、ほんとうに鳥の観察によいところだ。
 写真はカワセミの幼鳥。

2012年6月21日(木)~22日(土) 青森でハチクマ調査

 ハチクマの捕獲と衛星用送信機装着のため、青森県の南部に出かけた。今回は、暗色系の個体や白い部分の多い個体などが捕獲され、興味深かった。典型的な梅雨空だったが、学内外の研究者と渡り鳥や追跡機器などについて情報交換もしながら、有意義な時間をすごすことができた。
 付近の山林では、ハチクマ以外にノジコ、クロツグミ、キセキレイ、ツツドリ、ホトトギスなどを観察した。ノジコはこの付近にふつうにいる。ヤマオダマキやカンボクなどの花も、目を楽しませてくれた。
 写真は送信機を装着されたハチクマの雌。



2012年6月16(土)~17日(日) 札幌へ

 16日、札幌市で開催された「野鳥お勉強会300回記念講演会」で「鳥の渡りと生物多様性の保全」について講演した。会場は札幌プラザ。この「勉強会」は25年にわたって毎月開かれてきたとのことで、今回はこれまでの演者をふくめ、北海道内の広い地域から数多くの方が参加されていた。講演のあとには、関連のパネルディスカッションおよび記念祝賀会が行なわれた。
 17日は、市内の羊ヶ丘や石狩川のほとりに出かけ、森林や草原の鳥を観察した。羊ヶ丘では、ヤブサメ、センダイムシクイ、コルリ、ツツドリなどを、石狩川では、コヨシキリ、ホオアカ、オオジュリン、ヒバリ、ノビタキ、カワラヒワなどを見聞きした。
 写真は酒井すみれさん撮影。

2012年6月14日(木) 住まい付近の自然

 逗子の住まいの付近でヤマユリが咲き始めた(右の写真)。この時期、ホタルブクロやガクアジサイなどの花も見頃。駅に向かう途中、目を楽しませてくれる。梅雨どきのうっとうしい天気が続いているが、この天気があってこれらの花も咲くことができているのだろう。
 鳥の世界では、ホトトギスの鳴き声が盛ん。家の中からでも聞くことができる。付近にはウグイスが繁殖しているので、それに托卵しているのだろう。外来種のガビチョウの声も聞こえる。大きくて美しい声だ。少し前までは、イソヒヨドリもよくさえずっていた。海から離れているのに、ほぼ隣接して数つがいがなわばりをかまえている。


2012年5月29日(火) 中国滞在最終日

 視察の報告や今後の渡り鳥研究への助言のため、北京にある中国国家林業局鳥類環志中心(National Bird Banding Center in China)で職員と会談した。渡り鳥研究の重要性・緊急性や標識調査の重要性について話したあと、新しい技術の利用の有用性、長期の調査結果の解析の必要性、結果の利用方法などについて助言した。
 今回の訪問は、今年一年、中国各地で予定される一連の講演や視察の初回。10月には北部の黒竜江省、12月には南部のポーヤン湖や塩城を訪問する予定。すべて中国政府からの招待。
 午後遅い便で日本に向かう。


2012年5月27日(日) 沿岸部で標識や観察

 早朝、潘州師範大学の学生たちが実施している標識調査地へ。干潟にカスミ網が広範囲に張ってある。シギチドリ類の渡りはそろそろ終盤。シロチドリ5羽を捕獲し、標識。金属足環以外に色付きの足環フラッグを装着(写真)。その後、沿岸地域を巡回。いろいろな干潟や湿地をめぐる。セイタカシギ、ソリハシセイタカシギ、トウネン、サルハマシギなどを見る。
 途中、風発施設が多数立ち並ぶ地域も通過。100基近くはあろうか。隣りの山東省の沿岸部、Shell Islandでコアジサシの巣1、付近の干潟でシロチドリの巣7を発見。罠でシロチドリ3羽を捕獲。罠は網篭で、入ったら出られない仕組。
 夕方、ハマグリの採取場見学。地元の女性たちが多数集まって袋詰めしていた。この地域はハマグリの産地として有名。

2012年5月26日(土) 中国・潘州師範大学で講演

 24日(木)から中国にきている。中国での渡り鳥研究推進のため、いくつかの大学や研究機関で講演したり、自然保護区を訪問するのが目的。きょうは午前中、北京から東に150kmほどのところにある潘州市の潘州師範大学で特別講演をした。演題はBird Migration and the Conservation of the Global Environment。ふつうの教室で話すのかと思っていたら、立派な講堂が会場。入口ではチャイナドレスを着た女性2人が出迎えてくれた。参加者は学生中心に300人ほど。とても好評だったようで、1時間半ほどの話のあと、学生から30分ほど、いろいろな質問があった。先生たちも喜んでいた。
 写真は講堂の入り口で教授らと記念撮影。




2012年5月17日(木) JICA東京で講義

 JICA東京国際センターで、海外の保全関係者対象に講義した。題目は“Impacts of climate change on biodiversity”、対象者はタイ、フィリピン、ベトナム、ウガンダ、マレーシア、アルバニアの行政官。国が招待した人たちで、5月上旬から6月下旬まで日本各地をめぐりながら、生物多様性の保全と管理についての講義や実習を受ける。私の講義はそのうちの一つ。講義の話のあと、質疑や意見交換の時間をもったが、それぞれの国が抱える温暖化問題を聞くことができ、興味深く、また参考になった。講義を通じてこのような交流の機会をもてるのは、うれしいことだ。
 それにしても、1か月半にわたるこの研修プログラム、うらやましい限りだ。日本人対象でも、広く行なわれるべきなのではなかろうか。
 写真は講義終了後の記念撮影。

2012年5月14日(月) SFCでの生活

 五月晴れの快適な一日、お昼どきにSFC(慶應・湘南藤沢キャンパス)内を散策した。芝生で学生たちがのんびりと昼食をとっている光景が印象的だった(右の写真)。キャンパス内はすっかり緑に包まれ、初夏の雰囲気。
 キャンパス内では、シジュウカラ、エナガ、ムクドリ、スズメなどが見聞きできる。隣接する遠藤の谷戸にはキビタキなどもいる。豊かな鳥類相とはちょっと言えないが、それなりに楽しむことはできる。
 SFCでの生活にもだんだん慣れてきた。通勤に1時間半ほどかかり、湘南台駅とSFCをつなぐバスに乗るのがちょっとやっかい。中高等部の生徒をふくめてたくさんの人が利用するので、朝夕のバス停およびバスの中のにぎわいはたいへんなものだ。が、東大時代とは違って、会議や講義、学生指導などの仕事は限られているので、キャンパスに着いてしまえば、比較的時間に余裕をもってすごすことができる。今後、学内外の人たちと、いろいろ有意義な研究・教育活動を展開していきたい。


2012年5月10日 シカゴのラジオ番組に出演

 シカゴのラジオ番組で、鳥の渡りについて話した。Frank Lingさんによるインタビュー形式のもの。渡りの衛星追跡の成果、今後の課題、“The Journey of Birds-satellite tracking the migration of birds”(『鳥たちの旅』の英語版)の出版予定、ハチクマの渡り公開プロジェクトなどについて話した。以下のウェブサイトでも聞くことができる。番組開始後8分ほどして、インタビューが始まる。
    http://archive.org/details/groks528
 こうした海外の番組でも研究の成果や関連のことがらについて紹介することができるのは、うれしいことだ。昨冬は、日本国際放送(NHK系)の海外向けテレビ番組 “Biodiversity Explained”に出演した(2011年11月22日の項、参照)。生物多様性にかかわる問題を広く扱う有意義な内容だったが、今回のラジオ番組も、Frankさんと鳥の渡りをめぐって気楽に話せる楽しいものだった。



2012年4月29日(日) 葉山・森戸川

 晴天の中、葉山の森戸川に自然観察に出かけた。この時期、毎年出かけているが、いつ見ても新緑がすばらしい。芽生えたばかりの木々の葉が、一本一本ちがった緑色に輝いており、渓流沿いの森全体が、緑のパッチワークをつくりだしている。しかも、そうした緑のパッチワークが陽光に透けて見えると、とりわけ美しい。
 森の中では、ウツギの白い花やヤマブキの黄色い花が咲き誇り、オオルリやセンダイムシクイ、ウグイスやヤマガラなどがさえずっていた。ハンミョウやアオオサムシ、カワトンボなどの昆虫の姿も見られた。森全体が活気に満ちており、本格的な春の訪れを知らせてくれていた。
 風がなく暖かで、快適な一日だった。
 写真は、コクサギにとまるカワトンボ。

