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折々の記録
 
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2019年

2019年12月16日(月)~19日(木) 三宅島

 2000年噴火からの生態系回復状況調査のため、三宅島を訪れた。主に太路池周辺の森林や山腹の林道沿いの草原や林を対象に、鳥や植生の生息・生育状況を調べた。
 あいにく、期間中ずっと雨がちだったが、晴れ間をぬって観察や撮影を行なうことができた。太路池のまわりでは、メジロ、ヤマガラ(写真)、コマドリ、ヒヨドリ、ウグイス、ハシブトガラス、カラスバト、ノスリ、オオタカ、マガモ、カイツブリ、ミミカイツブリ、オオバン、カワウなどが観察できた。
 コマドリは、おそらく越冬個体、時折さえずっていた。ハシブトガラスは湖のまわりの何か所かに5~8羽ほどが集まり、外来のヒキガエルを食べているようだった。マガモは10羽ほど、オオバンは40羽ほどいた。
 同行した共同研究者と鳥類研究のいろいろな話題について議論でき、有意義な時を過ごすことができた。


2019年12月13日(金) ヒドリガモの渡り衛星追跡論文

 西日本で越冬するヒドリガモを衛星追跡した論文が、Zoological Science誌に掲載された。2007年から2016年にかけて合計64羽に送信機を装着、春と秋の渡りを追跡した。朝鮮半島経由、サハリン経由、カムチャツカ方面経由で北上し、ロシアの東北部で繁殖することが明らかになったが、おもしろいことに日本国内をふくめて繁殖分布域外で夏を越す個体がそれなりに多くいることもわかった。
 書誌情報は以下。

Doko, T., Chen, W., Hijikata, N., Yamaguchi, N., Hiraoka, E., Fujita, M., Uchida K., Shimada, T. and Higuchi, H. 2019. Migration patterns and characteristics of Eurasian Wigeons (Mareca penelope) wintering in southwestern Japan based on satellite tracking. Zoological Science 36:490-503.

 野外での捕獲や送信機装着から論文公表までずいぶん年数がかかったが、共同研究者とすばらしい時間を共有することができ、とてもうれしく思っている。

2019年12月12日(木) 都庁で講演

 東京都の鳥獣保護管理員や関連職員の方々を対象に、都庁で講演した。演題は「鳥の渡りと環境保全」。タカ類やハクチョウ類の渡りに焦点をあて、渡りの経路、経時移動様式、気象条件との関係、環境利用、保全上の問題点などについて話した。日頃、野生鳥獣の保全や傷病鳥獣の管理などにかかわっておられる方々だけあって、とても熱心に聞いてくださり、いろいろな質問がとびかった。会場は、第2本庁舎31階の特別会議室。
 都庁のある新宿を訪れたのは久しぶり。訪れるたびに、新しい高層ビルが立ち並び、街の様子を一変させている。ここでどれだけの人たちがはたらいているのだろうか、朝夕のラッシュ時の混雑はどんなものだろうか、などと思いながら帰路についた。

2019年11月28日(木) 名古屋城の襖絵問題を「UP」誌に寄稿

 これまで何度か書いてきた名古屋城本丸御殿「雪中梅竹鳥図」の「キジ」をめぐる謎について、東京大学出版会のUP誌12月号に寄稿した。キジかヤマドリかの問題から、より根本的な問題にまで拡げて論考した。書誌情報は以下。

 樋口広芳.2019.名古屋城本丸御殿の襖絵「雪中梅竹鳥図」の謎.UP48(12):7-15.

 概要は次の通り。キジかヤマドリかについて結論は出しにくい、いずれにせよ、復元画のキジ絵は体と尾の位置や向きがおかしい、原画についても理解困難な点がある、はぎとられた部分はどこかに保存されているはず、それをなんとか探し出し、原画がどうであったのかを知ることが重要。今回の論考が引き金になり、問題がよい方向に進んでいくことを願いたい。


