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折々の記録 2010年以前



2010年

12月29日(水) 鳥インフルエンザ関連の会議に出席
 
 環境省の鳥フル関連の会議が都内であった。国内各地での発生状況、とくに鹿児島県出水のツルなどへの感染の現状と、現在とられている対策などが報告された。出水では感染が続いており、28日時点でツルなどの死亡個体が合計17羽になった。地元や国の関係者がたいへんな苦労をしていることはわかるが、今後の対策に向けての考えの整理や実施体制は明らかに不十分といわざるを得ない。現在の人員、経費、施設だけで対応しようとしているようだが、もし今後、死亡個体が急増することになったらどうするのか。というよりも、それに至らない前にできる限りの対処をしなければいけないのだが、それができているとはいえない現状なのだ。
 会議で救いだったのは、野生動物医学会が出水をはじめとした鳥フル問題に積極的に取り組む姿勢を見せてくれたことだ。今後、行政、市民、研究者の連携のもとで、なんとかこの難関を乗り切っていかなければならない。

12月20日ころから 出水のツルが鳥インフルエンザに感染

 この秋から冬、北海道、島根、富山、鳥取でカモ、ハクチョウ、ニワトリなどへの強毒性・高病原性鳥インフルエンザの感染が報告されているが、ここにきて、鹿児島県の出水で越冬するナベヅルやマナヅルなども感染して死亡している。12月25日現在、10羽ほどの死亡が報告されているが、今後、感染が拡大する可能性があり、きわめて心配な状況にある。
 出水には、毎年一万羽を越えるツル類が渡来している。大規模な給餌を行なっていることから、特定地域にツル類が集中している。狭い餌場/ねぐら場所での混み具合は異常で、しかもそこに種全体の個体数の8~9割ものナベヅル、何割かのマナヅルが集まる。したがって、ひとたび感染症が発生したおりには、個体群の維持が困難になる事態にもなりかねない。
 5年前に、環境省、農水省、文化庁の3省庁合同で検討会議が開かれ、分散化の必要性や緊急性、可能な候補地の選定、分散の手法などについてまとめた。私はその委員会の座長を務めた。検討会議を終える時点で私は、会議の成果を必らず実現するよう行政側に強く求めた。しかし結局、それ以降、国は分散化に向けて実質的に何もしてこなかった。この責任は重大といわざるを得ない。
 今後、とりうる限りの方策を試み、大規模な感染拡大を防ぐ必要がある。

12月24日(金)~25日(土) 伊豆沼へ

 放送大学の特別講義の収録(一部)のため、宮城県の伊豆沼に出かけた。特別講義のテーマは「鳥の渡り」。伊豆沼を訪れるいろいろな渡り鳥、伊豆沼から衛星追跡したオナガガモやオオハクチョウの渡りなどについて、日本科学未来館の岡山悠子さんとともに現地を歩きながら話した。25日は大雪になったが、早朝、ガンの大群が雪の中を沼から飛び立つ光景はすさまじくも美しかった。
 室内での講義の収録は、来年になってから。放送は来年度の予定。

12月21日(火) NHKの番組収録
 研究室で「爆笑問題のニッポンの教養」の番組収録が行なわれた。テーマは「カラスと人間」。爆笑問題の二人と、カラスの知的な採食行動、地域食文化、遊び、人間との軋轢、人間との共生など、いろいろな話題について話した。研究室の中央に平面の大形モニターを置き、そこにNHKや私自身、あるいは私の知人などが撮影した映像や写真を映し出しながら話を進めた。
 滑り台をすべるカラス、火のついたロウソクを持ち去るカラス、水道の蛇口をひねって水を飲むカラスなどの映像に、太田さん、田中さんともにとてもおどろいていた。興味深い内容にまとまるものと思われる。
 放映予定日は以下(変更の可能性あり)。
 2月1日(火)午後10時55分~11時25分 NHK総合
 2月7日(月)午後4時5分~4時35分(再放送)NHK総合
 2月8日(火)午後4時~4時30分(再放送)   NHK・BS-2

12月4日(土) 立教大で講演

 「タカの渡り全国集会in東京」で「サシバの渡りと里山環境の利用」について基調講演した。会場は東京池袋の立教大。この集会は、タカの渡りに関心をもつ人で構成されており、毎年違った場所で開かれている。今年は繁殖期のサシバの生態がテーマだったが、参加者の多くは渡りに関心があるはずなので、あえて渡りについてもそれなりにくわしく紹介した。
 会場は多くのタカファンなどの熱気に包まれていた。とても話がいがあった。

11月29日(月) 筑波大へ

 気候影響研究会の年会のワークショップ「温暖化が生物季節におよぼす影響」に招待され、講演した。演題は「温暖化が鳥や植物の生物季節におよぼす影響」。ほかには、環境教育と関連した生物季節情報の収集法、温暖化が農作物の生産に与える影響などについての講演があった。これまで論文でしか知らなかった研究者と交流することができ、有意義な時間をすごすことができた。
 気象庁の生物季節情報の収集が、いくつかの理由でこれまでどおりには行なえなくなってきているとの情報提供があり、非常に残念に思った。


11月23日(火)~24日(水) 済州島へ

 韓国・済州島の済州大学が開催するシンポジウム”Ecology and Conservation of Migratory Birds in East Asia”に招待され、講演してきた。演題は”Bird migration and the conservation of the global environment”。
 韓国では最近、鳥の渡り研究についての関心が急速に高まっている。済州大学では今後、ハチクマをはじめとしたタカ類の渡り研究に取り組んでいく予定とのこと。ハチクマはとくに春の渡りのさい、朝鮮半島を南下して日本に入ってくるので、韓国での研究が進むと、気象条件をふくめた経路選択などについてさらにいろいろなことが明らかになってくるものと予想される。楽しみだ。

11月21日(日) 環境プラニング学会で講演

 環境プラニング学会が生物多様性保全関連のシンポジウムを開催し、そこで「生物多様性と地球環境の保全」について基調講演した。会場は東大工学部。参加者は150名ほど。環境プラニング学会は、社会との接点をだいせつにしつつ、生物多様性の保全にいろいろな形でとりくんでいる。今後、いくつかの点で協力関係が生まれそうだ。

2010年11月9日(火) 『鳥たちの旅』韓国語版が出版

 中国語版に続いて、『鳥たちの旅』韓国語版が出版された。梨花女子大学のSangdon Lee准教授による翻訳、出版社はBioScience社。『鳥たちの旅』が、鳥が渡っていく先々の国で出版されるのはとてもうれしい。日本の自然や生きものの世界が、韓国や中国のそれらとつながっているということを、本書を通じてしっかりと伝えられるものと期待している。

2010年11月3日(水) 相模原市で講演

 文化の日で休日の午後、「生物多様性の保全―人と生きものが共生するために―」について講演した。会場は相模原市立環境情報センター。生物多様性関連のシンポジウムで、私の講演のほか、㈱積水ハウスによる多様性保全に向けた試み、地元住民による多様性に配慮した農業活動についての事例報告もあった。どちらの報告も興味深く、とても参考になった。
 相模原市は行政も市民も環境保全に熱心で、いろいろな活動を展開している。冬水たんぼの設置による渡り鳥の誘致なども、検討されている。今後が楽しみだ。ひょっとすると、何か一緒に試みる機会があるかもしれない。

2010年10月28日(木) 東京理科大学の客員教授を兼任

 この10月から、東京理科大学の客員教授を兼任することになった。総合研究機構というところに所属し、生物多様性の保全と管理に関連したことがらに広くかかわることになる。異分野の研究者と交流できるのが楽しみだ。



2010年10月11日(月) 伊良湖岬へ

 研究室の学生たちと、愛知県渥美半島先端の伊良湖岬に出かけた。タカ類などの渡りを観察するためだ。前日は豊橋泊で雨のち曇り、きょうは見事な快晴。数日、悪天候が続いたので、またタカ渡りの盛期でもあるので、多数のタカが見られることを期待したが、予想外に少なかった。午前7時30分から午後3時ころまでの観察で、サシバ、ハチクマ、ノスリなど全部合わせても100羽ほど。が、数が少ない分だけ、じっくりと見ることができた。
 この日、この岬にタカ渡りを楽しみにきた人の数は、推定で500~600人。多くの人が長大な望遠レンズ付きのカメラをのぞきながら、渡りゆくタカの写真をとっていた。
 タカは少なかったが、ヒヨドリは合計で3500羽以上が見られた。数10羽から100を超える群れになって次々に渡っていく様子は、見ごたえがある(左の写真)。久しぶりにのんびりと鳥見を楽しむことができ、よい1日だった。

2010年10月9日(土) 『鳥に魅せられた少年』出版

 小峰書店から、『鳥に魅せられた少年 -鳥類研究家オーデュボンの物語-』が出版された。ジャックリーン・デビース 文/メリッサ・スウィート さし絵/樋口広芳 日本語版監修/小野原千鶴 訳になる絵本だ(定価1400円)。小峰書店は、私の最初の著書『森に生きる鳥』(1976)が出版されたところ。34年ぶりのかかわり合いだ。『鳥に魅せられた少年』は、米国の鳥類画家として、あるいは「オーデュボン協会」の名称からも知られるジョン・ジェームズ・オーデュボンの少年時代を描いた本だ。小鳥のひなの足にじょうぶな糸を結びつけ、翌年戻ってくるかを調べた話が中心になっている。今でいう足環標識の先がけになった話だ。 
 絵とお話がよい雰囲気で構成されている。日本語版を監修するにあたっては、原版にあるいくつかの誤りや不正確な点を修正した。
 本の紹介は以下のサイトへ。
   http://www.komineshoten.co.jp/search/info.php?isbn=9784338235099

2010年9月27日(月)~29日(水) 三宅島

 二晩欠航ののち、27日早朝、ようやく三宅島に到着。今回は、噴火後の島の生態系回復状況の調査と、知人宅での片付けの手伝いの両方を兼ねての旅だった。知人宅では、研究室のメンバーなどの手助けも得て、家内外の整理整頓を行なった。今後、この家を研究・教育用の拠点とすることができそうだ。
 天気が不安定ではあったが、都道周辺を中心に島全体の状況を見てまわることができた。火山ガスは相変わらず出ている。が、ガスが届きにくい島の北側では、草木の緑が山腹を這い上がっているような様子が認められる。いずれガスの噴出がおさまれば、山頂に向けて緑が一気に広がるのではないかと思われる。ただし島の上部では、斜面の崩落と土壌の浸食が続いているので、植生が安定するのはしばらくあとのことだろう。

2010年9月26日(日) アキアカネの産卵

 台風の影響で三宅島行きの船が二晩欠航した。時間ができたので、午前中、二子多摩川から等々力方面へ多摩川べりを歩いた。モズの高鳴きがあちこちで聞かれ、秋の気配がただよっていた。
 いくつかの水たまりで、雌雄が連結したアキアカネが多数群がって産卵していた。鮮やかな赤い色の雄の後ろに地味な色の雌がつながり、水面を飛びながら、雌が尾の先端を水につけて産卵する(右の写真)。50cm四方の小さな水たまりにも、10組を超えるペアーが産卵にきていた。夏の終わりに見る「生命(いのち)のにぎわい」だった。
 多摩川の河川敷では、ダイサギ、コサギ、カワウ、セグロセキレイ、ハシボソガラスなどが観察された。