2012年4月26日(木) 退職教員の送別会

 東京大学生圏システム学専攻の教員が、今年3月まで同専攻所属であった武内和彦教授と私の送別会を開いてくれた。場所は大学近くの中華料理店。定年退職してまだ1か月もたっていないが、専攻の教員の顔を見て、また話をする中で、すでになつかしい思いを抱いた。慶應大・湘南藤沢キャンパス(SFC)での生活にどうにかなじんできたころであったので、そのように感じたのかもしれない。やはり、顔なじみの人たちとの飲食や会話は、安心感があってか気楽で楽しいものだ。これからも、研究や教育面などでよい交流を続けていきたい。
 記念品に卓上用のおしゃれな電子時計をいただいた。SFCの研究室でたいせつに使用する予定だ。

2012年4月23日(月) 三宅島

 21日(土)から三宅島にきている。天候が不安定で、きょうは風雨がひどい。昨日、晴れ間を利用して、村道雄山線と太路池をまわった。村道雄山線の鉢巻道路から少し下りたあたりから、ミソサザイがさえずっていた。200 x 200mほどの範囲に、間隔を空けて3雄のさえずりを確認。昨春には観察できなかったので、新たな進出と言える。この場所の高木は噴火の影響で枯れて倒れているが、倒れた樹木や岩の隙間をすみかや営巣場所にしているようだ。別の場所で、木の根元に埋め込むようにしてつくられた巣を見つけた(写真)。4卵が入っていた。イイジマムシクイは昨年春ほど多くはないが、やはり鉢巻道路から少し下りたあたりの枯損林でさえずっている個体がいた。
 太路池では、アカコッコ、イイジマムシクイ、メジロ、ヒヨドリ、カラスバトなどのほか、チュウサギがいた。岸辺で首を斜めに伸ばしながら、魚を捕っていた。
 あす24日、東京に戻る予定。


 ミソサザイの巣

2012年4月17日(火) 引っ越しや片づけ、一段落

研究室や住まいの引っ越し、片づけがようやく一段落した。研究室には電話が入り、新しいメールアドレスも取得した。
新しい研究室の住所、連絡先は以下の通り。
     〒252-0882 神奈川県藤沢市遠藤5322
     慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
     ε(イプシロン)棟410号室
     電話 & FAX:0466-48-5688
     電子メール: hhiguchi@sfc.keio.ac.jp
             higuchi@es.a.u-tokyo.ac.jp 

2012年4月13日(金) 都内で講演

 哺乳動物の研究者を対象に、「カラスの特異な食習性と地域食文化」について話した。場所は関連グループがもつ四ツ谷の事務所。40年ほど前、大学院生だったころ、東京中野のマンションの一室で行なわれていた輪読会に参加していたが、その当時知り合った哺乳類関係者がこの機会をつくってくれた。
 四ツ谷の部屋は、中野の部屋の雰囲気を思い出させてくれた。あの頃、研究者として将来への期待と不安を抱えながらくらしていたが、中野での輪読会とその後の飲食の場は、とても勉強になり、また勇気づけられるものだった。四ツ谷に集まった人たちの中にも、いろいろな立場で研究や教育を続けている人たちがいた。時おり、このような機会を設けて情報交換し、議論しているとのこと。場所を変えての飲食の場では、中野での状況を思い出させるような熱い議論が展開されていた。
 こうした勉強や議論の場は、いつの時代でも重要な役割を果たしているようだ。

2012年4月11日早朝  NHK「ラジオ深夜便」に出演

 午前4時台の上記番組で、人慣れスズメなどの話題について話した。人に平気で寄ってきて、手から餌を食べるようなスズメが、東京や大阪を中心に全国的に増えてきていること、またその社会的背景として、スズメに対する人の接し方が変化してきていることなどを紹介した。話の概要は次の通り。スズメはイネを荒らす「害鳥」として、日本では古くから追い払われる存在だった。しかし近年、熟年層を中心に時間に余裕のある人が増え、公園などで鳥に餌を与えることがふつうに行なわれるようになった。こうした状況の中、人への警戒心が強かったスズメも、人との関係を変化させるようになってきたものと思われる。鳥をふくめて野生の生きものに餌を与えることは、いろいろな意味で好ましくないのだが、人慣れスズメの急増は、社会現象の一つとして注目される。
 深夜にもかかわらず、知人をふくめて多くの人が聞いてくれていたようで、番組終了後に、おもしろかった、こんなことになっているとは知らなかった、などといった感想が多数寄せられた。映像もたくさん撮れているので、次は映像をふくめて紹介したい。
 人慣れスズメの写真は、この「折々の記録」の2011年7月26日および同年9月16日の項で見ることができる。

2012年4月4日(水) 慶應義塾大学の特任教授

 この4月から、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の特任教授として、湘南・藤沢キャンパスですごすことになった。これからも、鳥の渡りや温暖化影響関連の研究を中心に、生物多様性の保全にかかわることがらに広くかかわっていきたいと思っている。幸い、周囲に鳥類、GIS、バイオロギング、統計解析などの専門家がいるので、興味深い共同研究をいろいろ展開できるのではないかと期待している。
 新しい勤務先は以下の通り。
     〒252-0882 神奈川県藤沢市遠藤5322
     慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
     ε(イプシロン)棟410号室
     電話 & FAX:未定。決まり次第、このwebsiteに掲載予定。
     電子メール: higuchi@es.a.u-tokyo.ac.jp
          (従来のもの。しばらく継続予定)
          : hhiguchi@muh.biglobe.ne.jp 


2012年4月1日(日) 横浜氷取沢

 昨日、東大の定年退職を迎えた。まだその実感がわかないのだが、とりあえず、いつもの週末とあまり変わらず散策と自然観察をかねて、横浜南部の氷取沢に出かけた。昨日の「春の嵐」とは打って変わって、春らしい暖かなお日和。ウメやモモの花が見頃、あちこちでメジロやヒヨドリがそれらの花の蜜を吸いにやってきていた(写真)。キブシも見頃、日当たりのよいところではタチツボスミレも花盛りだが、桜はようやく開花。
 3月までなら、日曜の午後遅くには東京の住まいに戻る。が、もう戻る必要はない。逗子が本拠地。これからは少しのんびりとした気分で、研究や自然観察に取り組みたいと思っている。

2012年3月23日(金) 卒業式

 昨日の大学院学位記授与式に続いて、きょうは学部の卒業式が全学で行なわれた。雨模様ではあったが、着飾った女子学生たちがあちこちで見られ、華やかな雰囲気がただよっていた(写真)。私の所属する学部組織、フィールド科学専修では、昼過ぎから卒業証書授与式が行なわれ、その後、お祝いパーティが開かれた。夜には研究室内でも送別会が開かれ、もちよった食べものや飲みものを囲んで楽しいときをすごした。
 本日で、東大での私の公式行事参加はすべて終了した。あとは研究室内の片づけだけだ。来週はその仕事であわただしくなる。


2012年3月17日(土)~19日(月) 生態学会大会に参加

 年度末でかつ退職間近の超多忙の合間を縫って、滋賀県瀬田の龍谷大学で開かれている生態学会大会に参加した。シンポジウム「天災と人災の生態学―エネルギーと生物多様性の未来を問う」で、「原発事故の鳥類への影響――チェルノブイリ事故を例に」について講演するためだ。講演では、Anders P. Mollerさんら、チェルノブイリ・リサーチ・イニシアチブによる関連研究を紹介した。昨年6月に日本学術会議の震災関連のシンポジウムで話したのと、ほぼ同じ内容だ。
 私以外の講演では、京大・人間環境の加藤 真教授による「日本列島弧の生物多様性と原子力発電所-未来への希望と負の遺産」や、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也さんによる「再生可能エネルギーの現状と課題」などがあった。どれも内容の深い、興味ある講演だった。会場からもいろいろな質問や意見が出て、実りあるシンポジウムとなった。企画者/講演者の安渓遊地(山口県立大・国際)、佐藤正典(鹿児島大・理)両教授をふくめて、新たに何人ものたのもしい研究仲間ができた。
 時間の制約のため、このシンポジウム以外の講演はあまり見聞きできなかった。今回は東アジア生態学連合の大会と合同であったため、中国や韓国などの研究者が多数参加していた。せっかくの機会なのに、よい交流がもてずに残念だった。