2019年11月20日(水) 奥多摩

 快晴のもと、知人の案内で奥多摩方面に出かけた。秋川渓谷周辺で紅葉をながめ、「瀬音の湯」につかって疲れをいやした。
 この時期、紅葉は盛期を過ぎていたが、ところどころ、まだすばらしい景色が広がっていた(写真)。真紅一色に彩られた木々、黄から真紅に至るグラデーションを見せる木々、日本の紅葉はほんとうに美しい。
 「瀬音の湯」は、アルカリ度が高く、美肌の湯として知られる。露天風呂では、渓谷沿いの紅葉をながめながら、ゆったり気分が味わえる。
 鳥たちにはあまり出合えなかったが、秋の一日、すばらしい時を過ごすことができた。

2019年11月7日(木) 冬鳥の渡来

 横浜の仕事場付近の緑地に、今年もジョウビタキがやってきた(写真)。おそらく、昨年と同じ個体の雌だ。同じ林の同じところにすみつき、ヒッヒッ、ヒッヒッと鳴きながら、林床などで小さなものをとって食べている。来年の春までのお付き合いが始まった。
 近くの池には、これまた例年どおり、オナガガモやキンクロハジロがやってきた。合わせて30羽ほど、多くは、ほぼ換羽が終わってきれいな羽色になっている。餌を求めて人の近くに寄ってくる。この鳥たちとも、また春までのお付き合い。
 この時期、夏鳥のキビタキなどがまだ通過していくことがある。この鳥たちとは短い出合いのみ。春には再び立ち寄ってくれるだろうか。


2019年10月27日(日) 宇都宮大学探鳥会OB会

 宇都宮大学の学生サークル、「探鳥会」。私が入会した当時は、日本野鳥の会の宇都宮大学支部でもあった。同大学の教授であった清棲幸保先生が顧問をしておられた。清棲先生は『日本鳥類大図鑑I~III』(講談社、1965)などの著者として知られる。私は、清棲先生とこの探鳥会にあこがれて宇都宮大学に入学した。50年以上前のことだ。本日、その探鳥会のOB会が開かれ、参加した。
 実は、探鳥会のOB会は毎年秋に同大の大学祭に合わせで行なわれているのだが、今回は私のために特別に開いてくださるという、たいへんうれしい集まりだった。場所は東京・上野の某所。私の話を聞く会のような集まりで、スライドを使って鳥の渡りの最新研究を紹介した。
 私の話が終わったあとは懇親会。私はこれまで、恒例のOB会には一度も参加したことがなかった。したがって、50年以上ぶりにお会いする先輩、同期のなかま、最近の学生さんなどと、とてもなつかしく、楽しいひと時を過ごすことができた。
 参加者は、地元や近県の企業につとめられた方、国家公務員や地方公務員になられた方、千葉県の副知事になられた方、宇都宮大に残って教授になられた方、日本野鳥の会の理事長になられた方などいろいろ。学生時代の面影が残っている人、変わりすぎて名前が思い出せない人などいて、とまどいながらもさまざまな思い出話に花が咲いた。
 こうしてみなと話していると、50年ほどまえのことが、そう遠くないことのように思い出される。よい学生時代をすごせたからだろうと思っている。


2019年10月24日(木) 京都二条城

 名古屋城本丸御殿の襖絵をめぐる問題の関連で、二条城を訪れた(写真)。日帰りのあわただしい訪問だったが、知人の案内のおかげで、難なく見てまわることができた。
 公開されている二の丸御殿の襖絵には、トラやヒョウなどの哺乳類のほか、スズメ、ホオジロ、コサギ、キジ、ヤマドリ、オオタカ、イヌワシ、マクジャク、タンチョウ、マナヅル、ナベヅルなど、さまざまな鳥が見事に描かれていた。ただし、公開されているのは復元画。
 二の丸御殿の中は、予想していた以上に広かった。部屋数は33、合計約800畳あるとのこと。名古屋城本丸御殿どうよう、ここの襖絵も狩野派によるもの。豪華絢爛の趣がある。
 あいにく雨模様だったが、ちょっと足を延ばして京都府立植物園にも立ち寄った。ノギクやホトトギスなどの花が見頃だった。