 研究室の学生などとともに
2010年9月17日(金)~20日(月) 日本鳥学会大会に参加
 千葉県船橋市の東邦大学で開かれた鳥学会大会に参加した。自身の講演の演題は、「ハクチョウ類の春秋の渡り衛星追跡」。ほかに共同発表者として10題の発表に加わった。
 参加者は500名ほど、盛会だった。毎年、一般講演の質が向上してきているが、今年はとくにその傾向が著しかった。希少種の個体群の遺伝的構造から鳥類の起源・進化にかかわる内容までふくまれ、充実していた。第一回の黒田賞を受賞した天野達也君(当研究室OB)の受賞記念講演、「鳥類個体群の時空間動態を明らかにする包括的アプローチ」もすばらしかった。
 日本鳥学会は、2012年に設立100周年を迎え、2014年には国際鳥類学会を東京に招致する。この二つの節目に向けて、今後、とくに若い研究者の活躍がおおいに期待される。
 今大会のプログラムは、以下のサイトで見ることができる。
  http://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/bio/theoeco/torigakkai2010youshisyu.pdf

2010年9月11日(土) NHKテレビ、ワンダー×ワンダーに出演

 NHK総合テレビの番組、ワンダー×ワンダー「ワシとタカ 美しきハンター」(午後8時~8時45分)に出演し、ワシタカ類の生態とその魅力について語った。共演者は、やくみつる、山本太郎、矢口真里などの芸能人。オオワシ、ハヤブサ、オオタカ、ミサゴ、ハチクマ、ノスリなどの狩りの様子が、NHKがこれまで撮りためた映像や飼育下の鳥を利用した特殊撮影によって見事に映し出されていた。番組の概要は以下のサイトで見ることができる。
  http://www.nhk.or.jp/wonder/program/42/index.html
 再放送は、9月14日(火)01:05~01:48(月曜深夜)に行なわれる。

2010年8月21日(土)~30日(月) ブラジルの国際鳥類学会に参加

 サンパウロ近郊のCampos de Jordaoで開催された国際鳥類学会(International Ornithological Congress, IOC)に参加した。会場は市内のConvention Center。参加者は約1200名、日本からは30名ほどが参加。
 23日(月)にPlenary Lectureとして、Bird migration and the conservation of the global environmentについて講演。講演中をふくめて多数の拍手があり、とても好評だったようだ。いろいろ興味深い講演があったが、神経行動学や景観生態学関連の研究にめざましい発展を感じた。渡り関連の研究も、追跡機器の発達により大きく進展している。
 季節は冬だが、気温は15~25℃ほどで快適だった。中日のOne day excursionでは、Itatiaia 国立公園に出かけた。標高1200mほどのところにある森林地帯。ハチドリ、インコ、チュウハシ、フウキンチョウ、ホウカンチョウなどの仲間を存分に見ることができた。
 4年後の2014年のIOCは、日本で開催されることになった。準備はたいへんだろうが、やりがいは十分にある。


 Plenary lectureでの講演



2010年8月11日(水) タカサゴユリ、花盛り

 早朝、逗子の住まいの近くを散策した。昨年の今ごろ、タカサゴユリが多数咲いていたのを思い出し、その方面に足を向けた。予想通り、白くて美しい花をつけたタカサゴユリが崖地の斜面にいっぱい咲いていた。
 タカサゴユリは台湾原産。細長い白い花をつけ、花の外側が赤紫色を帯びる。大正年代に日本に入り、現在では西日本を中心に広く分布している。しかし、逗子とその周辺で目につくようになったのは、ここ数年のこと。崖地や線路沿いなどの開けたところに多い。草木の生い茂ったところにはほとんどなく、裸地や丈の低い草がまばらに生えたところに見られる。
 開花時期は8月。種子によって繁殖し、種子は風散布される。そのため、増え始めると一気に広がるようだ。

2010年8月4日(水) スズメの水浴

 うだるような暑さの中、昼食をとりに学内のレストランに出かけた。東大のオープンキャンパスの日であったため、多数の人が学内を歩いていた。食後、三四郎池のほとりを散策中、池のふちでスズメが水浴びをしているのに出合った。3,4羽が入れ替わり立ち替わり、やってきていた。暑さしのぎにもなるのだろうか、気持ちよさそうだった。


2010年7月29日(木) 新聞記事:大雪山系でミユビゲラの生息確認(毎日新聞 7月29日

 北海道の大雪山系で、ミユビゲラが生息しているのが確認された。正式には1988年以来の確認。北方森林鳥類調査室と岩手大学農学部の4年にわたる合同調査の成果だ。本種の生息についてはこれまで不明な点が多く、個体群がほんとうに維持されているのかどうか疑問であったが、関係者は、少数ながら個体群が維持されているらしいことを報告している。
 ミユビゲラはアカエゾマツなどからなる天然林を主なすみかとするが、そうした森林は現在でも伐採されている。生息地の周辺でも伐採が進んでおり、この地のミユビゲラが今後も存続できるかどうか、非常に心配される。個体数や生息域についての詳細な調査を緊急に行ない、保全策を早急に立てる必要がある。ミユビゲラの保全は、この種だけにとどまらず、アカエゾマツなどからなる森林の生態系全体の保全につながるはずだ。
 北海道版の新聞記事には、私のコメントがのっている。



2010年7月26日(月) 『カラスの自然史―系統から遊び行動まで―』を出版

 北海道大学出版会から本書が出た(樋口広芳・黒沢令子編、定価3,000円+税)。近年、カラスの生態や行動についての研究は飛躍的に進展した。この進展は、野外観察によるものと飼育下での実験の双方からの貢献による。本書は、そうしたカラスの野外や飼育下での生態や行動についての研究成果を紹介し、カラスという興味深い生きものの存在のあり方を浮き彫りにすることを目的にしている。
 全部で4部からなっており、第一部「系統と進化」では、カラス類の進化、とくに種の系統や種分化にかかわることがらに焦点があてられている。第二部「生態分布と環境利用」では、カラス類の国内の分布や環境利用の実態が述べられている。第三部「カラスの食生活と生態系内の役割」では、カラス類の食生活が都市や沿岸域、あるいは島でどのように展開され、それがその地の生態系の中でどのような役割をはたしているかが紹介されている。第四部「カラスの社会と行動」では、カラスならではの社会や行動のあり方が述べられている。
 全体で15章、合計18名の研究者による分担執筆の形式をとっており、どの章も読みごたえがある(詳細案内)。

2010年7月24日(土) 共生社会システム学会で講演

 共生社会システム学会の大会シンポジウム「共生社会における里山の可能性」に招待され、「里山と生物多様性」について講演した。会場は宇都宮大学。シンポジウムでは、私の講演以外に、「地域社会に里山を残せるかー多様な主体による参加型の取り組み構築ー」(高橋俊守・宇都宮大)と、「里山と風土保全の現代的意義」(亀山純生・東京農工大)の2題の講演があった。
 学会委員以外に、地元の行政関係者や農業従事者も参加しており、総合討論をふくめて、里山がもつ地域活性、人間形成、生物多様性保全上のいろいろな可能性が議論された。また同時に、里山が抱えるさまざまに困難な問題点も話し合われた。問題点の中には、後継者不足による農業従事者の高齢化、圃場整備と機械化の普及、海外からの農産物輸入にともなう生産上の制約などがふくまれていた。とくに、農業従事者からの農業存続にかかわる切実な問題指摘が印象的だった。
 里山の自然と文化は、今、まさに存続と消滅のはざまに立たされている。秋に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議で、日本政府はSATOYAMAイニシアティブを提案し、促進する予定だ。旗上げだけでなく、真に実りある活動に発展することが望まれる。

2010年7月9日(金) 不忍池でウミネコ観察

 久しぶりに上野の不忍池に出かけた。池にはウミネコの姿が目立ち(写真)、上空を鳴きながら飛んでいる光景も目についた。今年生まれの幼鳥の姿も見られた。この時期に不忍池でウミネコが見られるようになったのは、2003年頃から。私は見ていないが、池のほとりの地上やビルの屋上で繁殖しているとのこと。
 今後、たくましく増えていくのだろうか。そうだとすると、ほかの鳥類の繁殖の阻害要因になりそうだ。





 ホテル白砂亭から見た浜名湖
2010年7月1(木)、2日(金) 海洋生物の多様性保全と利用に関する学生フォーラムに参加

上記フォーラムが静岡県浜名湖畔にある東大・水産実験所で開かれ、参加し、講義した。私の講義のテーマは「生物の多様性と地球環境の保全」。生物多様性の意味、価値、消失の実態、保全・管理のあり方などについて話した。講義はほかに、東大、横国大、名城大、広島大、長野大などの先生が、沿岸や海洋の生物多様性の保全と管理にかかわる話をした。20名ほどの学生は、これらの話を聞きながら知識を深め、後半はグル―プに分かれ、特定の問題について議論した。
 これまでは主に、陸上の生物多様性の保全にかかわってきたので、海洋生物の保全・管理についての講義や議論はとても新鮮で、また勉強になった。海洋生物は、食料に利用されるという点で多くの陸上生物と異なる。利用しながらどう保全し、管理していくのか、生態系サービス、持続可能な利用、順応的管理などのキーワードが頻繁に使われながら議論がはずんだ。  

2010年6月26日(土) 宇都宮大学で集中講義

 宇都宮大学里山科学センターの企画になる「里山野生鳥獣管理技術者養成プログラム」の講義の一環として、保全生物学の基礎と応用について講義した。このプログラムは、文科省の科学技術振興調整費を利用したもので、鳥獣害の専門的な知識と技術を備え、地域で指導的な役割を果たすことのできる人材を養成することを目的にしている。受講者は主に、栃木県内の農業従事者や行政関係者、学生。関連のことがらにいろいろな知識と経験をもつ人たちが多かったので、保全生物学の基礎と応用にも関心が高く、とても話しがいがあった。
 宇都宮大学の構内は、私の学生時代と比べると新しい建物が増え、全体により洗練されたたたずまいを見せていた。40年ほど前には、構内に自転車が多数置かれていたが、今は車の方が圧倒的に多い。構内を歩きながら当時のことをいろいろ思い出し、なつかしかった。

2010年6月19日(土) 農学部公開セミナーで講演

 一般の方向けの公開セミナー「動物の行動を科学する」で、「カラスの特異な食習性と地域食文化」について話した。車を利用したクルミ割り行動、石鹸やロウソクの持ち去り行動、都市における生ごみの利用などを例にあげ、カラスの地域食文化について論じた。この夏に発行予定の『カラスの自然史』(樋口広芳・黒沢令子編、北海道大学出版会)に所収予定の論考にもとづく話だ。
 私の講演以外に、ガの匂いと音によるコミュニケーション(石川幸男教授)、マツノマダラカミキリの行動と松枯れ(富樫一巳)、ペットの行動治療(武内ゆかり准教授)の講演があり、300名定員の会場に360名が入る盛況だった。会場は東大構内にある弥生講堂。

2010年6月16日(水) 川口で講演

 埼玉県川口市の川口市民大学で、「生命(いのち)にぎわう青い星―地球の生物多様性―」について講演した。会場は、川口総合文化センター・リリア。生物の多様性とは何か、生きものの世界はどのくらい多様なのか、なぜそんなに多様なのか、どのようにして多様になってきたのか、保全していくにはどうしたらよいのかなど、生物多様性の意味、仕組、進化、保全について話した。宇宙から見た青い星、地球の写真、身近な自然やさまざまな生きものの写真などを使用しながら、異なる種類の生命(いのち)のつながり、異なる地域や環境の生命(いのち)のつながりに焦点をあてて話を進めた。
 参加者は主に熟年層だったが、皆、とても熱心に聞いてくれていた。