撮影:酒井すみれ
2012年3月14日(水) 最終講義と退職記念パーティー

 午後3時30分から、弥生講堂で私の最終講義「鳥、人、自然」が開かれた(写真)。鳥や自然と人間社会とのかかわりについて、「カラスの特異な食習性と地域食文化」、「鳥と人間生活との軋轢」、「鳥の渡りと地球環境の保全」の3つを軸に話した。学内外から250人ほどが聞きにきてくれた。講義のあとには、山上会館で退職記念パーティーが開かれ、学内の関係者、研究室OB、共同研究者など、数多くの人が参加してくださった。楽しく、有意義で、感無量の一日だった。
 東京大学では、大学院生、助手、教授の時代を合わせて35年ほどを過ごしたことになる。この間、鳥類の生態・進化、生物多様性の保全・管理関連の研究を思う存分行なってくることができた。たいへんうれしく、幸せに思っている。とくに、1996年に教授として戻ってきて以降のこの18年間は、私がもっとものびのびと研究や教育啓蒙普及活動にかかわることのできた、人生最高の時であったといえる。この間、ほんとうにいろいろな方のお世話になった。深く、深く、感謝している。
 最終講義でも述べたが、やり残していること、新たに取り組みたいことはまだまだたくさんある。4月以降は場を変えて、活動を継続していく予定だ。新たな出会いをふくめて、何ができていくのか、とても楽しみにしている。

2012年3月10日(土) 梅の花、ようやく見頃

 今冬は、寒さの影響で、梅の開花が3週間から1か月ほど遅れている。神奈川県の逗子では、ようやく見頃になってきた(写真)。例年であれば、今頃は桃の花が見頃。今冬は、梅と桃の花が同時に見られているところもある。
 桜の開花も遅れるのだろうか。




2012年2月24日(金) ブータンシボリアゲハ標本の見学

 東大総合研究博物館で開かれているブータンシボリアゲハの標本展示を見学した。ブータンシボリアゲハは、80年間記録の途絶えていた幻の蝶として知られている。昨秋、テレビ番組で再発見に至る特別番組を見たこともあり、関心をもっていた。
 展示室では、寄贈された一つの標本が立派な標本箱の中におさめられていた(写真)。テレビ放映の影響もあってか、展示会場には多数の人が訪れていた。

2012年2月22日(水) 卒論発表会

 フィールド科学専修の卒論発表会が開かれた。今年はこれまでで最多の9人が発表した。私の関係では、シギ・チドリ類の環境選好を調べている佐久間保彦君と、カイツブリの潜水行動を研究している郡司芽久さんが発表した。どちらも興味深い内容にまとまっている。指導体制が行き届いているせいか、ほかのもふくめて全般にレベルの高い内容で、聞きがいがあった。
 終了後、佐久間君や郡司さんを招いて、私の部屋でささやかなお疲れ会を開いた。

2012年2月17日(金)~19日(日) 三宅島

 生態系の回復状況や冬の鳥の生息状況の調査のため、三宅島を訪れた。ツバキが花盛りであったが、降雪をふくむ肌寒い日が続き、山の上の方は雪景色になった(写真)。この冬、全国的に冬鳥の数が少ないが、三宅島も例外ではない。ツグミやジョウビタキなどの姿がまったく見られない。くわえて、ヒヨドリやヤマガラなどの留鳥も目立たない。さみしい限りだ。植生が乏しい山腹上部は、静寂に包まれている。理由はよくわからない。
 だが、海岸付近のササやぶでは、ウグイスがすでにさえずり始めていた。季節は確実にめぐってきている。
 


2012年2月14日(火) 市川市新浜

 カモ類への衛星用送信機装着のため、宮内庁の新浜鴨場を訪れた。職員の方々のご協力のもと、オナガガモ8羽、ハシビロガモ2羽に送信機を装着することができた。ハシビロガモへの装着は初めて。今後の追跡が楽しみだ。ハシビロガモは予想外に体が小さく、その分、くちばしの大きいのが目立った。くちばし内縁に並ぶ櫛状の「濾過器」などを見たのち、旅の無事を祈って放鳥した。


2012年2月8日(水)~9日(木) 兵庫県伊丹へ

 カモ類の捕獲と衛星用送信機装着のため、我孫子市鳥の博物館の時田賢一さん、当研究室の酒井すみれさんとともに出かけた。地元研究者の協力により、オナガガモ8羽とヒドリガモ1羽に衛星用送信機を装着することができた。
 昆陽池からのカモ類の追跡はこれまですでに実施しているが、私が昆陽池に出かけたのは今回が初めて。池には、オナガガモ、ヒドリガモ以外に、キンクロハジロ、カルガモ、バン、カワウ、アオサギ、ダイサギ、コブハクチョウ(飼育個体)などの水鳥が生息している。カワウは大きな集団繁殖地が形成されており、この時期、すでに営巣に入っている。鳥たちが全体的にゆったりと過ごしているのが印象的だった。
 写真は送信機付きのオナガガモ。アンテナが見える。

2012年1月26日(木) 最後の授業

 本日の学部授業「生物の多様性と進化」最終回をもって、私が担当する東大での公式の学部授業・大学院講義はすべて終了した。3月末日に定年退職するまで、卒業論文や修士論文の発表会などはまだ残されているが、自分自身が中心となる公式の教育の場は、きょうの授業が最後だ。とくにこれといった感慨のようなものはないが、それなりに安心感や達成感のようなものはある。
 研究室の関係者や仕事上の知人が企画してくれた「最終講義」は、3月14日(水)午後3時30分から、弥生講堂で行なう予定。「鳥、人、自然」という題で話す。これまで行なってきた研究の概要や、その間に感じたいろいろなことがらについて話したいと思っている。楽しみにしているが、ちょっとさびしい気分でもある。

2012年1月16~17日 コクガンの生息状況調査

 東日本大震災後のコクガンの生息環境と分布・個体数の現状をさぐるため、宮城県の三陸海岸に出かけた。宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団の嶋田哲郎さんが一緒だった。嶋田さんたちがこれまでに調査してきた場所を中心に見てまわり、アマモ場などの状況、コクガンがいついている場所の地理条件、環境条件などを調べた。沿岸域は津波などの影響で大規模に破壊されているが、コクガンは採食条件のよいところを見つけ出し、たくましく生きていた。青い海に浮かぶ黒白模様の美しいコクガンの姿が、とても印象的だった(写真)。
 震災後のコクガンの生息状況をめぐるこの研究プロジェクトは、民間の助成金を得て実施されており、今後3年間継続される。野外観察、衛星画像解析、衛星追跡を組み合わせた興味深い内容に発展しそうだ。



2012年1月11~12日 地獄谷のニホンザル

 長野県下高井郡山ノ内町の地獄谷野猿公苑を訪れた。海外にも広く知られた、温泉に入るニホンザルの観察と撮影のためだ。当地を訪れるのは初めて。野猿公苑では、幼い子供をふくめて数10頭のサルが、温泉に入れ替わり立ち替わり入っていた。湯気が立ち込める中で、ゆったりと気持ちよさそうに温泉につかっているサルたちは、とても幸せそうだった(写真)。
 ここでは、サルの行動を至近距離から観察できる。親子の関係、子どもどうしの遊び、近隣個体との争いなど、見ていて飽きることがない。
 帰りには、近くの上林温泉で私も露天風呂に入って疲れをいやした。晴天にも恵まれ、快適で有意義な一日だった。