2019年10月19日(土) 神奈川県立生命の星・地球博物館で講演

 「生き物のふしぎ」と題した講演会が開かれ、「鳥たちの旅ーおどろきの旅路を探るー」について講演した。会場は、神奈川県の西部、小田原市にある上記博物館のミュージアムシアター。
 講演では、衛星追跡やジオロケータ追跡によって明らかになった渡りの経路や、渡りと気象との関係、渡り鳥がつなぐ人と人、などに焦点をあてて話した。私以外に次の2つの講演があり、盛会だった。
 「ジャングルの動物と塩の話」 松林尚志(東京農業大学農学部教授)
 「すぐそこにある、生きものの不思議」 秋山幸也(相模原市立博物館学芸員)
 この博物館を訪れたのは初めて。箱根に向かう途中の入生田にあり、豊かな自然にかこまれている。

2019年10月9日(水)~13日(日) インドネシア・バリ島

 Asian Raptor Research & Conservation Networkの国際シンポジウムがバリ島のウダヤナ大学(Udayana University)であり、Keynote speakerとして講演した(上の写真)。演題は、Migration of raptors in East Asia。衛星追跡したサシバやハチクマなどの渡りの経路、環境利用、気象との関係などに焦点をあてて話した。研究者、保全関係者、行政官、学生など200名ほどの参加があり、盛会だった。各国の研究者などとの情報/意見交換のよい機会でもあった。
 最終日の13日には、島の北東部の山岳地帯にタカの渡りを見に出かけた(下の写真)。島の最高峰アグン山(Mt. Agung、3014m)を眼前に望むすばらしい景色の中で、ハチクマやアカハラダカなどがタカ柱をなして渡る様子をじっくりと見ることができた。この地は、私たちが衛星追跡したハチクマの一部が、さらに東方の最終越冬地、小スンダ列島に向けて通過した場所。渡りゆく鳥たちを見て感慨深いものがあった。
 バリ島ではとても有意義な日々を過ごすことができたが、日本への帰路は困難を極めた。本州の中~北部を襲った超大型台風19号の影響で、まず、デンパサールからの空の便が大幅に遅れた。キャンセルや出発の遅れを繰り返したのち、予定より12時間遅れで成田に到着。夜間に成田に着いたのちも、ホテルはどこも満室、タクシーはすべて出払い、成田エクスプレスや京成スカイライナーも終了。いろいろ乗り継ぎ、最後はタクシーで本日の午前2時ころに横浜のすまいに到着。
 しかし、国内では東海から関東、東北にかけて、大雨や強風で甚大な被害に見舞われていた。惨状を目の当たりにすると、安全に到着できただけでもよかったと思っている。


 ほかの演者などとともに。撮影:Syartinilia。


 アグン山を背景に記念撮影。
2019年10月8日(火) 名古屋城「キジ」襖絵の謎、その3

 10月1日にもふれたことだが、名古屋城の歴史を知るにあたって欠かせない奥村得義『金城温古録』 (1860)は、問題の鳥の胴体が欠損していなかったであろう当時の「雪中梅竹鳥図」について、「・・・雪の梅に雉子・・・」と記している。復元関係者らは、この記述をもって、問題の絵の鳥をキジとする重要な根拠の一つとしているようだ。しかし、当時はキジとヤマドリを区別せず、「雉子」と呼んでいた傾向がある。例としては、次の絵と記述が参考になる。
上洛殿松之間「松雉子流水図」  ヤマドリが描かれている。
表書院一之間「桜花雉子図」 ヤマドリの雌雄とひな、およびキジが描かれている。
京都・二條城二之丸御殿黒書院二之間「雉子図」  ヤマドリが描かれている。
 キジとする根拠は薄弱なのだ。

 さて、そもそも原画の一部、胴体部分は、いつ、だれが、何の意図をもってはぎ取ったのか。これが大きな謎だ。
 襖絵などがはぎ取られた時期は定かではないが、一説によれば、明治政府・陸軍省所管となった以後ではないかとも言われている。はぎ取られた理由は、不明。金に困った人が、一部をはぎ取って売り払ったとの話もある。しかし、金にするなら、一部だけはぎ取るという行為は理解しがたい。鳥の姿全体があってはじめて価値をなすだろうからだ。古美術商のような買い手にすれば、いくら狩野探幽による絵とは言え、上体だけでは売り物にならない。個人の収集家にしても、鳥の全体があってはじめて絵になることは十分承知しているはずだ。