2010年6月12日(土)~14日(月) 栃木県市貝へ

 サシバの捕獲と衛星用送信機装着のため、市貝に出かけた。ここでの送信機装着は数年ぶり。5羽を捕獲して、そのうち体重の重い2羽に送信機を装着した。今後の追跡が楽しみだ。
 今回はサシバ以外に、ウグイス、ホトトギス、キジバト、キジ、アオサギ、カルガモなどが目や耳についたが、出合いの機会が限られているアオゲラやヤマセミを観察することもできた。また、外来種のガビチョウのさえずりがあちこちで聞かれた。この声は数年前には聞かれなかったので、ガビチョウは最近すむようになったのだろう。
 市貝では今、ヤマボウシが花盛り(写真)。家の近隣にあるものが目につくが、まっ白いたくさんの花々が緑の景色の中できわだっている。

2010年6月10日(木) 足利工大で講演

 栃木県の足利工業大学で開かれた風力エネルギー利用総合セミナーで、「鳥の渡りと鳥衝突」について講演した。このセミナーは、風力エネルギーの利用と課題についての総合的な理解を深めるためのもので、国内外の施設紹介、技術的側面、環境アセスメント、鳥衝突、騒音問題などについて15題の講演があった。参加者は200名ほど。熱心な討議が行なわれ、いろいろと勉強になった。異分野の人との交流はいつも刺激的だ。


2010年6月4日(金)~7日(月) 済州島へ

 温暖化関連の研究集会に出席するため、韓国の済州島に出かけた。研究集会は、米日韓の研究者による共同研究の進捗状況の発表と、今後の研究課題についての議論が主な内容だった。参加者は、Richard Primack (Boston Univ.), John Silander (Univ. Connecticut), Ines Ibanez (Univ. Michigan), San-Don Lee (Ewha Woman’s Univ.), Hiromi Kobori (Tokyo City Univ.)など。私はEffects of climate change on the population trends of Whistling Swansについて発表した。10数名のこじんまりした集会だったが、その分、ゆっくりと話し合うことができ、とても有意義な時間をすごすことができた。
 島の中央部にあるハルラ山へのハイキングもすばらしかった。標高1,950mあるこの山は、「済州の火山島と溶岩洞窟」の主要部分として、ユネスコの世界遺産にも登録されている。広大な森林と、山頂付近で広範囲にわたって咲き誇るツツジが見事だった。鳥は、ウグイス、ホトトギス、ヤマガラ、ヒヨドリ、メジロ、ミソサザイ、オオアカゲラなど、日本でなじみのある鳥が多かった。日本のこんな近くに、こんなすばらしい自然があることを今まで知らなかった。写真は、ハルラ山でのひとこま。 
2010年5月31日(月)~6月3日(木)三宅島

 定期的に実施している噴火後の生態系回復状況調査のため、伊豆諸島の三宅島に出かけた。連日、晴天に恵まれ、実に快適な日々をすごすことができた。噴火の影響からほぼ回復している太路池周辺は緑が美しく、青い湖面とよい調和を見せていた。
 今回は、島の中腹をめぐるハチマキ道路の上まで足を延ばした。このあたりは、噴火時の土石流の影響をまともに受けて木々がなぎ倒され、その後の風雨による浸食を通して地面が露出している。草木はほとんど生育しておらず、地獄絵図の様相を呈している。火山ガスの噴出がおさまれば、草木が生えて土壌も安定してくるのではないかと思われるが、そうなるのには数十年はかかるのではないかと思われる。
 島の西部の都道沿いにあるよく茂った森林で、ミソサザイの巣を観察する機会があった。巣の中には、未孵化の卵が二つと孵化したばかりの雛が2羽入っていた。三宅島は今、噴火による被害が加速しているところと、着実に回復への道を歩んでいるところが混在している。


 太路池の森


2010年5月22日(土) 我孫子で講演

 我孫子市鳥の博物館開館20周年企画展「鳥たちの旅―渡り鳥のくらしを追う―」の関連行事として、「鳥たちの旅―渡り鳥の衛星追跡―」について講演した。会場は、手賀沼親水広場「水の館」。これまでの衛星追跡の成果や、今後の研究の可能性などについて話した。講演後には熱心な質問がいくつもあった。参加者には鹿児島や岐阜から来られた方もいたとのこと、うれしい限りだ。会場内で販売した絵本『わたり鳥の旅』(偕成社刊)は、60冊ほども売れた。終了後に、博物館友の会の皆さんと楽しい懇親のひと時をもつことができた。
 左の写真は時田賢一さん提供。
 

2010年5月20日(木) British Birdsに総説論文が掲載

 イギリスの鳥類雑誌 British Birdsに、私の衛星追跡の総説論文がのった。

Higuchi, H. 2010. Satellite tracking the migration of birds in eastern Asia. British Birds 103:284-302.
 British Birdsは100年以上の歴史をもつ伝統ある雑誌。私の論文は、これまでの20年間にわたる衛星追跡研究の紹介で、前半は、ツル類やコウノトリ類、タカ類などの渡り経路についてまとめ、後半は、経路選択や環境利用のあり方、保全関連のことがらについて述べた。雑誌全体がカラーなので、カラーの経路図や鳥の写真などを多数のせることができた。招待論文であるためページ制限もなく、20ページほどの長い論文になった。
 早速、いくつかのところから別刷(pdf)の請求がきている。



2010年5月8日(土) キジバトの日光浴と相互羽づくろい

 晴天の休日、三浦半島中部の野山に出かけた。緑が濃くなってきた森の木々の間でフジの花が咲き誇り、とてもきれいだった。林床の日のあたる場所では、キジバトのつがいが日光浴をしていた。一羽は写真のように片翼を広げ、翼の裏面にも陽光をあてていた。2羽は時折、相手の頭や顔を羽づくろいし合っていた。とてもほほえましい光景だった。


2010年4月21日(水) 中国語版『鳥たちの旅』到着

 2005年に出版された『鳥たちの旅ー渡り鳥の衛星追跡ー』(NHK出版)の中国語版が出版され、届いた。翻訳は研究室OBの関 鴻亮さんと上海・復旦大学の馬 志軍准教授が中心になって進めてくれた。出版社は復旦大学出版会。本書はツル類、タカ類、コウノトリ類など中国国内を渡る鳥を多く扱っているので、中国の人たちにもぜひ広く読んでいただきたい。また、これをきっかけに、中国の研究者や保全関係者とよい交流ができるようになることを望みたい。
 中国語版を届けてくれたのは、関さん。私の研究室で修士課程を終え、現在は北京で環境コンサルタントの会社を経営している。日本語が堪能で、中国と日本の鳥や自然関係の研究や仕事のよい架け橋となってくれている。


2010年4月16日(金) 里山コンサートの開催

 東京文京区のシビック小ホールで、里山コンサートを開いた。里山の自然や生きものが織り込まれた唱歌を集め、音楽を通じて里山の自然について理解を深めようというのが開催の主旨だ。370ほどの席が、1週間ほど前までに予約で満席になった。コンサートでは、山口由里子さんの歌、本庄篤子さんのヴァイオリン、坂田晴美さんのピアノ、樋口晴美さんの踊りが、それぞれすばらしい魅力を発揮し、観客を魅了した。私は「生命(いのち)にぎわう里山の自然」と「鳥たちのコンサート」という2つの話を、スライド上映をまじえながら行なった。コンサートの最後には、出演者と参加者の全員で「ふるさと」を合唱した(写真、酒井すみれ撮影)。
 唱歌の歌詞の美しさをあらためて認識するとともに、里山をめぐる音楽と自然の、今風にいえばコラボレーションのすばらしさに感動した。数多くの人とともに素敵な時間をすごすことができ、幸せだった。


3月15日(月)~19日(金) 東大駒場で生態学会大会

 年度末のあわただしい中、生態学会の大会に参加した。今年は東京での開催とあって参加者が多く、とりわけ盛会だった。全日程に参加する余裕はなかったが、学生や共同研究者と一緒に、ヤマガラの遺伝的構造やツバメの雌雄関係、アカゲラの個体群存続モデルなどについて共同発表した。また、三宅島2000年噴火による島の生態系への影響とその後の回復過程について、企画集会を開いた。三宅島は噴火後10年を迎えることもあり、これまでの研究を振り返り、今後の研究のあり方を探る上で、この企画集会はよい機会となった。
 興味深い発表がいろいろあったが、東京での開催のため、身辺のあわただしさから、身の入りにくい状態が続いて残念だった。

2010年3月4日(木)~7日(日) クロツラヘラサギの保全をめぐる国際シンポジウム

 九大・東大GCOEプログラム主催により、九大の西新プラザで上記のシンポジウムが開かれた。クロツラヘラサギの生態や渡り、各地の生息状況、保全上の問題点、今後の保全対策などについて、分布域内にある韓国、中国、台湾、日本の研究者が集まって議論した。私は基調講演で、Migration and conservation of birds in East Asiaについて話し、パネルディスカッションで台湾のDr. Lucia Severinghausとともに司会・進行を務めた。
 ここ数年、クロツラヘラサギをめぐっては渡りや繁殖生態、遺伝的構造などをふくめて研究が大きく進展しており、今回はその成果の多くを聞くことができたので、有意義な時間をすごすことができた。クロツラの個体数は全体として増加傾向にあるが、生息条件の悪化などいろいろな保全上の問題があり、今後の動向を注意深く見守っていく必要がある。

2010年3月1日(月) 『わたり鳥の旅』を出版

 偕成社より、絵本『わたり鳥の旅』(作・樋口広芳・絵・重原美智子、1400円)が出た。コハクチョウ、マナヅル、ハチクマの3種をとりあげ、衛星追跡によって得られた時間と位置情報にもとづき、想像をたくましくして渡りの様子を絵と文章にしたものだ。できあがった本を見て、あの味気ない数値情報が、よくここまで美しい自然や生きものの世界に生まれ変わったものだと、われながら感心している。重原さんの絵が見ものの絵本だ。
 偕成社の以下のサイトに、出版に向けての私のメッセージがのっている。

    http://www.kaiseisha.co.jp/newbook/new144.html

2010年2月4日(木)~5日(金) 福岡で講演

 九大・東大のGCOEプログラム主催のシンポジウムに参加、講演した。このGCOEのテーマは、アジアの保全生態学。今回のシンポジウムは、アジア地域の生物多様性の現状と保全研究についての講演や研究発表の場だった。私の演題は、「東アジアにおける鳥の渡りと生息地ネットワーク」。東アジアの各地の生態系が鳥の渡りによってどうつながっているのか、そのつながりは何によって決まっているのか、つながっていることによって何が起きているのか、またこれから何が起きるのかなどについて、環境破壊や温暖化の問題を絡めて話した。

2010年1月23日(土)~24日(日) 熊本へ

 熊本市の熊本県民交流館で「鳥の渡りと地球温暖化」について講演した。温暖化関連の講演会だった。日本野鳥の会の熊本支部や地元の自然観察グループの方々が参加しており、熱心に質問してくれた。
 講演前に、地元の方に水前寺公園や江津湖を案内していただいた。水前寺公園は以前、ササゴイの投げ餌漁について研究したなつかしい場所だ。この時期にはササゴイはおらず、ユリカモメやアオサギなどの姿が目立った。江津湖周辺では、道沿いにいろいろな鳥が次々に現れ、観察を楽しむことができた。とくにヒドリガモ、オオバン、セグロセキレイ、ジョウビタキなどが印象的だった。たくさんの人たちが散策や自然観察を楽しんでいるのも印象的だった。

2010年1月21日(木) 『生命(いのち)にぎわう青い星ー生物の多様性と私たちのくらしー』出版
 
 化学同人社より、上記の小著が出版された。自然や生きものが織りなす生物の多様性について、一般の方を対象に記述した書だ。生物多様性にかかわる問題は、決して新しいものではないが、本年10月に開かれる生物多様性条約締約国会議(COP10 )を少し意識し、これを機会にもう一度、生物多様性の意味や仕組、現状や今後の保全のあり方などについて、わかりやすくまとめておこうと意図して書いた。専門家を対象にしていないので、個々のことがらの詳細は述べていないが、専門外の人にはよい参考になるのではないかと期待している(詳細案内)。
 2月には、偕成社から『わたり鳥の旅』が出版される。重原美智子さんのすばらしいイラストが見ものの絵本だ。また、2005年に出版された『鳥たちの旅ー渡り鳥の衛星追跡ー』の中国語版も出ることになっている。楽しみなことである。乞う、ご期待!