2012年1月7日(土) 高麗山

 神奈川県の大磯から高麗山(こまやま)、湘南平へと散策した。晴天に恵まれ、暖かな日差しの中、照葉樹林の中を抜ける小道を気持ちよく歩いた。この地域にはスダジイ、タブノキ、ヤブツバキなどからなるよく茂った照葉樹林が生育している。道沿いのスイセン(写真)やヤブツバキの花などを楽しみながら、メジロ、ヤマガラ、ヒヨドリなどを観察した。
 大磯から大磯に戻るこのハイキングコースは、3時間ほどの道のり。林間から相模湾を望みながら、快適な山歩きができる。また、この時期には見られないが、主に春から夏にかけて、大磯の照ヶ崎にはアオバトが群れになって海水を飲みにくる。多いときには、1日の総飛来数が2000羽を超える。
 大磯は興味深いところだ。


2011年


2011年12月21(水)~23日(金) 米子へ

 オシドリ、マガン、コハクチョウなどの生息状況調査のため、鳥取県の米子市とその周辺を訪れた。とくに今回の主なねらいは、日野郡日野町のオシドリ。ここではこの時期、700~1000羽ほどのオシドリが日野川に集結する。地元の方たちがドングリやお米を与えており、少し離れた観察小屋から、たくさんのオシドリをじっくり見ることができる。写真のとおり、すばらしい光景が展開される。
 マガンやコハクチョウは、島根県側の出雲平野でよく見られる。当地のマガンは道路のそばにいることも珍しくなく、車からおりなければ間近でじっくり観察することができる。
 研究室の研究員や研究室OBとともに、楽しく有意義なときをすごすことができた。

2011年12月19日(月) イーチン・チェンさんのセミナー

 台湾のAcademia Sinica, Biodiversity Research CenterのI-chin Chen博士に、東大でセミナーを開いていただいた。演題はImpacts of climate warming on terrestrial range shifts。東南アジア・ボルネオのキナバル山の蛾類を対象に、温暖化が最近の42年間でいろいろな種の垂直分布をどう変化させたかについて話してくださった。この40年と少しの間に、蛾類の垂直分布は平均62m上昇していたが、多くの種では分布域は地形や環境によって大きく制限されており、今後の変化のあり方が心配されているとのことだった。関連論文はScienceやPNASなどの一流誌に掲載されている。
 イーチンさんは、当研究室にポスドクとして滞在していたHau-Jie Shiu博士の奥様。Shiu博士は現在、国立台南大学の准教授をしておられる。お二人は共同で、台湾やマレーシアを舞台に鳥類や昆虫類の生態・保全関連の研究をしておられる。今後のさらなる活躍が期待される。

2011年12月5日(月)~8日(木) 三宅島

 噴火後の生態系回復状況調査などのため、三宅島を訪れた。森の中で鳥たちは比較的静かだったが、ムラサキシキブやアオノクマタケランの実、ツワブキやヤブツバキ、シロダモなどの花があちこちで見られ、秋から冬にかけての風情をただよわせていた。とくに、林床のアオノクマタケランの赤い実(右の写真)と林縁に咲くツワブキの黄色い花がとても目立っていた。
 研究室の研究員や職員、他研究室の研究員などが同行し、山歩きや生きものの観察以外に、アシタバ料理をふくむ食事やその後のいろいろな会話を楽しむことができた。島嶼生物学研究所の中もだいぶ片づき、使いやすくなった。私たち以外の利用者も増えている。


2011年12月4日(日) 日本イヌワシ研究会30周年記念シンポジウムで講演

 日本イヌワシ研究会(略称「ワシ研」)が設立30周年を迎え、記念の公開シンポジウムが都内で開かれた。会場は日本橋浜町のFタワー・プラザホール。日本イヌワシ研究会は、イヌワシの生態研究と保全について活発な活動を展開しているグループだ。私は、「鳥の生態研究と生物多様性の保全」と題して基調講演を行なった。ほかには、ワシ研の会員による先進的な調査・保全活動の紹介、環境省や林野庁の職員による環境施策の現状と課題などの講演があった。予想外にも、高校生をふくむ若い人の参加が目立っていた。
 日本のイヌワシは世界最小の亜種で、ほかの亜種と違って森林にすむ特徴をもつ。近年、個体数が減少し、繁殖成功率も落ちている。生息環境の悪化や食物となるノウサギなどの減少が関係している。シンポジウムでは、今後、餌動物の減少実態をより正確に調べ、生息地の生物多様性の保全に努めていくことなどが提案、議論された。
2011年12月3日(土) リトルターンプロジェクト10周年記念シンポジウム

 コアジサシの保全をめざすリトルターンプロジェクト(LTP)が10周年を迎え、記念シンポジウムが開かれた。会場は東京・大田区の池上会館。これまでの10年の研究・保全の成果や今後の課題などが発表された。私は作家の加藤幸子さんと、10年を振り返っての対談を行なった。
 LTPは市民、行政、研究者などからなるグループ。大田区森ヶ崎にある東京都水再生センターの屋上で繁殖するコアジサシの環境整備や生態調査などに尽力している。今後は、より広い視点から、広範囲を対象に、コアジサシの保全に向けた活動が展開されることになる。



2011年11月23日(水) 葉山・森戸川源流

 定期的に通っている神奈川県葉山町の森戸川源流に出かけた。お天気に恵まれ、紅葉に彩られつつある森の中を歩きながら鳥や植物を観察した。とくに注目すべきことはなかったが、おだやかな日差しが木漏れ日となって森の中に差し込み、とても快適な時間をすごすことができた。
 今秋はまだ温暖な気候が続いており、野辺ではオシロイバナが咲き、セリやハコベが青々としている。
 しかし、季節は確実に進行している。モズの高鳴きはほぼ終わり、ジョウビタキの姿が目立っている。

11月22日(火) 海外向け番組の収録

 東京目黒の八方園で、日本国際放送(NHK系)の海外向けテレビ番組 Biodiversity Explained の収録を行なった。イギリス人女性で英語落語などを手がけるDiane吉日さん、フランス、ウガンダ、日本の学生、私をふくめ合計5人で、生物多様性とその保全について議論した。主な内容は、日本の里山の生物多様性、冬みずたんぼの活動、ベトナムでの植樹活動、渡り鳥の生態と保全など。生物多様性の保全に対する一般的な考えを示すとともに、日本での活動を紹介する内容だった。八方園の美しい日本庭園を背景に、自然や生きものの世界のすばらしさ、たいせつさについて、実りある情報発信ができたと思われる。
 日本国際放送の英語番組は、日本では見ることができないが、海外80か国以上で放映される。日本発の生物多様性関連の番組が広く海外で放映されるのは、うれしい限りだ。

2011年10月29日(土) 生圏システム学専攻の同窓会

 夕刻、第一回「生圏同窓会」とその後の懇親会が開かれた。東大全体のホームカミングデイに合わせての集まりだった。大学院の生圏システム学専攻が設立されてから12年目、修了生の多くはすでに学界、行政、民間企業の環境分野などで活躍している。研究室のOB、OGだけでなく、ほかの研究室の修了生の近況などもいろいろ聞くことができ、有意義なひとときを過ごした。

2011年10月28日(金) John F. Cockrem教授のセミナー

 夕刻、ニュージーランド・マッセイ大学のジョン・コックレム教授を招いてセミナーを開いてもらった。演題はField studies of stress in Adelie and Emperor Penguins in Antarctica。アデリーペンギンとエンペラーペンギンの生活史の概要が紹介されたのち、人為的あるいは自然条件下でいろいろなストレスが生じた折に、どのような生理生態学的な反応が現れるかについて話された。講演内容はもちろん興味深かったが、南極とペンギンのスライドがすばらしく美しいのもとても印象的だった。
 講演後には、私の部屋でコックレム教授を囲んで飲食、歓談した。10数人が集まり、楽しい時間をすごすことができた。

2011年10月26日(木) 慶応義塾大学で講義

 慶応大の湘南藤沢キャンパス(SFC)で、「鳥の渡りと地球環境の保全」について講義した。ランドスケープエコロジーの講義の一部。SFCは初めてだったが、広々としたキャンパスに近代的な建物が立ち並ぶおしゃれなところだった。講義は、海外の学生がいるため、スライドは英語で作成し、話は日本語で進めた。講義ののち、学内関係者と交流し、一ノ瀬友博准教授の案内で学内を散策した。池があってアヒルが泳いでいたが、冬にはオナガガモも訪れるとのこと。周囲には里山的な景観があり、少し遠くには大山などの山々も見ることができた。