 金目的でないとしたら、何なのか?少し想像をたくましくしてみる。
 実はこの鳥の絵は、原画にしても、どこかおかしい。少しくわしく話す。はぎ取られたあと原画に残されたのは、長く伸びる尾だけではなく、翼の先端がある。気をつけてみないとわからないくらいわずかな部分だ。復元にあたっては、尾とこの翼先端の状況から現在の「キジ」の姿を描いたという。翼の先端は、たしかに復元画の位置にある。しかし、この翼と尾の位置から鳥の絵を描こうとすると、尾がおもて面であっても裏面であっても、またキジでもヤマドリでも、体各部の位置関係、バランスをどうとればよいのかが、きわめてむずかしいのだ。復元画は明らかにその難点を超えることができていないために、おかしな絵になってしまっているのだが、復元画の状態でないにしても、どう描くべきなのかがむずかしいのである。
 ひょっとすると、原画にも不自然なところがあったのかもしれない。それに気づいた目利きが
・・・・・、ということであったのではないか。名古屋城の本丸御殿の襖絵には、ほかにもはぎ取られた部分が少数あるとのこと。それらがもともと、どんなものであったのかを知ることが、参考になるかもしれない。

 しかし、狩野探幽をはじめとした狩野派の絵師の描く鳥の絵は、多少、色や模様、形や姿勢などが現実の鳥と違っていても、すばらしいものだ。見ていて不自然と感じられるものは、まずない。どれにも「いのち」が吹き込まれている、と言える。この「雪中梅竹鳥図」などだけがおかしい、とは考えにくい。探幽は、常人には考えられない独特の技法で「雪中梅竹鳥図」を描いたのだろうか。
 結局のところ、はぎ取られた理由は、不明のまま。
 なんとか、はぎ取られた部分が出てきて、鳥全体がどのように描かれていたのかが明らかになることを願いたい。

2019年10月7日(月) 名古屋城「キジ」襖絵の問題点、その2

 10月1日に書いた内容を補足する。そもそもこの「キジ」の復元画は、鳥の絵としてきわめて不自然だ。残された尾の位置と再現されたキジの上体とのバランスが合っていない。再現された上体は太い枝の上に乗っており、この状態からすると、上体の末端に位置する尾は、太枝の反対側に出ることなく、太枝の中を突き抜けるようなことになる。もちろん、突き抜けることなどありえない。
 関連して、残された尾の位置と復元された上体腹面の位置からすると、尾の末端は上体の尻部ではなく、下腹部の、しかも正中線上ではない、奥側の側面に張り付いていることになる。何とも奇妙な鳥の絵なのだ。新聞紙上では、キジかヤマドリかというところに焦点があたっているが、まずむしろ、この体のバランスがおかしいという問題を認識する必要がある。仮に上体をヤマドリに変えたとしても、この姿勢や位置のままではおかしいことにかわりはない。
 名古屋市側は、キジとする判断を変える必要はない、イコール、現状のままでかまわない、ということのようだが、このままでは国の重要文化財が台無しになってしまうおそれがある。



原画。『名古屋離宮障壁画大観』より


復元画。樋口広芳撮影
2019年10月1日(火) 名古屋城襖絵関連の新聞報道

 9月に日本鳥学会大会で発表した名古屋城本丸御殿の襖絵関連のことがらが、本日の朝日新聞に掲載された。問題の絵は、江戸初期に狩野探幽によって描かれた「雪中梅竹鳥図」の復元画。尾だけが残された原画(上の写真)にもとづいてキジの上体が描かれているのだが(下の写真)、私の見る限り、当の鳥をキジとするのはあまりに不自然、ヤマドリと考える方が自然。復元された絵は、ヤマドリの尾をつけたキジ、となってしまっている可能性がある。
 新聞記事は、私のこの判断を紹介する形で書かれている。朝日新聞のデジタル版にも同様の記事が掲載されている。