2010年1月17日(日)~19日(火) 宮城県伊豆沼

 昨年の冬に引き続き、伊豆沼でオナガガモとオオハクチョウに衛星用の送信機を装着した。オナガガモには背中にランドセルのように背おってもらい、オオハクチョウには首環に接続させた(左の写真)。これまでこの2種の衛星追跡は順調に進んでおり、多数個体を対象に春秋の渡り経路だけでなく、経時移動様式、重要中継地、環境利用などの貴重な情報が豊富に得られている。
 今回、調査の合間に気づいたことだが、伊豆沼ではマガンの人への警戒心が明らかに和らいでいる。以前は数百mからの距離でも飛び立ってしまうことが多かったのに、今では道端から数10mのところでも平気で採食したり、休息しているものがいる。安全であることがわかり、無駄な警戒をしなくなっているのではないかと思われる。

2010年1月9日(土)~10日(日) 豊岡へ

 コウノトリ野生復帰の討論会に出席、講演のため、兵庫県の豊岡市に出かけた。豊岡市でのコウノトリ野生復帰事業は、市民、行政、研究者の連携のもとで順調に進んでいるが、放鳥個体の餌付け、分散、渡りをめぐっていくつか困難な問題を抱えている。今回の討論会は、それらの問題を率直に見つめ、議論する場だった。私は「東アジアにおけるコウノトリの渡り」について講演し、豊岡のコウノトリの移動や分散などについて、今後、考慮していくべきことがらを提言した。
 討論会の前後には、地元の方たちの案内で、コウノトリの環境利用や採食の様子を観察した。一つの人工巣塔の上では、すでに交尾を行なっているつがいがいた(左の写真)。討論会と合わせて、地元の人たちとよい交流ができ、有意義な時間をすごすことができた。



2009年


2009年12月12日(土)~16日(水) イスラエルへ

 テルアビブ大学渡り鳥研究センター30周年記念シンポジウムでの講演のため、イスラエルに出かけた。会場は1500人を収容できる大講堂で、学内外からの参加者でぎっしり埋まっていた。記念講演は私のをふくめて4題、イギリスのIan Newtonによる渡り鳥の個体群研究や、イタリアのFernando Spinaによる渡りの適応戦略の話が印象的だった。
 私は衛星追跡の結果を織りまぜながら、渡り鳥がつなぐ自然と人の世界に焦点をあてた話をした。朝鮮半島で南北に離散した鳥類学者親子が、シベリアムクドリの標識、再捕獲を通じて互いの安否を知ることになる話を最後に紹介した。このシンポジウムには、紛争の絶えない中東諸国の中にあって、国境を越える鳥の渡りへの理解を深めることを通じて、平和の大切さを訴えるねらいがあった。私の話はそれを意識して構成したものだったからか、講演終了後には信じられないほどたくさんの拍手を受けた。
 シンポジウムの前後には、エルサレムやテルアビブ郊外への観察旅行に出かけた。湿地では3万5千羽のクロヅルの群れを観察し、荒涼とした丘陵地帯では、ハイラックスアイベックスやなどの哺乳類に多数出合った。



 テルアビブ大学のシンポジウム会場。
2009年12月6日(日) 日本野鳥の会神奈川支部で講演

 神奈川支部の会員フォーラムで、「鳥の渡りと地球温暖化」について講演した。会場は神奈川県民センター。鳥の渡りについては、最近の衛星追跡にもとづくカモ類、ハクチョウ類、タカ類の衛星追跡結果を中心に話した。温暖化については、温暖化が鳥の繁殖時期や植物の開花時期などに及ぼす影響の事例を紹介した。加えて、日本に渡来するコハクチョウの個体数増加が繁殖地や越冬地の温暖化と関連していることを述べた。コハクチョウと温暖化についての研究は、衛星追跡と連動したもので、衛星追跡の結果明らかになった繁殖地などの気象条件との関連を調べている。
 支部の会員はとても熱心に話を聞いてくれていた。野鳥の会の会員の間でも、渡りと温暖化についての情報が集められつつある。

2009年12月1日(火) キャロラ・ハースさんのセミナー

 米国バージニア工科大学のキャロラ・ハースさんが10年ぶりに来日され、東大でセミナーを開いてくれた。ハースさんはニューヨーク州のコーネル大学で博士号を取得したのち、2年間、山梨大学で博士研究員を務めた。現在はバージニア工科大学の准教授。モズ類の分散行動に興味をもっており、今回のセミナーの演題は、Dispersal behavior of a migratory bird, the Loggerhead Shrike (Lanius ludovicianus)。中距離を移動しながら先々で繁殖する興味深い行動の事例などを、日米のモズ類を中心に紹介してくれた。セミナーには、彼女の日本滞在中に親交を深めたいろいろな人が参加していた。当時の思い出がよみがえり、私もなつかしく、楽しい時間をすごすことができた。
 写真は、セミナーで講演するキャロラ・ハースさん。
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2009年11月26日(木) 東大構内の紅葉

 構内のケヤキやイチョウ、カエデなどの紅葉がきれいだ。忙しい合間をぬって散歩し、写真撮影を楽しんだ。工学部のイチョウの巨木、正門から安田講堂に向かうイチョウ並木、三四郎池周辺のケヤキやカエデなどがとくに美しい。道端には落ち葉がつもり、歩くとさわさわと音がする。雨が一度降れば、この紅葉も終りだろうか。
 写真は三四郎池周辺の紅葉。


2009年11月16日(月) ピーター&ローズメリー・グラント博士夫妻の講演会

 今年度の京都賞を受賞された両博士をお招きして、東大理学部で講演会を催した。演題は’Evolution of Darwin's Finchies’。一時間の講演の前半をピーターが、後半をローズメリーが分担し、ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチ類の形態変化と適応放散のあり方について話した。両博士が中心になって実施してきたこの一連の研究内容の概要は、日本語にも翻訳されている『フィンチの嘴』(樋口広芳・黒沢令子訳、早川書房刊)にわかりやすく紹介されている。が、やはり実際の講演で聴く話は迫力があり、たいへん興味深かった。講演後にはいろいろな質問が出て、一時間ほどのやりとりが行なわれた。この議論もとても有意義だった。
 講演会終了後には懇親会が開かれ、ここでもまたいろいろな意見交換、情報交換が行なわれた。島の生物や進化に興味をもつ研究者が参加されていたようで、グラント夫妻との間や日本人研究者間で話が盛り上がっていた。 
 写真は質問に受け答えするグラント夫妻。

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2009年11月14日(土) 専攻10周年記念パーティ

 早いもので、生圏システム学専攻が設立されてから10年が経った。それを祝い、9月に学内に開所したばかりの向丘ファカルティハウスで記念パーティが開かれた。約80人の現役やOBらが集まり、近況を語り合い、親交を深めた。OBの中には、世界を相手に第一線で活躍する研究者もいれば、保全にかかわる行政に携わる人、マスコミ界で活躍する人もいる。なつかしく、楽しく、また有意義なひとときだった。
 写真は、パーティの最後に撮影したグループ写真。
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2009年11月5(木)~9日(月) 台湾で国際ハチクマ会議開催
 

台北でハチクマの渡りと生態をめぐる国際会議が開かれ、出席、講演してきた。この会議は、台湾中央科学院のDr. Lucia Severinghausと私が中心になって企画し、Luciaがたいへんな努力をして実施にこぎつけたものだ。台湾、日本、マレーシア、ドイツ、オランダ、スウェーデンなどの研究者70人ほどが参加した。日本からは、東大関係者以外に信州タカ渡り研究グループのメンバーなどが参加した。

会議では、渡りの実態、渡りと換羽との関係、台湾での留鳥化の過程、個体群の遺伝的構造、特異なハチ食性の詳細、行動圏や環境利用などについての講演があり、それらをめぐって活発な議論が行なわれた。私はハチクマの春秋の渡りの実態について講演した。

 会議後には、台中方面でのハチクマの観察旅行が企画され、養蜂場や繁殖地などを訪れ、ハチクマの観察と撮影を楽しんだ。台湾では現在、ハチクマが1000羽単位で留鳥化している。この留鳥化は、ハチクマによる養蜂場の利用が関係しているようなのだが、その関係は、思うほど簡単なものではないことがこの観察旅行の中でわかった。しかし、留鳥化の過程は、行動の変化あるいは進化を考える上で予想以上に興味深いことであるようだ。

 写真は、養蜂場にやってきたハチクマ。11月9日撮影。
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2009年10月6日(火)~9日(土) パリで講演

 パリで開かれた衛星追跡30周年記念の国際会議に招待され、講演してきた。会場はパリ国立科学博物館。参加者はヨーロッパ諸国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの研究者や技術者。技術の革新と最先端の生態研究とが融合したすばらしい研究の成果がいくつか紹介された。とくに極地の海洋関係の研究は、目を見張るものがあった。フランスはこの方面にとても力を入れており、衛星を利用した海洋科学研究を先導しているといえる。記念講演は3つあり、私のはそのうちの一つ。ツル類とタカ類の渡りに焦点をあて、これまでの成果の概要を話した。
 パリは黄葉が始まったころで、初秋のたたずまいを見せていた。マロニエの並木の間を抜けるシャンゼリゼ通り、エッフェル塔を背に見るセーヌ川など、パリは本当におしゃれな街だ。


会場となったパリ国立科学博物館内の関連展示の一角。私の講演内容の一部が紹介されている。
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2009年9月19(土)~23日(水) 鳥学会大会に出席