2011年10月8日(土) 三浦の里

 3連休の初日、ときおり訪れる三浦の里に出かけた。野辺には、柿が実り、コスモスやヒガンバナが咲き、ススキがそよ風に穂をゆらしていた。タイワンリスのせいか、アケビの実が地上に落ちていた(写真)。草木の一部、あるいは場所によっては多くが、2週間ほど前にきた台風15号による塩害を受けて、葉を茶色に変えていた。
 暖かな散歩日和の中、ミンミンゼミやツクツクボウシの声がまだ聞かれた。モズがあちこちで高鳴きを発していた。
 初秋のよい一日だった。



2011年9月25日(日) 横浜市新治市民の森へ

 久しぶりに新治(にいはる)市民の森に出かけた。横浜市緑区の西部、新治町から三保町にかけて二次林や造林地と谷戸が複雑に入り組む地域だ。水田では稲刈りが始まり、道ばたではヒガンバナが咲き、柿や栗が実っていた。セミの声はおさまり、秋の虫の音が響いていた。鳥はモズやオナガなど。里山の初秋といった気配だった。
 横浜にはかつて、このような谷戸地形の里山の自然があちこちに広がっていた。私が生まれ、高校時代までをすごした南部の金沢区もそうだった。今はもう、この新治のように特別扱いされた地域くらいでしか見られない。
 林の縁の開けた場所で、アカボシゴマダラを見つけた(写真)。美しいチョウだが、神奈川県で見られるものはアジア大陸由来のもので、人為的に放され、増えたものらしい。この種は、日本では本来、奄美大島などでしか見られない。


2011年9月16日(金)~19日(月) 日本鳥学会大阪大会に出席

 今年度の鳥学会大会は大阪市立大学で開かれた。参加者は約500名、盛況だった。年々若い人の数が増加し、研究の質も向上している。今回はとくに、形態と機能、種分化などの研究に目を引くものがあった。私は「ハチクマの年による渡り経路の違い」について講演した。また、国際鳥類学会2014東京大会に向けて、立教大学の上田恵介さんたちと関連の自由集会をもった。
 大会期間中、人慣れスズメの観察と撮影に大阪城公園を訪れた。この場所に人慣れスズメがいることは、インターネットを通じてあらかじめ情報を得ていた。やはり、お年を召した方が、手慣れた様子でスズメに給餌していた(右の写真)。




2011年9月12日(月) 中秋の名月

 きょうは中秋の名月。その名にふさわしいすばらしい月を見ることができた。まだ暑い日が続いているが、月日は確実に過ぎ、秋の気配がただよってきている。
 写真は東京品川の住まいにて撮影。

2011年9月7日(水) 「なつみずたんぼ」の視察

 NPO法人「オリザネット」の斉藤光明さんと古谷愛子さんの案内で、埼玉県北部から栃木県南部にかけての水田地帯に出かけた。斉藤さんたちが進める「なつみずたんぼ」の様子の見学と、田んぼに集まるシギ・チドリ類の観察のためだ。「なつみずたんぼ」とは、生産調整の関係で麦への転作をした田んぼに、夏の休耕期に水を張ったものだ。水を張ることによって、雑草の防除と連作障害の防止に役立ち、同時にシギ・チドリ類などの誘致につながる。「ふゆみずたんぼ」は広く知られ、すでにあちこちで試みられているが、「なつみずたんぼ」の方は、まだ数年の歴史しかなく、試みられている地域も限られている。
 「なつみずたんぼ」の現地では、実際にアオアシシギ、イソシギ、コチドリ、ケリ、コサギ、チュウサギなどが多数群れる様子を見ることができた。また、協力してくれている農家の方たちと、「なつみずたんぼ」とそこにくらすいろいろな生きものについて親しく話す機会ももてた。「なつみずたんぼ」が、小麦の生産のためにも、シギ・チドリ類などの生息のためにも有効な方法であることを実感した。今後、活動に加わりながら、調査、研究面で協力できればと思っている。



 「なつみずたんぼ」に群れるケリ


2011年9月3日(土) 安曇野で講演

 人と鳥とのかかわり方、とくにハクチョウ類への給餌に焦点をあてたシンポジウムが長野県の安曇野で開かれ、基調講演をした。演題は「鳥の渡りと私たちのくらし」。ハクチョウ類やタカ類などの渡り、餌づけの功罪、鳥インフルエンザとのかかわりなどについて話した。その後のパネルディスカッションでは、信州大学の中村浩志教授、山形県の酒田市白鳥を守る会の池田昭三会長、京都産業大学の大槻公一教授、日本野鳥の会の金井 裕主席研究員などを中心に、会場の参加者もまじえ、関連の話題をめぐって熱い議論が展開された。
 安曇野は今、ソバが花盛り(写真)。あちこちの畑地で白い花々が咲き誇っていた。

2011年9月2日(金) 理科大で講演

 東京理科大で開かれたシンポジウム「野生動物と人間生活との軋轢―その実態と対策―」で、「鳥類と人間生活との軋轢実態―線路への置き石から航空機との衝突まで―」について講演した。理科大の総合研究機構、危機管理・安全科学技術研究部門が主催。ほかに、哺乳類とくにクマによる人身被害(早大・三浦慎悟教授)、野生動物と感染症(国立感染研・山田章雄部長)、軋轢をめぐる法律上の問題点(富山大・高橋満彦准教授)についての講演があった。
 工学や社会科学の研究者の参加が目立ち、異なる分野の研究者との情報交換のよい機会になった。

2011年8月30日(火)~9月2日(金) ソウルで講演

 韓国の国立生態学研究所設立に向けての記念シンポジウムで講演するため、ソウルに出張した。会場はソウル国立大学の国際会議場。シンポジウムのテーマは、地球温暖化と国立生態学研究所が果たす役割についてだった。私はImpacts of climate change on the phenology, population, and distribution of plants and animalsという演題で話した。米国からも3名の研究者が招待され、それぞれ温暖化関連の話をした。参加者の多くは、韓国の大学の教員や学生、国立の研究機関の研究員など。韓国の研究者による講演も数題あり、関連研究の現状を知るのに役立った。
 国立生態学研究所は、韓国の西海岸沿いのSeocheonに現在まだ建設中だ。100haほどの広大な土地に、研究センターや教育センターなどが立ち並ぶ予定。とくに、Ecoariumと名づけられた巨大ないくつもの実験・展示施設が注目される。一つひとつが内部に熱帯、温帯、極地など異なる気候条件をつくりだし、動植物の生息・生育状況を観察できるようになる。敷地内には土地固有の森林や湿地も保全され、長期の継続観察が可能になる。
 開設は来年冬。韓国の生態学研究は今後、この施設が一つの核になって急速に進展していくことが予想される。

2011年8月27日(土) 横浜市氷取沢

 横浜南部の氷取沢(ひとりざわ)に、自然観察に出かけた。生い茂る夏草、ヒグラシの声、コスモスの花の咲き始めなど、夏の終わりを感じさせられた。命のつきかけたセミが力なく地表を動きまわる様子も、何か所かで見られた。換羽中だからか、鳥たちはひっそりとしていた。
 森の中でアオオサムシを見つけた(写真)。昆虫の死骸のそばにいたので、それを食べようとしていたのかもしれない。緑色を帯びた体色がきれいだった。
 もうじき9月。たしかに季節が移り変わろうとしている。モズの高鳴きが、そろそろ聞かれるだろう。

 


2011年8月23日(火) 横須賀で講演

 横須賀国際交流協会主催のシンポジウム「美しい自然を守りたいーみんなで環境問題を考えようー」で、「鳥の渡りと地球環境の保全」について講演した。講演に続くパネルディスカッションでは、アルゼンチン、中国、ドイツ、フィリッピン、米国などのパネリストから、それぞれの国がかかえる環境問題を話題提供していただきながら、自然や生きものの世界をどのように守り、私たちのくらしをどう豊かにしていくのかについて議論した。
 いろいろ異なる興味、関心をもつ人たちと、ゴミ問題から渡り鳥の保全まで広く意見交換するよい機会だった。