https://www.asahi.com/articles/ASM9Z61QLM9COIPE01W.html

 少し捕捉しつつきちんと述べると、以下のようになる。
 原画の上体部分は何者かによってはぎ取られてしまったのだが、残された尾の絵には、横帯がいくつも明瞭についている。尾は枝の奥側にあるので、腹側(内側)を向けていると判断される。しかし、キジの尾の腹側(内側)には横帯模様はなく、ほぼ黒一色。
 尾はねじられた形でおもて面(外側)を向けている、とも考えられるが、体が枝の反対側にあって鳥が正面方向を向いている限り、尾がこのような向きになることはまずない。鳥の姿や形に精通した狩野派の絵師が、そのような不自然な絵を描くとは考えられない。一方、ヤマドリの尾の腹側(内側)には明瞭な横帯模様がついている。残された尾をヤマドリのものと考えれば、完全ではないにしても、不自然さは消滅するのだ。
 絵の復元にかかわった人たちは、残された尾の模様がキジのもの、切り取られる以前に著わされた文書の関連個所に「・・雉子・・」とあることを理由に、当の鳥はキジであると主張している。たしかに、尾の紋様などはキジのものを想わせる。しかし、横帯の間隔が広いことなどは、ヤマドリの尾の特徴を見せている。
 古い文書に「・・雉子・・」とある点については、当時はキジとヤマドリを区別せずに「雉子(キジ)」としていた例が少なくない。ゆえに、当の鳥をキジと判断する理由にはならない。
 結局のところ、現在の復元画では、キジの上体にヤマドリの尾羽が付いている、何とも奇妙な絵になってしまっている可能性がある。また、当の鳥がキジでよいとしても、この絵のままでは、体は正面、尾は背面を向けているおかしな絵になってしまっているのだ。
 「雪中梅竹鳥図」は、国の重要文化財に指定されている。この奇妙な復元画をこのままにしておくのは好ましくない。早急に検討して、修正されることが望まれる。修正にあたっては、やはり、はぎ取られた原画の一部を探し出すことが重要。今回の報道が引き金になって、どこかに「お宝」として保存されている欠失部分が出てくることを期待したい。


2019年9月29日(日) ハチクマ番組再放送の案内

 NHKで放送されたハチクマ関連番組が再放送されることになった。ハチを襲ってハチの子を食べる鳥、ハチクマ。ハチの巣をどうやって襲うの?ハチに刺されないの?ハチに刺されても大丈夫なの?と、いろいろな疑問が湧きあがる。そんな疑問に応えるべくつくられた2つの番組、その再放送だ。
 「ワイルドライフ」、「ダーウィンが来た!」で2015年に放送され、好評のためアンコール放送となったとのこと。放送時間などは、以下の通り。見逃していた方、もう一度しっかり見たい方は、ぜひどうぞ。
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■「ワイルドライフ~アジア縦断 謎のタカ最強のハチに挑む!~」
 10月14日(月曜) 20:00~20:59(1時間) 
 NHK・BSプレミアム

■「ダーウィンが来た!生き物新伝説 ~衝撃!ハチクマ軍団VSスズメバチ軍団~」
 10月20日(日曜) 9:29~ (30分)
 NHK・BSプレミアム

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2019年9月28日(土) 『地球の生きものたち〔決定版〕』の出版

 1979年、デイヴィッド アッテンボローによる書籍『地球の生きものたち(Life on Earth)』とBBCによる同名のテレビシリーズは、英国だけでなく、日本をふくむ世界中で広く読まれ、観賞された。すばらしい画像の数々と生物の進化史を描く内容は、感動そのものだった。今回、発刊40周年の記念版が登場、数日前に日本語版も出た。私は共訳者の一人。
 書誌情報は以下。
 デイヴィッド・アッテンボロー.2019.『地球の生きものたち[決定版]』.早川書房,東京.(日高敏隆,今泉吉晴,羽田節子,樋口広芳共訳).原書:Attenborough, D. 2018. Life on Earth. William Collins & Sons, London.
 初期版と比べると、大型本になり、写真の多くが新しいものになっている。内容も、新情報が加わり、より充実している。見ごたえ、読み応えのある良書だ。