 函館の北海道大学水産学部で開かれた日本鳥学会大会に出席した。参加者は350名ほど。若い人を中心に、研究の質の向上がはっきりと認められた。私自身は「コハクチョウとオオハクチョウの春の渡り衛星追跡」について発表した。この春に追跡した結果の報告だ。
 今大会はいくつかの場面で、データロガーを利用した海鳥の行動研究が飛躍的に進展してきていることを感じた。データロガーの利用は、データ収集後にロガーあるいはその中に蓄積されているデータそのものを回収することが前提で、関連の機器は、巣に戻ってくる個体を簡単に捕獲できる海鳥で活用されている。が、今後、データの回収方法が進歩すれば、ロガーを利用した生態、行動研究は、海鳥以外のいろいろな動物にも適用されていくはずだ。体温、気温、高度、行動の種類などを秒単位で記録できる機器の利用範囲は、非常に広いと思われる。
 開催期間中のある朝、大会会長の任にあってお忙しい北大水産学部の綿貫 豊准教授にお願いして、近隣の山を案内してもらった。ヤマブドウの実がなり(右の写真)、ツヅレサセコオロギが鳴く山野を散策して、初秋の自然を楽しんだ。

2009年9月17日(木) 『鳥の自然史―空間分布をめぐって―』発刊

 北海道大学出版会から『鳥の自然史―空間分布をめぐって―』(樋口広芳、黒沢令子編著)が発刊された。本書は、I.日本の鳥類とその由来、II.分布の変遷とその影響、III.分布のあり方を探る、IV.広域分布研究と保全・管理の4部、全体で13章からなっている。近年の空間分布をめぐる話題をすべてとり扱っているわけではないが、鳥類を対象として行なわれている主要なことがらを扱っている。執筆は章ごとに、関連分野で活躍している主に若手から中堅の研究者が担当している。全体として、鳥類の空間分布をめぐる研究の現時点での到達点を知ることができる。定価3000円(+税)。

2009年8月31日(月) 台風の中のカラス

 本日午後、台風11号が関東地方に接近。激しい風雨の中、向かいのビルの屋上でなかよく並んでただずむ2羽のハシブトガラスが、研究室の窓から見えた。おそらく、この辺一帯にすみつき、今春、近くのリュウキュウマツ上で営巣したつがいだ(4月13日の項参照)。雨に打たれながらも、時折、見つめ合うような仕草を見せていた。双眼鏡で見たところ、雨滴が体表面を伝い、羽毛は文字通り、濡れ羽色に輝いていた。雨を嫌がるというよりも、雨に打たれるのを好んでいるようだった。「雨浴」をしていたのかもしれない。
2009年8月18日 Biological Conservation誌の日本の保全特集

 Biological Conservation 142巻9号、日本の保全特集号がon lineで見られるようになった。Higuchi, H., Corlett, R., Primack, R. B.による責任編集で、Introduction, Conservation of Species, Conservation of Ecosystems and Processes, Overview of Conservation Issues in Japanの4部構成になっている。具体的な保全活動に結びついている例を中心に、11編の論文を収録。以下のサイトを参照。

    
http://www.sciencedirect.com/science/issue/5798-2009-998579990-1377055

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2009年8月8日(土) バードリサーチの5周年記念集会に参加、講演

  NPO法人バードリサーチが設立5周年を迎えた。この日、府中で記念集会が開かれ、講演や研究発表が行なわれた。私は「鳥の渡りと地球温暖化」というテーマで講演した。ほかには、立教大学の三上 修さんによる日本のスズメの個体数、科学ジャーナリストの柴田佳秀さんによる銀座のカラスが好む場所などについての話があった。集会後には懇親会が開かれ、いろいろな人と情報交換をした。楽しい集まりだった。
  バードリサーチは、少人数で運営しているが、一人ひとりがしっかりとよい役割を果たしており、活動は順調に推移している。今後も支援していきたい。

 写真提供:加藤ななえ

2009年7月27(月)~30日(木) 韓国へ
 

クロツラヘラサギに衛星用送信機を装着するため、韓国の西岸、ソウル近郊のインチョン付近に出かけた。インチョン付近には世界有数の広大な干潟がある。クロツラヘラサギは、そうした干潟が海水に満たされた時に岩塊として残る小島で繁殖する。今回は2つの島で3羽の巣立ち前後の幼鳥に送信機を装着し、ほかの2羽に色足環を装着した。

今回の調査は、九大ー東大のGCOEプログラムの一環として実施し、九大からは小池裕子教授と学生2名が、東大側からは藤田剛さんと私の2人が参加。韓国の共同研究者は、国立生物資源研究所や韓国環境生態研究所などの研究員。今回は下見を兼ねた短期の調査だったが、今後おそらく本格的な共同研究が展開されることになる。

今回、宿泊地として滞在したのは、調査地に近い山あいのペンション。夜になると、コノハズクやヨタカ、トラツグミなどが鳴き、昼間はブッポウソウが飛びまわるすばらしい場所だった。韓国の研究者や宿のご夫婦の親切も加わって、夏休みにサークルの合宿に参加したような、あるいはいなかの家に遊びに行ったような気分にもなった。写真は繁殖地の島で過ごすクロツラヘラサギ。7月29日撮影。





 

 2009年7月25(土)~26日(日) えひめ環境大学で講演

  愛媛大学内で開講されているえひめ環境大学で
、「鳥の渡りと地球環境の保全」について講演。対象は環境問題に関心をもつ市民、野鳥の会の会員、学生など。皆、とても熱心に聴いてくれていた。講演前には、坂の上の雲ミュージアムを訪問、秋山好古や正岡子規などの松山での暮らしやその後の活躍などについて学ぶ。講演後には、立川 涼名誉教授や沿岸環境科学研究センタ-の田辺信介教授と夕食をともにする。どちらもとても有意義な時間だった。

2009年7月18(土)~20日(月)名古屋へ

 名古屋大学野依記念学術交流館で開かれたアジア研究助成機関長会議(ASIAHORCs)・生物多様性シンポジウムに参加し、講演した。参加者は、日本、中国、韓国、タイ、インド、オーストラリアなどの研究者や学生。希少種や生態系の保全をめぐる研究や保全活動についていろいろな報告や講演があった。講演などの内容も参考になったが、これまで交流のなかった国内外の研究者との個人的な情報交換も有益だった。期間全体を通じて、アジアが抱える環境問題の大きさを改めて感じた。私は、Using a remote technology: satelllite tracking the migration of birdsについて講演した。
 19日の午後には、藤前干潟や海上の森へのツアーも企画され、有意義な時間を過ごした。

2009年6月15(月)~17日(水) 山形へ

 ハチクマの捕獲と衛星用送信機装着のため、山形県南部の山林に出かけた。お天気にも恵まれ、調査はほぼ予定通りに進んだ。当地は川沿いの森林で、ノジコ、アカショウビン、ハチクマ、サンショウクイ、サンコウチョウ、アオサギなどを見聞きできる。夜は山道沿いを車でアニマルウォチング。ヨタカ、カモシカ、アカネズミ、ニホンヒキガエル、モリアオガエルなどを見て楽しんだ。
 ハチクマの衛星追跡は、きわめて順調に進んでいる。春と秋の渡り経路の違い、同一個体の年による違い、長期滞在する中継地の位置、経路沿いの環境利用、気象条件との関係、繁殖地での局地移動など、興味深いことが次々に明らかになってきている。
 今年のハチクマは、どんなことを教えてくれるだろうか。これからの追跡が楽しみだ。
  写真はヨタカ、6月15日撮影。



2009年6月7日(日) 国際箸学会で講演

 東京神田の学士会館で開かれた国際箸学会で、「鳥類のくちばしの形状と機能に学ぶ」について講演した。この学会の会員は、箸の形状と機能、文化と歴史などに興味をもっている。鳥のくちばしが箸に似たところもあるため、講演の依頼がくることになった。講演では、国内外の鳥を対象に、いろいろなくちばしの形状、くちばしの機能、くちばしと鳥類の進化などについて話した。
 異なる分野の人たちとの交流は、常に刺激に満ちている。今回も、普通は考えが及ばないことがらにまで思いを巡らせることができ、楽しく有意義な時間を過ごした。
 写真提供:山縣基与志

2009年5月31日~6月2日 三宅島

 三宅島はこの6月で噴火後9年になる。頂上からは火山ガスがいまだに出ており、植生などに影響を与えている。島の上部の森林は次々に倒壊し、土壌浸食が進んでいる。標高200mほどの森林は立ち枯れたままだが、奇妙なことにそこに代表的な森林性のイイジマムシクイがすみつき、さえずっている。枯れた材の中にカミキリ類が大量に発生し、ムシクイはそれを食べて生活しているようだ。
 都道付近の森林は、噴火前とあまり変わらない。島の南部にある太路池は、相変わらず緑におおわれ(右の写真)、鳥たちのさえずりで満ちあふれている。林縁にはクマイチゴが黄色い実をたくさんつけており、メジロ、ヒヨドリ、アカコッコだけでなく、コゲラやイソヒヨドリなどもひきつけている。
 晴天に恵まれ、快適な日々をすごした。





2009年5月26、27日 尾瀬へ

 25年ほどぶりに尾瀬に出かけた。ちょうどミズバショウの見頃の時期、晴天にも恵まれ、素晴らしい時を過ごした。環境や生きものの世界の変化を心配していたが、予想していたほどに大きな変化は生じてないように思われた。
 26日の夜には、山の鼻ビジターセンターで「温暖化が生物多様性に及ぼす影響」について講演し、同時に、ミズバショウの開花についての古い写真情報などの提供を呼びかけた。
 鳥はノビタキ、ホオアカ、アオジ、コマドリ、アカハラ、エゾムシクイ、メボソムシクイ、カッコウ、イワツバメ、オオジシギ、オシドリなど、30種ほどを見聞きした。
 滞在中、尾瀬保護財団に勤める研究室OBの橋本幸彦君のお世話になった。橋本君はツキノワグマの生態研究で博士号をとり、現在もクマ研究を続けている。

2009年5月20日 JICA東京国際センターで講義

 モンゴルやマレーシアの自然保護官などを対象に、Impacts of climate change on biodiversityという講義を行なった。対象者は日本国政府が招待した人たち。ラムサール条約関連の国際教育プログラムの一部。講義では、温暖化がもたらす生物季節や分布、個体数などの変化、生物間相互作用のずれ、生態系の跳躍的変化(レジームシフト)などについて話した。受講者からも自国の関連情報を聞くことができ、有意義な時間を過ごした。
 受講者は、数10日間にわたって北海道から沖縄までを旅しながら、各地で講義や実習を受け、自然環境の保全や管理のあり方について学んでいく。うらやましくもあるプログラムだ。
  写真提供:新庄久志



2009年5月20日 「竹内純子のECO対談」

 山と渓谷社の企画で、尾瀬の鳥と自然をテーマにした対談に参加した。本日発売の「尾瀬ブック」(山と渓谷社刊)に掲載されている。対談のお相手は、東京電力尾瀬保護活動担当の竹内純子さん。竹内さんの一連の対談企画「竹内純子のECO対談」の一つだ。対談そのものは1か月ほど前に行なった。
 尾瀬には、これまで3回ほど出かけている。初回は学生時代、奥日光からヒッチハイクの旅だった。よい運転手さんにめぐり会い、尾瀬を案内していただいたばかりか、宿泊代まで出してもらった。そんなことも思い出しながらの対談だったが、尾瀬の鳥や自然についてあらためて考えるよい機会になった。竹内さんともいろいろ話がはずんで、楽しい時間を過ごすことができた。
 対談内容は、以下のサイトでも見ることができる。
 http://www.tepco.co.jp/oze/tanosimu/ecology/h-higuchi/index-j.html
 「尾瀬ブック」の関連ページでも述べているが、対談を機会に、尾瀬の生きものへの温暖化の影響を調べることにした。これまでに収集されている生物季節情報を解析すると同時に、ミズバショウなどの古い写真からも 影響の程度を調べている。年月日のわかっている1950年代、60年代、70年代のミズバショウなどの写真をおもちの方は、ぜひご連絡いただきたい。
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2009年5月18日 コゲラの繁殖