2011年8月9日(火)~12日(金) 三宅島

 噴火後の生態系の回復状況調査と研究施設の片づけのため、妻とともに来島した。8月の三宅島は久しぶりだった。暑くはあったが、風があったので、東京のような蒸し暑さはなかった。鳥たちは換羽期からか、あまり目立たず、静かだった。が、太路池のまわりでは、アカコッコ、コマドリ、イイジマムシクイ、ヤマガラ、メジロ、カラスバトなどを見聞きすることができた。木洩れ日が差す照葉樹林の中は快適で、緑が美しかった(左の写真)。
 噴火後11年が過ぎ、火山ガスもさすがに弱まってきている。場所によっては、山すそから上方へと緑が広がっている。あいかわらず土壌浸食が進行しているところも多いが、そうしたところもやがて草が生え、木々が生長していくものと思われる。
 最近、噴火後10年間の一連の研究成果が、日本生態学会誌61巻2号に特集として掲載された。

2011年7月26日(火) 人慣れスズメ急増中

 きょうの朝日新聞夕刊社会面に上記のタイトルのついた記事が出た。私のコメントや撮影した写真が紹介されている。ここ4,5年、北海道から東北、関東、関西、九州まで、人の手から平気で餌をもらうスズメが増えている。私は東京の上野公園などで何度も見ているが、インターネット上にも動画をふくめていろいろ登場している。中には、人の手に群がって餌をついばんでいるものもいる。しばらく前までは、とても考えられなかった光景だ。手乗りスズメなどが見られるのは、大部分が公園など。
 何が原因なのか、どういう背景が関係しているのかははっきりしない。しかし、ほぼ同じ時期に、全国的に拡がっているというのが興味深い。餌を与えているのは、60代や70代の男性が多い。時間に余裕ができ、あるいは定年後に行きどころがなく(!?)、公園でスズメなどとたわむれる人が増えていることが原因しているのかもしれない。   
 写真は上野公園にて。





2011年7月15日(金) セミナー:Ecological and evolutionary consequences of Chernobylの開催

 Tim Mousseau(米国・サウスカロライナ大学教授)、Anders P. Moller(フランス・パリ第11大学教授)のお二人に、上記 セミナーを開いてもらった。お二人は、チェルノブイリ原発事故が動植物の生態・進化におよぼす影響について長年研究している。セミナーでは、鳥類から人間に至るまで、原発事故による放射能汚染が遺伝、繁殖、生存などにどのような影響を及ぼしているのかについて講演。場所は東大農学部。セミナー終了後には、参加者有志とともに夕食会を催し、さらなる情報交換を行なった(左の写真、中央左がメラー教授、右がムソー教授)。
 二人は今月10日に福島の現状を調査するために来日。この日の午前まで福島に滞在。鳥のセンサスや植物の花粉などの採取を行なった。今後もおそらく定期的に来日する予定。日本人研究者との共同研究が開始される。

2011年7月12日(火) 長野県短期大学で講義

 特別講義として、「人のくらしと鳥類」について講義した。実際には、里山の自然と人のくらしに焦点をあてながら、生物多様性の意味や重要性、生態系サービス、近隣や遠隔地の自然とのつながり、国際協力の重要性などについて話した。講義終了後、いろいろな質問が出て、有意義な時間をすごした。
 夜、知人の教授ご夫妻のお宅で夕食をごちそうになった。奥様が宇都宮大学当時のサークルの後輩で、40年ぶりの再会。心のこもった手づくり料理をいただきながら、学生時代を楽しく思い出すことができた。感謝!

2011年7月3日(日)~4日(月) 滋賀へ

 滋賀県立琵琶湖博物館にカイツブリの観察に出かけた。ここではカイツブリを大きな水槽で飼育しており、その潜水行動をじっくりと見ることができる。研究室の郡司芽久さんが卒論のテーマとして、カイツブリの潜水行動時の形態と運動機能の関係を調べている。興味深い内容にまとまりそうだ。
 博物館の周囲の琵琶湖畔も少し散策した。バンやハクセキレイなどが観察できた。ハスの上をバンが気持ちよさそうに歩いているのが印象的だった。
 写真は水槽の前でカイツブリの行動を観察、撮影する郡司さん。



2011年7月2日(土) クサフグの産卵

 昨日は大潮で新月。その翌日のきょう、ねらいを定めて三浦半島の油壺にクサフグの産卵を見に出かけた。夕刻、数10、数100のクサフグが岸辺に訪れ、水しぶきを激しくあげながら産卵、放精する。生命の躍動感あふれる見事な光景だ。毎年、クサフグ産卵の観察と撮影を楽しみにしているが、ここ2年ほど機会がなかった。その分、今年は十分に楽しめた。
 観察後は近くのホテルでゆったりと入浴、その後、付近の食堂で海の幸に富む夕食をとる。よい一日だった。

2011年7月1日(金) 『赤い卵のひみつ』を出版

 小峰書店から、児童書『赤い卵のひみつ』を出版した。
  http://www.komineshoten.co.jp/search/info.php?isbn=9784338248020
 「赤い卵のひみつ」とは,ホトトギスがいない北海道で,ホトトギスになりかわってウグイスの巣に赤い卵を産み込む托卵鳥がいるのだが,それはいったいだれなのかという謎である。本書では、この赤い卵のひみつをめぐるいろいろな問題を、ことのはじめから、最新の野外観察に至るまで、時間を追って物語風に紹介している。平凡社の雑誌アニマ、思索社の『赤い卵の謎』などに書いた内容を子供向けに書きなおし、その後の情報を加えて構成してある。科学、とくに野外での観察や実験の楽しさや重要性を、多くの子供たちに知ってもらうよい機会になると期待している。

2011年6月30日(木) 都内でウミネコの繁殖を確認

 この時期、上野の不忍池にウミネコの幼鳥が現れる。どこで繁殖しているのかわかっていなかったが、最近、その場所を突き止めた。ビルの屋上だ。ひなはもう大きくなっているが、推定で20~30つがいくらいが繁殖している。また、繁殖しない個体もいるようで、この時期、この地域の全体の個体数は、今年生まれの幼鳥をふくめて150~200羽ほどか。
 今後、繁殖数は増えていくのだろうか。繁殖できる場所は限られているので、頭打ちになる可能性もあるが、鳥たちが新たな繁殖場所を開発すれば大きく増えるかもしれない。増えると、ほかの鳥、とくにひななどを多数捕食する可能性がある。注視していく必要がある。
7月21日の朝日新聞記事で紹介

2011年6月28日(金) フォーラム「東日本大震災による生態系や生物多様性への影響」に参加、講演

 日本学術会議統合生物学委員会生態科学分科会、環境学委員会自然環境保全再生分科会の主催で、上記のフォーラムが開かれた。会場は東京乃木坂の日本学術会議講堂。300人を超す参加者があり、会場は立ち見が出るほどで、関心の高さがうかがえた。
 7人の演者が、地震や津波による生物多様性や生態系への影響評価、原発事故がもたらす人や生物への影響、今後の短期的・長期的モニタリングのあり方などについて話題提供した。私は、放射能汚染が鳥類の繁殖、生存、分布に及ぼす影響-チェルノブイリ原発事故25年後の鳥の世界-について話した。A. P. Moller教授らの研究の紹介だ。
 パネルディスカッションでの議論をふくめて、会場からもいろいろな意見や質問が出た。実りあるフォーラムになったものと思われる。ここでの議論が、今後の研究や復興につながることが望まれる。
 →フォーラムの概要


2011年6月24日(金)~26日(日) 青森へ

 ハチクマの捕獲と衛星用送信機装着のため、研究室内外の研究者とともに青森に出かけた。晴天に恵まれ、仕事が順調に進んで早めに終了したため、奥入瀬から十和田湖方面にも足を伸ばした。奥入瀬では、限られた時間ではあったが、美しい森と川の流れの組み合わせを堪能した。森はブナ、ホオノキ、トチノキなどからなっており、巨木も見られる。川の流れはあちこちで岩に砕け、白いしぶきをつくりだしている(写真)。
 今回の捕獲、装着によって、ハチクマの追跡個体数は合計50羽以上になる。また秋や春の渡り追跡が楽しみだ。