2019年9月25日(水)~27日(金) 山口から福岡

 25、26の両日、国の環境関連の委員会が山口県の宇部市であり、出席した。宇部はこれまで訪れたことがなかったため、街や自然の様子をいろいろ見て楽しむことができた。少しの時間を利用して草原や湖沼の鳥を見てまわり、ハクセキレイ、ヒヨドリ、ハシボソガラス、ヒドリガモ、オナガガモ、コサギ、アオサギ、トビなどを観察した。
 翌27日には、福岡市の油山や鴻巣山を訪れ、ハチクマなどの渡りを観察した。幸いにも天気予報がはずれて晴天に恵まれ、午前中の2時間ほどで300羽ほどのハチクマを観察。数10羽が上昇気流に乗って舞い上がり、滑空して移動して行く様子を、何度もじっくりと見ることができた(写真)。
 油山には、地元の野鳥の会の方や一般市民などが多数訪れていた。展望台には、私が中心になって行なったハチクマの衛星追跡による経路図が大きく掲示されていた。

2019年9月13日(金)~16日(月) 日本鳥学会大会

 年に一度の鳥学会大会が、帝京科学大学北千住キャンパスで開かれた。東京での開催とあって、参加者が800名以上にふくらんだ。口頭発表、ポスターの発表合わせて200以上の研究発表があり、活気に満ちていた。最終日のきょうは、公開シンポジウム「ペンギンを通して学ぶ生物の環境適応と生物多様性保全」が行なわれた。会場は北千住の東京芸術センター21階の天空劇場。こちらも盛況だった。
 私は、「名古屋城・本丸御殿の襖絵に描かれた鳥の問題点」と題する口頭発表のほか、チゴモズの渡り追跡、カンムリウミスズメの季節移動と海流との関係、伊豆諸島のヤマガラとシジュウカラの生息状況解析、都心で繁殖するウミネコの局地移動についての共同発表を行なった。
 最近の傾向として、若手~中堅の研究者の活躍がめざましい。大学院生や博士研究員、機関研究者になってまもない人たちのことだが、新しい技術や方法、考えのもとに展開される研究は、とても刺激的だ。
 来年は、北海道網走にある東京農業大学オホーツク校での開催とのこと。今から楽しみにしている。

2019年9月9日(月) 台風15号、南関東上陸

 本日未明、台風15号が三浦半島を通過後、千葉県に上陸した。強風と豪雨のため、目がさめてしまった。最大瞬間風速は、千葉市で57m/秒、他地域でも40m台、50m台が多かった。これらの記録はそれぞれの地域で過去最高とのこと。街路樹がなぎ倒され、大型車が横転した地域もある。
 最近、台風や異常気象などの規模や頻度が増加している。異常気象は世界各地で生じている。地球温暖化の影響と思われる。温暖化対策は国内外、政府・民間両レベルで試みられているが、思うようには進んでいない。この先、温暖化はどこまで進み、被害はどのように及んでいくのか。
 台風が過ぎ去ったあとの日中、南関東では気温が35℃前後まで上昇した。湿度も高く、きわめて過ごしづらい。



 メジロ
2019年9月3日(火) 三宅島

 昨日から三宅島にきている。目的は、2000年噴火後の生態系回復状況の調査。きょうは、島南部の村道雄山線沿いに植生の回復状況を見てまわった。2年ほど前に火山ガスの噴出が少なくなって以来、植生は急速に回復してきている。緑は山頂まで拡がり、山腹の環状道路付近にはすでにオオバヤシャブシの幼樹が多数進出してきている。
 太路池周辺は噴火前と大差ないが、今期、鳥の生息状況が思わしくない。とくにヤマガラの数が急減している。この時期、メジロの小群があちこちで見られるはずなのだが、それもあまり目につかない。ほかに観察したのは、ヒヨドリ、イイジマムシクイ(少数、さえずり)、キジバト、カラスバト、ハシブトガラスなど。
 今回、島の4か所ほどでイタチを目撃した。はっきりとは言えないが、人に対する警戒心が薄くなってきているような気がする。