 知り合いの先生から、東大構内でコゲラが繁殖しているとの連絡を受けた。見に行ってみると、巣穴から巣立ち間近のひなが顔を出していた。警戒する様子はなく、親鳥もためらわず給餌にきた(写真)。この時期、東大構内にコゲラがいることは知っていたが、巣を見たのは初めて。
 巣はメタセコイアの地上5mほどのところにあり、きれいにくりぬかれていた。コゲラは通常、枯れ木や生きた木の枯れた部分に巣穴を掘るので、生木に掘られたこの例は珍しいといえそうだ。巣穴から顔を出して親鳥のくるのをまつひなの姿が、とてもかわいらしく、印象的だった。
 
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 2009年5月1~3日 福岡へ

 サシバへの衛星用送信機装着のため、九州北部の里山へ出かけた。九州の里山を見るのも、そこでくらすサシバを見るのも初めてだった。地元研究者などの協力を得て、サシバ5個体に送信機をつけることができた。本州と違って、この地域でサシバは、必ずしも谷戸地形の中でくらしているわけではなく、山林の内部にまで入り込んでいた。
 九州北部で繁殖するサシバは、渡りの経路も本州のサシバとは違っている可能性がある。今後の追跡が楽しみだ。

 帰路、今津干潟にも足を伸ばした。クロツラヘラサギ、チュウシャクシギ、ダイシャクシギ、オオソリハシシギ、アオアシシギ、サルハマシギ、ヒドリガモ、ヨシガモなどを見て楽しんだ。
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2009年4月18,19日 北海道クッチャロ湖へ

 コハクチョウへの衛星用送信機装着のため、研究室のメンバーらとともに北海道北部のクッチャロ湖に出かけた。浜頓別クッチャロ湖水鳥観察館の小西 敢さんや里山自然史研究会の内田聖さんらの協力のもとで、コハクチョウ7羽に送信機を装着。クッチャロ湖は20年ほど前に初めて衛星追跡を実施した場所。今回、当時お世話になった地元の人たちとも再会でき、なつかしく、また楽しい時間をすごすことができた。
 この地のコハクチョウは、5月上旬ころに北上の旅につく。繁殖地までの追跡が楽しみだ。
 写真はクッチャロ湖でくつろぐコハクチョウ。中央に、送信機付き首環を装着された個体が見える。4月19日撮影。


2009年4月13日 カラスの繁殖

 今年は、私の研究室の真ん前のリュウキュウマツに、ハシブトガラスが巣をかけた。4卵を産卵し(左の写真)、現在、抱卵中。昨年、近くのヒマラヤスギに営巣したのと同じつがいと思われる(2008年5~6月の項、参照。)。昨年の巣と同様、青、白、赤の針金ハンガーを巣材として多数利用している。部屋の窓を開けると、威嚇しに飛んでくる。観察にはもってこいの条件なので、毎日楽しみながら、観察と撮影を続けている。抱卵開始は4月8日ころ。

2009年3月28日 千鳥ヶ淵でお花見

 前日、米国ボストン大学のリチャード・プリマック教授が来日。温暖化関連の調査と楽しみの両方を兼ねて、都心の千鳥ヶ淵とその周辺にお花見に出かけた。開花は例年よりも早かったものの、その後、寒い日が続いているため、満開になっているはずのこの時期に、まだ二分咲きといったところ。それでも、やはりこの場所でのソメイヨシノの花は見事だ。
 プリマック教授は約2週間の滞在予定。温暖化関連の情報収集と私たちとの今後の共同研究のあり方について議論する。関連研究は米国のNational Science Foundation (NSF)からの研究費を使って実施される。
 写真は千鳥ヶ淵にて。左から、樋口、Libby(ボストン大院生)、プリマック教授、Ahimsa(東大院生)。


2009年3月19~21日 生態学会大会に参加

 会期後半からだったが、岩手県立大学で開かれた日本生態学会大会に参加した。参加者数2000人ほどになる大きな大会で、活気に満ちていた。自然再生、温暖化、行動生態、進化関連の発表を中心に見聞きし、いくつか新しいアイデアを得ることができた。とくに印象に残ったのは、生態学会賞を受賞した加藤 真さん(京大教授、人間・環境学)の講演と、公開講演での吉村 仁さん(静岡大教授、創造科学技術)の講演(素数ゼミの謎)だった。お二人とも、静かな語り口で、気負わずに、しかし情熱をこめて自分の学問をきちんと話されていた。自然や生きものに対する深い関心と、学問に対する強い情熱が自然に伝わってくるとてもよいお話だった。
 県立大の構内からは、雪をかぶった岩手山の勇壮な姿をよく見ることができた(左の写真、3月21日撮影。)


2009年3月8日 早春の上海

 3月4日から、中国上海の揚子江河口にある九段沙湿地自然保護区で、カモ類の捕獲と衛星用送信機装着を試みている。しばらく悪天候続きだったが、きょうは久しぶりの好天。日曜日でもあるので、近郊の湿地に鳥見に出かけた。春を想わせる暖かな日差しの中で、ヒドリガモ、オナガガモ、ヨシガモ、マガモ、オオバン(右の写真)、カンムリカイツブリなどをゆっくりと観察した。この湿地は埋め立て跡にできたものだが、きわめて広大で、春秋の季節にはシギ・チドリなども多数訪れるとのこと。
 上海は、以前にもまして一大商工業都市に発展しつつある。そうした中で、沿岸部の開発をふくめて環境問題がきわめて深刻になっているようだ。


2009年2月21~23日 三宅島

 噴火後の生態系変化調査のため、三宅島を訪れた。火山ガスがまだ噴出しており、その影響で島の上半分ほどの森林は壊滅状態。木々が倒壊し、地面が露出している。一方、火山ガスに強いユノミネシダ、ハチジョウススキ、オオシマカンスゲなどが地表面を埋めつくしている場所もある。
 島の低部を周回する都道付近の森林は、噴火前とあまり変わっていない。写真のようにヤブツバキが咲き誇っているところもあり、豊かな森のたたずまいを見せている。森の中では、ウグイス、ミソサザイ、シジュウカラなどのさえずりがあちこちで聞かれ、時おり、カラスバトのウッウルル~という声も響きわたっていた。
 三宅島は、今でもすばらしいところだ。
      写真は2月22日、太路池付近で撮影。

2009年2月8日~12日 宮城県伊豆沼へ

 渡り経路解明にかかわる研究のため、伊豆沼でオナガガモ57羽、オオハクチョウ28羽に衛星用送信機を装着した。米国地質調査局アラスカ科学センター、宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団、我孫子市鳥の博物館などの研究者との共同研究。送信機は、オナガガモにはバックパック方式で装着、オオハクチョウには首輪に接続。捕獲、装着には、米国、タイ、イスラエル、バングラデシュ4か国の研究者をふくむ総勢30名ほどが参加した。今後の追跡が楽しみ。研究の成果は、対象種の保全や感染症の伝播経路解明などに役立てられる予定。

写真は送信機付き首輪を装着されたオオハクチョウ。2月13日、時田賢一撮影。






2009年2月2日~6日 ハワイへ

 日米および日ロ渡り鳥保護条約会議に出席のため、ハワイのホノルルに出張。会場はハワイ大学東西交流センター。会議では、渡り鳥をめぐる関係国の保全や調査・研究の現状、今後の共同研究のあり方などについて議論された。その中で私は、感染症の伝播との関連で、東アジアにおけるカモ類やハクチョウ類の渡りについて報告した。会議の内容もさることながら、会議の合間に、久しぶりに会ったロシアや米国の研究者といろいろな情報交換、意見交換をできたのが収穫だった。今後、新たな共同研究が実現できるかもしれない。

写真は日米会議後のひとこま。2月4日撮影。


2009年1月16日~18日 北海道東部へ

 17日午前、阿寒国際ツルセンターで、「温暖化が生きものの生活に与える影響」について講演、同日夜,弟子屈の川湯エコミュージアムで、「鳥の渡りと地球環境の保全」について講演。両イベントの合間に、阿寒でタンチョウの観察と撮影を楽しむ。18日の午前中は、翌日から屈斜路湖畔で実施されるオオハクチョウの捕獲と衛星用送信機装着に向けて、地元の研究者などと最終調整を行なった。

写真は雪原上に群れるタンチョウ。1月17日、阿寒にて。
 



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2009年1月12日 日比谷公園から皇居お堀へ

 昨日、神奈川県の久里浜に出かけた折、ウメの花が咲いているのを見た。気になったので、きょうは大学に向かう途中、日比谷公園に寄ってみた。やはり、日当たりのよい場所のウメは花を咲かせていた(写真左)。まだ1月なかばだというのに、何と早いことか。ウメの花には、久里浜でも日比谷でもメジロが蜜を吸いにきていた。
 きょうは休日だったので、日比谷公園から皇居方面に出て、お堀沿いをのんびり歩いた。おどろいたことに二重橋付近で、ユリカモメやキンクロハジロに混じって、東京では珍しいカワアイサが泳いでいた(写真右、中央の鳥、右側はキンクロハジロ)。人をあまり恐れることなく、しかも人が投げるパンくずにとびついて食べていた。キンクロハジロが餌付いているのはまったく珍しくないが、カワアイサの例は初めてだ。カワアイサをすぐそばで見ることができたのはうれしかったが、パンにとびつく姿には複雑な思いがした。
  


2009年1月1日 神奈川県真鶴岬へ

 新年にふさわしいすばらしい天気の中、妻と二人で真鶴岬へ出かける。東海道線の車窓からは、雪を頂く富士山がよく見え、海は波間が銀色に輝いていた。岬の海岸では、運よく2か所でクロサギに出合うことができた。どちらも黒色型。クロサギを見たのは、5年ぶりくらいか。写真は、波しぶきを受け、岩を伝いながら採食する個体。
 スダジイやクスノキの大木が茂る森の中では、アオジ、シロハラ、ルリビタキ、メジロなどを見る。この森は豊かな漁場を生み出す「魚つき林」として知られ、東大の実習や論文研究の対象にもなっている。昼食には海の幸を楽しみ、おみやげにもアジの干物などを購入。
 快適な、心休まるよい元旦だった。
 




2008年

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2008年12月30日 ツマグロヒョウモンを見る

 品川区中延の住まいの近くで、ツマグロヒョウモンの雌成虫を発見。道端で弱っており、飛ぶことができなかった。写真は捕獲して、たまたまそばにあったアロエにとまらせて撮影したもの。成虫は11月頃まで見られるとのことだが、12月末というのは遅すぎる例ではないか。
 ツマグロヒョウモンは、温暖化にともなって分布が北上している。本州では、1980年代までは近畿地方以西でしか見られなかったが、現在では北関東でも見られるとのこと。パンジーをふくめたスミレ科の植物を食草としており、最近では冬でもパンジーを見かけるので、そんなことも影響しているのかもしれない。このチョウを見かけた付近でも、パンジーが花をつけていた。
 この日は、たまたま温暖化についての論文を書いていたので、よい刺激となった。