2011年6月23日(木) 感染症関連の国際会議出席

 鳥インフルエンザを中心とした感染症関連の国際会議に出席した。主催は環境省、会場は東京のフロラシオン青山。ロシア、米国、中国、韓国、モンゴル、日本などの研究者や行政関係者が出席し、鳥フルを中心とした感染症の現状と今後の対策のあり方について報告、議論した。私はMigration of birds in East Asiaという演題で、衛星追跡によって得られた渡り経路や環境利用などの結果を報告した。アジア地域の最近の研究の現状を知ることができ、有意義だった。

2011年6月14日(火)~21日(火) 米国東部へ
 
 温暖化関連の研究集会に出席するため、ボストンとその近郊に出かけた。研究集会はNational Science Foundation (NSF)の研究費を得て行なっている共同研究の成果発表の場。ボストン大、ミシガン大、コネチカット大などの研究者が集まった。発表内容は、温暖化が植物や昆虫、鳥などの生物季節におよぼす影響、衛星画像や自動カメラを用いた生物季節の解析手法、北米とアジアの景観構造が温暖化にもたらす影響、モデルやシミュレーションを用いた未来予測など、多岐にわたっていた。私は今回少し方向を変えて、温暖化による桜の開花の早まりが地域経済におよぼす影響について話した。
 15人ほどからなる小さな研究集会だったが、そのぶん、じっくりと話を聞き、議論することができた。研究発表の合い間には野外観察の機会があり、米国東部の美しい落葉広葉樹林を見てまわることができた。また、自由行動が可能であった折には、研究室OGのインイン・ウ―さん夫妻と夕食をともにする楽しいひとときもあった。インインさんは台湾の出身だが、ご主人がマサチューセッツ工科大に所属している関係からボストンに滞在している。
 1週間ほどの短い滞在だったが、充実した時をすごすことができた。
 写真はボストン近郊の湿地にすむシジュウカラガンの群れ。





6月8日(水) JICA東京で講義

 モンゴル、フィリピン、マレーシアの行政官などを対象に、JICA東京・国際センターで講義した。テーマはImpact of climate change on biodiversity。温暖化が生物季節、分布、個体数などに及ぼす影響について、国内外の例を紹介しながら話した。この講義は、国が海外の関係者を招いて実施する生物多様性関連の講義・実習のひとつで、毎年この時期に行なわれている。異なる国の状況をめぐって情報交換できる場でもあり、有意義な時をすごすことができる。今年も、モンゴルやフィリピンなどが抱える温暖化、生息地保全の問題をめぐってよい議論ができた。

6月6日(月)~7日(火) 三陸方面へ

 東日本大震災による生態系などへの影響を見るために、阿武隈川河口(鳥の海)、仙台空港、蒲生、松島、南三陸町、気仙沼などを見てきた。研究室の天野達也さんや宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団の嶋田哲郎さんが同行した。地震・津波による被害は、予想をはるかに超えてすさまじいものだった。倒壊、埋没したおびただしい数の家屋などを見て、また亡くなられた多数の方々のことを考え、心がひどく痛んだ。
 干潟や砂浜、松林など、沿岸域の自然環境は大きく変貌し、もとの状態をとどめていないところが多かった。印象的だったのは、松島の状況だ。日本三景の一つとされるこの地の湾内には、大小200を超える島々がある。おそらく、これらの島々が自然の堤防となり、陸の沿岸部は津波の影響をほとんど受けていなかった。話には聞いていたが、ほかの地域、あるいは湾外の状況とあまりにも大きく違うことにおどろいた。沿岸部には多数の観光施設などのほかに、3万~4万羽にもなるウミネコの集団繁殖地があるが、どれも震災前と変わりがない様子だった。
 今後、復興事業がさまざまな形で行なわれていくだろうが、人々のくらしを支える自然や生きものの世界にも十分に配慮して進められる必要がある。



2011年6月1日(水)~3日(金) 北海道渡島半島

 托卵関係の情報収集のため、渡島半島の函館、大沼、黒松内などを訪れた。托卵研究者の内田 博さんが同行した。調査ではウグイス、センダイムシクイ、ツツドリ、ホトトギスの生息状況の確認に焦点をあてた。これらの地域では、ウグイスは低密度、センダイムシクイとツツドリは普通種で、ホトトギスは確認できなかった。来年以降、これらの地域でカッコウ類と宿主の関係について調査したいと思っている。
 大沼と黒松内では、ブナやミズナラのすばらしい森林をじっくりと見ることができた。黒松内のブナ林は北限のブナ林。林床には、シラネアオイ(左の写真)やニリンソウなどが美しい花をつけていた。

2011年5月18日(水) 霞ヶ浦へ

 学生の研究の進捗状況を見るために、前日の千葉県上総湊のツバメ調査に引き続いて、茨城県の霞ケ浦とその周辺に出かけた。ここで学生たちは、水田や蓮田を利用するシギ・チドリ類の環境利用について調べている。暖かな日差しの中で、車で移動しながら鳥たちの様子を見てまわった。チュウシャクシギやキョウジョシギ、ムナグロなどが見られた。蓮田と水田の組み合わせや農耕形態のあり方などが、種数、種構成、利用の季節変化に影響を及ぼしているようだ。
 東日本大震災時の液状化の影響を受けて、一部の場所では土地がでこぼこに歪んでいた。 写真はムナグロ。


2011年5月4日(水) 里山コンサート宇都宮

 昨春に東京で開催した里山コンサートが好評であったことから、今年は同コンサートが宇都宮で開かれた。主催は宇都宮大学里山科学センターなど。
  http://ssrc.utsunomiya-u.ac.jp/event/post_31.html
 東日本大震災と今でも続く余震の影響などから開催が危ぶまれたが、たくさんの方々にご参加いただき、充実した時をすごすことができた。昨年どうよう、山口由里子さんの歌、本庄篤子さんのヴァイオリン、坂田晴美さんのピアノ、樋口晴美さんの踊りが観客を魅了した。私は「生命(いのち)にぎわう里山の自然」と「鳥たちのコンサート」の2つを、スライドや音声を使いながら話した。コンサートの様子(動画)は、以下のサイトで見ることができる。
  http://115.146.50.155/news2/?date=2011-05-04
 左の写真は酒井すみれさん撮影。


2011年4月18日(月)~21日(木) 三宅島

 同僚の加藤和弘先生らとともに、新しい研究プロジェクト開始にあたっての各所へのあいさつと、生態系の回復状況調査のため、三宅島に出張した。山頂からの火山ガスの放出が減少しており、最近では一日数百トンくらいでとどまることが多いようだ。この状況が続けば、草木の緑が山頂へと広がっていくことが予想される。しかし、現在はまだ、島の上部3分の1くらいは高木の倒壊とそれにともなう土壌の浸食が進んでおり、景観全体は灰色から褐色だ。
 生態観察は太路池、伊豆、村道雄山線、神着などで行なった。太路池では、コマドリ、イイジマムシクイ、ミソサザイ、カラスバトなどのほか、オオバン、アオサギ、チュウサギ、コサギ、ダイサギ、ササゴイ、カワウなどの水鳥を観察した(右の写真)。
 20日、21日の両日は穏やかであたたかな日和で、すばらしいときをすごした。研究用に入手した住まいの外の高台に椅子をもちだし、海を眺めながら、この島ですごした40年ほどのできごとを思い返したりしていた。








2011年3月31日(木)~4月6日(水) モスクワへ

 日ロ及び日米渡り鳥保護条約会議に出席のため、モスクワに出張した。会場はロシア天然資源・環境省。日ロ、日米、日米ロの3回の会議が開かれ、それぞれかかわりのある渡り鳥の現状、保全策、協力のあり方などについて議論した。日ロの会議では、ツル類、ガンカモ・ハクチョウ類などの渡り、鳥インフルエンザの発生状況などに焦点があたり、日米の会議では、海鳥の混獲の回避、アホウドリの新繁殖地の創成、温暖化が渡り鳥に与える影響などが大きな話題になった。
 私は鳥フル関係で、東アジアにおける鳥の渡り経路、温暖化関係で、温暖化がハクチョウ類の個体数変化に及ぼす影響について話した。ロシア、米国とも、共同研究したことのある研究者が何人か出席していたので、今後のさらなる共同研究のあり方などについても話し合うことができ、有益な時間をすごすことができた。
 期間中の一日、モスクワから北に200kmほどのところにある“Crane Home Land”に出かけた。クロヅルの繁殖地や渡りの中継地になっているところで、保全活動には100年の歴史があるとのこと。Bio-stationの内部には、その長い歴史を物語るさまざまなものが置かれてあった。
 モスクワの市街地には雪がまだ残っていたが、暖かな日差しは、「光の春」を感じさせてくれた(左の写真)。