2008年12月7~12日 韓国へ

 カモ類への衛星用送信機装着のため、韓国ソウル南西の西海岸に出かけた。マガモなど合計10羽に送信機を装着。今後の追跡が楽しみ。寒波がくれば、真冬に日本に南下してくる可能性もある。
 韓国の西海岸には、広大な干潟や葦原などが発達しており、シギ・チドリ類やカモ類、サギ類などの重要な生息地になっている。る。今回出かけた地域は、葦原が茂る沼沢地。マガモ、カルガモ、ミコアイサなどをはじめとした多数のカモ類のほか、小鳥ではダルマエナガやジョウビタキなどの姿が目についた。サンカノゴイもすんでいる。
    写真は水面に映る夕陽の中のカモ類。12月8日撮影。

2008年12月3、4日 帯広に出張

 3日、帯広畜産大学で、温暖化が生物多様性に与える影響について講演。野生生物に関心のある教員、学生が対象。講演後は、市内の郷土料理店で懇親会。野生動物管理学研究室の押田龍夫准教授など、多くの関係者といろいろな情報交換をした。押田先生は帯広にこられる前は、台湾の台中市にある東海大学(日本の同名の大学とは別組織)で教鞭をとっていた。同大学に共通の知人がいて話が盛り上がった。日本哺乳動物学会は、来年、台湾で年次大会を開催するとのこと。
 翌日は学生さんの案内で、市内の湖沼などに出かけ、ガンカモ、ハクチョウ類などを観察した。


2008年11月20、21日 宮城県伊豆沼へ

 ガンカモ、ハクチョウ類などの観察のため、伊豆沼とその近隣に出かけた。この地でも、鳥インフルエンザの影響を心配して給餌が自粛されており、給餌場につくカモ類やハクチョウ類の数は例年に比べて少なかった。しかし、伊豆沼の湖面には、相変わらず多数のガンカモ、ハクチョウ類やカイツブリ類などが群れており、多くの観察者をひきつけていた。寒くはあったが、ゆっくりと鳥たちを見ることができ、快適な時間をすごした。
     写真は「冬水たんぼ」に群れるハクチョウ類。11月21日撮影。

2008年11月19日 自転車のサドルを食い破るカラス

 今朝、出勤時に、東大の構内で放置自転車のサドルを食い破るハシブトガラスを観察した。写真にあるように、2羽のカラスがサドルのゴムやスポンジをむしりとるようにしながら食べていた。私は1、2mしか離れていないところにいたが、ほとんど無視されていた。
 カラスは、こうしたゴムやスポンジをかなり好んで食べる。これまでに、窓ガラスのふちに付いているパテや、自動車のワイパーのゴムがかじられた例が知られている。
 カラスは石鹸やロウソクも食べる。石鹸やロウソクは油脂分を好んでいるのだが、ゴムやスポンジの場合は、人間世界のガムのようなものとして口に入れているのだろうか。ともかく、どちらも「嗜好品」として食べているようだ。都市にすむカラスに見られる特異な食文化といえる。
2008年11月16日 動物臨床医学会年次大会で講演
 
 グランキューブ大阪(大阪国際会議場)で開かれた第29回年次大会の市民公開野生動物フォーラムで、「地球温暖化と生きものや私たちのくらし」について講演。温暖化に関連した植物や鳥類の生物季節、分布や個体数の変化、生物間相互作用のずれ、人間の食生活や健康への影響、生態系の跳躍的変化(レジームシフト)などについて、国内外の事例を紹介した。参加者との間で、影響の現われ方が地域によって異なる理由、獣医学関係者との今後の連携の重要性などについて議論した。

2008年11月10日~12日 北海道東部に出張

 オオハクチョウの生息状況調査のため、野付、屈斜路湖、厚岸湾などを訪問。屈斜路湖では、澄んだ湖面に群れるハクチョウの群れを、厚岸では雄大な自然の中でゆったりと泳ぐハクチョウの姿を観察。昨春、鳥インフルエンザでハクチョウが死亡した件を受けて、給餌を自粛している地域があり、そうしたところのいくつかでは、ハクチョウの姿がまったく見られなかった。アマモなどの食物が豊富にある地域では、例年と変わらない様子。天気に恵まれ、カモ類、カモメ類、タンチョウなどの観察も楽しんだ。
 写真は屈斜路湖畔で、11月11日撮影。
2008年10月18、19日 中国北京に出張

 研究打ち合わせのため、1泊2日の短期で北京に出かけた。北京訪問は6年ぶり。今年夏に開かれたオリンピックのためか、市全体がとても近代的でおしゃれなよそおいに変わっていた。天安門前広場へと続く通りの両側には、外資系の服飾店などが立ち並び、街路樹の間にバラ園が広がっていて、6年前とはまったく異なっていた。道行く人々の顔や動きも活気に満ちており、現在の中国の勢いを感じさせられた。


 東大でのセミナー後に開いた懇親会での集合写真。前列中央の女性がホンバーガー教授。左隣は中村司・山梨大名誉教授。ホンバガー教授の後ろが樋口、左へ上田恵介・立教大教授、藤田剛・東大助教。ほかは主に東大や立教大の院生や博士研究員。10月7日撮影。
2008年10月上旬 ドミニク・ホンバガー教授来日

 米国ルイジアナ州立大学のホンバガー教授が4日から10日まで日本を訪れ、日本の鳥類研究者と交流した。2014年に国際鳥類学会(IOC)を日本で開催可能かどうかを検討するのが目的だった。滞在中、立教大学で関係者とさまざまなことがらについて情報交換し、可能性を検討した。
 また東京大学と奈良女子大学では、鳥類の羽毛と飛翔の起源と進化について講演していただいた。形態、解剖、生態などについての情報にもとづき、鳥類は小型のトカゲ様のものから羽毛と飛翔を獲得し、進化してきたのではないか、という内容だった。IOC開催にかかわる議論にも熱がこもったが、このセミナーの方もたいへん興味深いものだった。
 関西では奈良以外に京都も訪問し、いくつかの社寺で日本の歴史や文化を楽しまれたようだった。

2008年9月12~15日 日本鳥学会大会に参加
 
 今年度の大会は東京の立教大学で開かれ、参加者約600名の盛会だった。鳥学会大会は近年、学生を中心に若い会員の参加が急増しており、活気に満ちている。私は学内外の共同研究者と一緒に、タカ類やカモ類の渡り衛星追跡、ガン類の越冬地の集団構造、ツバメのつがい外交尾、水田におけるチュウサギの環境利用、カワウのねぐら・コロニーの分布、コハクチョウの越冬数の増加と温暖化との関連、新方式の野生動物追跡システムなどについて発表した。大会は研究発表の場であると同時に、よい情報交換の場にもなっている。夜は渡りやカラス関連の関心グループの集会に出席し、互いの研究の進展状況や今後の共同研究のあり方などについて議論を重ねた。
 今回はロシア科学アカデミーのA・クリュコフさんが出席しておられ、極東地域におけるカラス類の遺伝的分化について発表しておられた。ハシボソガラスは地域によって分化が見られるのに対して、ハシブトガラスの方は亜種に分けられているものをふくめてほとんど分化していないとのこと。ハシブトガラスは比較的近年に分布が拡大してきたため、遺伝的な分化が進んでいないらしい。


 ポスター発表で最優秀賞(若手部門)と優秀賞(全体部門)をダブル受賞した北村亘君(博士課程3年)。発表題目は「つがい外交尾がツバメ雌にもたらす利益」。




2008年8月25~27日 北海道別海町へ

 海の生き物を守る会主催のワークショップ 「野付半島の自然を守るために」に出席。野付半島は現在、砂の供給不全により砂嘴地形が変化しつつあり、また将来的には、温暖化にともなう海面上昇により大規模な縮小の心配がある。ワークショップでは、陸域や海域の自然や生きもの、沿岸域管理のあり方、半島の自然の未来予測、温暖化とその対策などについての講演が行なわれ、全体討論では、今後の保全活動のあり方などについて議論された。私は「鳥の渡りと野付半島の自然」について講演、全体討論にも参加した(写真)。
 滞在中はあいにくの雨模様であったが、久しぶりに野付半島の自然や生きものの世界に触れることができ、またいろいろな研究者や保全関係者とも交流することができ、有意義な時間をすごした。


2008年8月11、12日 遼寧大学、万冬梅教授の送別会

 11日は学生中心に餃子づくりで、12日は教職員中心に上海料理で送別会。滞在中の思い出や今後の協力関係などについて話しながら、楽しく有意義な時間をすごした。これまでの3か月間、万先生は伊豆諸島の三宅島、新島、式根島にヤマガラの調査に出かけ、また国立科学博物館でDNAの分析技術などを学んだ。私も久しぶりに、ヤマガラ研究についていろいろ考えるよい機会を得た。短い期間ではあったが、お互いによい交流ができたと思われる。近い将来、中国、台湾、韓国、日本など近隣諸国の鳥類研究者で合同の年次大会やシンポジウムを開きたい、万先生も私もそう願っている。万先生は本日16日に帰国。
 写真は餃子パーティの折のもの。左から、、森さやか、万冬梅、染谷さやか、森口紗千子、山口典之、北村亘、樋口、松田亜希子、熊田那央。撮影:平岡恵美子。



2008年8月3日 NHKで番組収録

 NHKのテレビ番組「サイエンスZERO」で、「よみがえる三宅島の自然」という番組をつくることになり、本日、そのスタジオ収録があった。現地取材の結果や過去の映像などを入れ込みながら、全体をつくりあげていく作業だ。スタジオでは、ナビゲーターの安めぐみさん(女優)、山田賢治さん(NHKアナウンサー)、コメンテーターの黒崎政男さん(東京女子大教授)と4人で、映像や3D画像などを見ながら2000年噴火が島の生態系に与えた影響や、今日までの復活の様子などを追っていった。全体で2、 3時間ほどで済むのではないかと思っていたが、打ち合わせをふくめて7時間もかかった。しかし、番組内では私たち研究グループのこれまでの活動がきちんと紹介されることになったし、ナビゲーターやコメンテーターの人たちとの話も楽しいものだった。
 放映は次の日時:
   8月30/31日(土/日)深夜12時~12時44分 教育テレビ
   9月5日(金)午後7時~7時44分 教育テレビ (再放送)
→放送内容