2011年3月24日(木) 学位記授与式

 東日本大震災の影響により大学全体での学位記授与式は行なわれないことになったが、専攻単位では実施された。この日は大学院の学位記授与式。対象は修士課程と博士課程を修了した学生。写真は授与式のあと、研究室の修了生と記念撮影したもの(酒井すみれさん撮影)。こののち、学生主催の謝恩会も開かれた。
 修了生の中には、就職する者、博士課程に進学する者、研究室に残る者などがいる。父兄との交流などもあり、楽しいひとときを過ごした。修了生たちの今後の活躍に期待したい。


2011年3月20日(日) 東北関東大震災の影響深刻

 3月11日(金)午後に、東北地方東海岸付近を震源地とするマグニチュード9の大地震があった。地震直後から津波が発生し、地震と津波による被害が甚大なものとなった。3月20日現在、死者は2万人近くと推定されている。震度4や5の余震が続いており、また福島の第一原子力発電所で重大事故が発生しており、いまだ予断を許さない状況だ。
 3月11日の地震時に、私は研究室にいた。8階建ての7階の研究室だが、大揺れに揺れた。コンピュータやプリンターなどが床に落ち、書棚から本がばらばらと落ちてきた。JRや地下鉄の電車の多くが止まってしまったため、深夜まで帰宅できなかった。
 宮城、福島、岩手などの各地では、現在、被災者がたいへんな困窮状態にある。心からお見舞い申し上げたい。

2011年2月19日~28日 インドネシアへ
 
 衛星追跡したハチクマの越冬環境の調査と、大学やワークショップでの講演のため、インドネシアを訪れた。野外調査は南カリマンタンと西ジャワで実施した。あらかじめ衛星画像上に落としておいたハチクマの滞在地点をたよりに、GPSで位置を確かめながら行動圏内を見てまわった。ハチクマの越冬環境は、よく茂った自然林から、森林、竹林、農耕地などがモザイク状に連なる里山的な環境だった(右の写真)。
 講演は、Bogor Agricultural UniversityとInternational Workshop on Migratory Raptors in Asiaで行なった。場所はともにボゴール。演題はどちらも鳥の渡りと保全関連。主な聴衆は、大学では景観生態学関連の教員や学生、ワークショップでは林業省のお役人、タカの生態や保全の関係者、学生などだった。ハチクマが20,000km以上の大きな迂回経路をたどりながら、日本とインドネシアの間を毎年往復していることに、みな驚き、感動していた。
 滞在期間中、いろいろな鳥を見ることができた。とくに印象的だったのは、西ジャワで見たJavan Kingfisher。赤いくちばしと紫紅色の羽毛がとても美しかった。期間中ずっと、Bogor Agricultural UniversityのLiaさんとRaptor IndonesiaのZainiさんが付き添ってくれた。西ジャワでは、東大の森林動物学研究室時代の後輩になる田中康久さんが合流、楽しさが倍増した。田中さんは現地でJICA関連の仕事をしている。




 西ジャワで越冬するハチクマの生息環境

2011年2月13日(日) 東京目黒の自然教育園で講演

 国立科学博物館附属の自然教育園でウグイスの特別展に合わせて講演会が開かれ、「ウグイスが教えてくれる自然のしくみー托卵と温暖化をめぐってー」について講演した。托卵については、托卵する側とされる側の攻防によって発達してきた両者の行動や形態の特徴を、ウグイスに焦点をあてながら話した。温暖化をめぐっては、ウグイスの初鳴きをふくめて、植物や鳥の生物季節の変化について話した。
 参加者は一般の方たちだったが、講演後に托卵のことなどをめぐって鋭い質問がいくつも出たので、受け答えを楽しむことができた。

2011年2月12日(土) 熊本へ

 熊本の再春館「一本の木財団」の主催で「自然を愛する講演会」が開かれ、「渡り鳥は今、訴える!―鳥の渡りと地球環境の保全―」について講演した。会場はホテル熊本テルサ、対象は一般市民。渡り鳥の現状と渡りの衛星追跡の成果について話した。
 当日の午前には、森林総合研究所九州支所の安田雅俊さんなどの案内で、市内の立田山を散策した。照葉樹林などが広がる環境だったが、運よく(?)、照葉樹林に降りしきる雪景色を楽しむことができた(左の写真)。ルリビタキ、シロハラ、モズ、ヒヨドリなどを観察した。
 

2月4日(金)~8日(火) 三宅島

 噴火後の生態系の回復状況などを調べるため、研究室の研究員たちと三宅島を訪れた。お天気に恵まれ、島内各所の定期観察地点を順調に見てまわることができた。島の上部3分の1ほどの地域は、昨年の同時期からさらに土壌浸食と裸地化が進んでいた(右の写真)。ガスが止まるまで、この状態は続くのではないかと予想される。
 島内の2か所で、越冬しているコマドリに出合った。人をあまりおそれず、じっくり観察することができた。照葉樹林内のある場所では、巣の中で死んでいるミソサザイを見つけた。新鮮な状態であったので、死因は不明。ウグイスは各所でさえずっていたが、ほかの鳥のさえずりはまだほとんど聞かれなかった。

2011年2月1日(火) 「爆笑問題のニッポンの教養」に出演

 夜10時55分から約30分間、上記NHK総合の番組に出た。タイトルは「カラスちゃんの㊙生活」。爆笑問題の二人と、カラスの食習性、地域食文化、知的な行動、遊びなどについて、映像や写真をまじえながら話した。水道の蛇口をひねるカラス、線路に置き石をするカラス、石鹸を持ち去るカラス、ろうそくを持ち去って火事を起こすカラス、すべり台ですべるカラスなどに、爆笑問題の二人はとてもおどろいていた。私は、これらの特異な行動をなぜカラスが見せるのかを、ジェネラリストの道を選んだカラスの進化史と合わせて解説した。出ていてとても楽しい番組だった。
 番組終了後、普段ごぶさたしている人をふくめて、いろいろな方からメールや電話などをいただいた。とても好評だったようだ。関係者によると、この日の視聴率は昨年4月以降の同番組で最高だったそうだ。
 番組の紹介は以下のサイトを参照。
   http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20110201.html

2011年1月31日(月) 千葉県新浜へ
 
 午前中、衛星用送信機装着のため、宮内庁新浜鴨場に出かけた。宮内庁職員の方々が捕獲してくださっていたオナガガモ数百羽の中から12羽を選び、送信機を装着した。この場所から衛星追跡するのは初めて。春の渡りが楽しみだ。
 午後は隣接する行徳野鳥観察舎に出かけた。蓮尾純子さんの案内で、保護区内で行なわれている生息地管理のいろいろな試みを見せていただいた。区画ごとに水の管理や撹乱の程度を違え、そこに生育、生息する動植物の種構成などを調べており、とても参考になった。

2011年1月28日(金) 論文の発表会とお疲れ会

 今週は、前半が博士論文の発表会、後半が修士論文の発表会だった。どちらも公開。修士論文の発表会が終わったあと、博士/修士まとめて、関係者でとりあえずのささやかなお疲れ会を開いた。今月は私も、学務関係の仕事や鳥インフルエンザ関係の取材などであわただしく過ごしてきたので、少しくつろぐことができた。写真は酒井すみれさん撮影。


2011年1月1日 久里浜から金谷へ

 快晴の元旦、妻と二人で三浦半島の久里浜から房総の金谷まで船で出かけた。40分ほどの短い船旅を楽しむのが目的。海上では、ユリカモメ、ウミネコ、セグロカモメ、トビなどが、人の与える餌に多数とりつき、いつまでも船についてきた。餌づけにはあまり賛成できないが、間近でじっくり観察、撮影する機会にはなった(写真はユリカモメ)。
 金谷では、いろいろな魚介類を購入した。帰宅後、海の幸に感謝しつつ、夕食を楽しんだ。
 ゆったりとした快適な一日だった。






































退職記念パーティでOB, OGらとともに。


撮影:酒井すみれ

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