2008年7月20日~30日 アラスカに出張。

 今後の研究交流促進についての打ち合わせと、ガン類やハクチョウ類の捕獲、送信機装着などを行なうため、アラスカに出かけた。最初の数日間を過ごしたアンカレッジでは、米国地質調査局アラスカ科学センターのセミナーでこれまでの衛星追跡研究の概要を話し、いろいろな研究者と交流を深めた。また、同センターの研究者と今後3年間ほどの共同研究の方向性について話し合い、研究対象にこれまでのカモ類以外にハクチョウ類やアビ類などもふくめる可能性を検討した。
 ガン類やハクチョウ類の捕獲、送信機装着は、アラスカ科学センターの研究者などとともに西部のユーコン・デルタで実施した。ミカドガン約120羽(下の写真左)、シジュウカラガン約150羽、アメリカコハクチョウ約100羽を捕獲し、送信機装着などを行なった(写真2)。ユーコン・デルタは超広大な湿地で、無数の湖沼や草原がパッチ状に延々と連なってりる。移動は水上艇とボートのみで可能。上空からは、湖沼や河川がつくり出すさまざまな幾何学模様と、光の加減でいろいろに変化する湿原の緑や水面の青の様子を見ることができる(写真3)。湿原内には、ガンカモ・ハクチョウ類、カモメ・アジサシ類、アビ類、シギ・チドリ類などの鳥や、ヘラジカ、トナカイなどの大型哺乳類が多数くらしている。
 調査や打ち合わせの合間に、南部のキーナイ・フィヨルドにも出かけた。ここでは、典型的なフィヨルド地形の中を船で走りながら、いろいろな海鳥や海獣を見ることができる。エトピリカ(写真4)、ツノメドリ、ウミガラス(下の写真右)、チシマウガラス、ハクトウワシなどの鳥や、ラッコ(写真5)、トド、シャチ、ザトウクジラなどの哺乳類を多数、しかもじっくりと見ることができた。フィヨルド内には氷河がいくつもあり、今回はそのうちの一つ、アイアリック氷河(Aialik Glacier)を訪れた。青白い巨大な氷塊もとても美しかったが、その一部が崩れる時の轟音がすさまじく、感動した。この地域の氷河の中には、温暖化の影響を受けて末端が後退しているものもある。
 ユーコン・デルタでは、朝方の気温が2度ほどしかなく、寒い夏だった。
        
わなの囲いに入ったミカドガンの成鳥や幼鳥。チーバックにて。  ウミガラスの繁殖集団。キーナイ・フィヨルドにて。 

2008年6月下旬 Journal of Disaster Research (JDR)で生物絶滅特集を発行

 JDR誌は災害問題を中心にさまざまな社会問題や自然現象を扱う雑誌で、3巻3号は生物絶滅特集。東大名誉教授の唐木英明先生と共同編集した。自然の中での個体群の減少、絶滅と人為による絶滅の両方をふくめ、以下の7論文を掲載(論文はすべて英文):絶滅の原因と生物多様性の保全(永田尚志)、小笠原諸島における外来種の侵入と在来生物の危機(川上和人)、漁業による混獲が海鳥に与える影響(小城春雄)、化学汚染が鳥類に与える影響(国末&田辺)、撹乱環境下に生育する植物の減少と保全(芦沢ほか)、中国におけるトキの保全と管理(蘇雲山)、三宅島の2000年噴火による植生の破壊と復活(上條ほか)。本誌は印刷とオンラインの両方で発行している。オンライン上での論文へのアクセスは無料

2008年6月24、25日 栃木県市貝町へ

 台湾よりサシバの共同研究者が来日し、栃木県芳賀郡の市貝町に一緒に出かけた。李さんと張さんの二人で(下の名前はそれぞれ日本語にないむずかしい字なので省略)、昨年に続いて2回目の来日。来日中の中国・遼寧大学の万冬梅先生、研究室の酒井すみれさんも同行。酒井さんはこの地で、サシバの環境選択と資源利用について研究している。今回、李さんたちは、サシバの採食や繁殖の様子をビデオにも収めた。酒井さんはサシバがモグラに飛びつく瞬間も目撃。サシバ以外に、ニホンアマガエルの幼体を食べるイオウイロハシリグモ(写真1)や、夜のゲンジボタルなどの観察も皆で楽しむ。写真は研究用に借りている家の前で撮影。左から李さん、万先生、私、酒井さん、張さん。

撮影:酒井すみれ
2008年6月21日。クサフグの産卵を観察。

 三浦半島南部の油壺で、産卵にくるクサフグを観察、撮影。クサフグは5月から7月にかけての新月や満月の2日後に、大群で岸辺にやってきて産卵する。19日が満月だったので、きょうは当たり日。写真のように、すばらしい光景を見ることができた。
 雌の産卵に合わせて雄が放精すると、水が白くにごる。夕方、どこからともなく現われ、約1時間ほど波打ち際でのたうちまわったのち、どこへともなく去っていく。生命の営みの不思議さを感じずにはいられない。
 観察終了後、近くの食堂で好物のトコブシ丼を食べ、やはり近くのホテルで、油壺の海が見える露天風呂を楽しむ。
→昨年の写真

2008年6月10~12日。ハチクマの捕獲と送信機装着。

 山形県米沢市近郊でハチクマ5羽を捕獲(雄2、雌3)。うち雄1羽は昨年捕獲した個体。残りの4羽に衛星用送信機を装着し、放鳥。写真は雌個体を放鳥直後のもの。同行者は時田賢一、内田聖、中山文仁、平岡恵美子、土方直哉の諸氏。
 付近は落葉広葉樹林や造林地、近くに渓流。観察した鳥:オオルリ、サンショウクイ、クロツグミ、アカショウビン、ヤマセミ、ノジコ、ホオジロ、アオサギ、カワウなど。温暖化研究に関連して、ホオノキの開花状況なども撮影。
                            撮影:時田賢一
                     

撮影:片山直樹
2008年6月6,7日。茨城県つくばと千葉県上総湊へ。

 つくばでは、水田におけるサギ類、とくにチュウサギの時間的、空間的分布様式を調べている天野、片山の二人を訪問。天野達也君は当研究室の出身者、現在、農業環境技術研究所の研究員(写真左)。片山君は当研究室の修士2年。調査の進捗状況を見るとともに、今後の研究の展開について相談。上総湊では、ツバメの個体関係や空間分布について調査している北村(D3)、松田(M2)、内山(M1)、山口(特任助教)の4人を訪問。調査の進捗状況を見るとともに今後の研究の展開について議論。調査地を巡りながら、お世話になっている家の人から牛乳や漬物などをいただく。
コメボソムシクイ、東大に出現。
 2008年6月2日、東大農学部7号館B棟付近でコメボソムシクイの囀りおよび姿を確認。コメボソムシクイはメボソムシクイの1亜種で、極東北部で繁殖。本州などで繁殖する亜種のチョリチョリチョリチョリとは違って、ジジロ、ジジロ、ジジロと少しゆっくりした声で囀る。本州や伊豆諸島を通過していくが、渡来時期は5月下旬や6月上旬などとかなり遅い。東大で記録されたのは、おそらくはじめて。

2008年6月上旬。カラスのヒナ、大きく成長。
 
 「針金ガラス」のヒナが大きく成長した。巣内には2羽のみ。成鳥と変わらない大きさになり、目つきも鋭い。写真は6月1日撮影。6月5,6日の両日に1羽ずつ巣立つ。
 東大本郷構内では合計20つがい近いハシブトガラスが営巣している。この時期、巣内あるいは巣外にヒナをもつ親鳥は非常に神経質で、巣やヒナののそばを通っただけで襲ってくることがある。多くは威嚇飛行か、後方から飛んできて足で人の頭を蹴る。通常、たいした怪我にはならない。帽子をかぶるか、傘をさせば怪我には至らない。
 巣立ちビナには触れるべからず。100%襲われる!

2008年5月22日 JICA東京国際センターで講演

 ブラジル、中国、ケニア、マレーシア、ネパール、フィリピン、ウガンダの研究者や保全関係者を対象に講演。演題は、Using remote technologies in wildlife conservation。この講演は、環境省が毎年いくつかの国の関係者を招待し、北海道から沖縄までの各地を巡りながら一連の自然観察やセミナーを実施する企画の一部。話のあとに、各国の参加者といろいろな意見交換ができるのが楽しみ。近い将来、これらの参加者と共同で、保全にかかわる研究や活動を実施できるかもしれない。写真提供:釧路国際ウェットランドセンター。


2008年5月15日 中国遼寧章から万冬梅教授来日
 
 万先生は遼寧大学生命科学院の教授兼副院長。ヤマガラの生態/種分化研究に取り組んでおり、今回の来日も日本のヤマガラの生態観察とDNAサンプルの収集が目的。8月中旬までの3か月間、私やほかのヤマガラ研究者と交流・情報交換する予定。写真は東京目黒の自然教育園で5月18日撮影。

2008年4月~5月。カラスの繁殖。

 私の研究室の近くのヒマラヤスギで、4月以来、ハシブトガラスが繁殖している。巣材には青や白の針金ハンガーが多数使われている。4月30日にヒナが孵化し、その後、順調に育っている。写真は、親鳥のお腹の下から顔を出すヒナ。4月6日撮影。

2008年3月~4月 サクラの開花情報の収集

 温暖化が生物多様性に与える影響調査の一環として、サクラの開花情報を収集、撮影した。東京の千鳥ヶ淵、上野公園、日比谷公園、横浜の三渓園、京都の嵐山や伏見、秋田の角館などを訪問。写真は東京の千鳥が淵のソメイヨシノ。3月26日撮影。


2008年3月16日~23日台湾に出張。

 サシバの衛星追跡やハチクマの生態研究の打ち合わせが目的。台湾でのサシバの渡りの盛期であったため、彰化、八掛山でいくつもの鷹柱をふくめて1000羽以上のサシバを観察した。写真は八掛山でタカ渡りを見る関係者一行。右端が国立台湾師範大学の王教授。左から2番目が、サシバの越冬生態研究により東大で博士号を取得したいんいんさん。

2008年2月24日~27日。伊豆諸島三宅島。

 2000年噴火後の自然や動植物の回復状況を調査。島の中腹より上の荒廃が目立つ。下方の都道付近は噴火前と変わらず。写真は、私の手から餌を取っていくヤマガラ。坪田集落で2月26日に撮影。手に乗ったときのフワッとした感触が心地よい。島内には数か所、ヤマガラが手に乗る場所がある。

還暦祝い

  今年2月26日に還暦を迎えた。ボストン滞在中に1回、2月と3月にそれぞれ1回、合計3回もお祝いしてもらった。写真は研究室の学生などが開いてくれたパーティの折のもの(3月7日)。

2008年2月1日~15日。米国東部へ講演旅行

 ボストン大のリチャード・プリマック教授やコネチカット大のジョン・サイランダー教授などによる招待。ハーバード大、ボストン大、タフツ大、ダートマス大、コネチカット大、マノメット自然保護センターなどで合計10回講演。演題はEcology and conservation of migratory birds in East Asia, Conflicts between crows and humans in urban areasなど。ボストンではプリマック教授の家に滞在し、温暖化関連の今後の共同研究についていろいろな角度から議論。ほかにも各地でたくさんの研究者と交流。ボストン近郊やニューロンドンなどでは、海辺や森林の鳥の観察も楽しむ。



 ーバード大学比較動物学博物館で講演

ボストン近郊でボストン大の教員や学生と探鳥旅行


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写真1

ニホンアマガエルの幼体を食べるイオウイロハシリグモ。栃木県市貝町。2008年6月25日。


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写真2

放鳥前のアメリカコハクチョウと記念撮影。ベーテル近郊。2008年7月24日。


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写真3

ユーコン・デルタに広がる美しい湿原。チーバック近郊。2008年7月27日。


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写真4

エトピリカ。キーナイ・フィヨルドにて。2008年7月23日。


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写真5

ラッコ。キーナイ・フィヨルドにて。2008年7月23日。


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写真6

クサフグの産卵。神奈川県油壺。 2007年6月16日。


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写真7

ユノミネシダ。三宅島。2009年2月22日。


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写真8




ミズバショウ。尾瀬。2009年5月27日。


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写真9


ニホンヒキガエル。2009年6月16日撮影。

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写真10


クロヅルの群れ。2009年12月13日。

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写真11


ハイラックス。2009年12月13日。

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写真12

アイベックス。2009年12月13日。

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写真13

韓国・済州島のハルラ山付近に咲くツツジ群落

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