2018年8月28日(水) 円山応挙と恐竜

 東京の上野で開かれている2つの特別展を見に行った。一つは、東京芸大・美術館の「円山応挙から近代京都画壇へ」、もう一つは、国立科学博物館の「恐竜博2019」。
 「円山応挙から近代京都画壇へ」展では、鳥が描かれている絵を中心にじっくりと鑑賞した。とくに印象に残ったのは、応挙の「松に孔雀図」と、国井応文・望月玉泉の「花卉鳥獣図鑑」。「松に孔雀図」は、ゆったりとした光景の中にマクジャクのすばらしい姿が描かれている。「花卉鳥獣図鑑」の方は、シジュウカラやウソ、カワラヒワ、メジロなどなど、さまざまな鳥が描かれた、まさに図鑑絵巻。
 「恐竜博2019」は、恐竜から鳥類への進化の筋道がわかるような展示が印象的だった。もちろん、巨大なテラノサウルスや北海道で発掘された「むかわ竜」も目に焼きついた。文字や音声の解説も充実していた。


前肢と後肢の両方に「翼」をもつ羽毛恐竜ミクロラプトルの化石




2019年8月25日(日) 釧路2

 友人や知人の案内で、釧路沿岸の鳥を見てまわった。
 少し内陸に入った河川では、トウネン、タカブシギ、アオアシシギ、イソシギ、キアシシギ、コキアシシギ(?)、シロチドリ、カワセミ、ハイタカなどを観察。砂浜では、ミヤコドリ、ウミネコ、オオセグロカモメ、ハシボソガラスなど。
 磯場付近では、アオバト30羽ほどを見た。時おり、ハヤブサやチゴハヤブサに追われていた。岩礁が海面下にあったので、少し離れた丘の樹木上で休んでいることが多かった(上の写真)。岩礁が現れると、海水を飲みに降りるとのこと。
 湿原/草原では、タンチョウを見た。まだ頭が茶色い幼鳥連れのつがいもいた。冬の雪原で見るタンチョウはたいへん優雅で美しいが、緑の景色の中で見るタンチョウもとてもあでやか(下の写真)。
 海岸付近の草原では、ハマナスが赤紫色の花と真紅の実を同時につけていた。

2019年8月24日(土) 釧路で講演

 釧路市立博物館の招待で、「カラスと人間生活―さまざまなかかわりを探る」について講演した。場所は同博物館の講堂。釧路でカラスの話をしても。。。と思っていたが、会場は満杯、臨時の椅子が設置されるほどの盛況だった。講演後もいろいろな質問が出て、とてももりあがっていた。
 釧路は、北海道の中でも涼しい気候の土地。日中でも25℃程度だろうか、さわやかで快適。講演開始前の午前中、近隣の自然公園を散策。ノビタキ、コヨシキリ、オオジュリン、アオサギなどを観察した。
 夜は懇親会。関係者らと海の幸を楽しみながら、北海道の鳥や自然をめぐるもろもろのことについて意見交換した。


2019年8月23日(金) 横浜で講演

 作曲家の高木東六さんを偲ぶ第13回東六忌で、「大自然のハーモニー、鳥たちが奏でる自然の音楽」について講演した。会場は、山下公園やマリンタワーに隣接するメルバルク横浜。主催は、赤い靴記念文化事業団。
 講演では、日本のオオルリ、サンコウチヨウ、アカショウビン、ヨーロッパのナイチンゲールやクロウタドリ、北米のモリツグミやハシグロアビ、オーストラリアのコトドリなどのさえずりを紹介しつつ、鳥のさえずりの意味、美しさの秘密、発声法などについて話した。参加者は音楽関係の方たちで、鳥や自然にはあまりなじみがないせいか、鳥たちのさえずりの美しさやすばらしさにとてもおどろかれているようだった。
 私の講演の前後には、高木東六さんゆかりの曲のコーラスやピアノ演奏があり、華やかでぜいたくな時をすごすことができた。

2019年8月17日(土) 嶋田 忠さんと対談

 鳥を中心に撮影されている自然写真家の嶋田 忠さんと対談した。テーマは「鳥に学ぶ」ではあったが、鳥のくらしや撮影をめぐるいろいろな話をした。場所は東京都写真美術館。嶋田さんの写真展「野生の瞬間―華麗なる鳥の世界」の一環として行なわれた。対談への参加定員は100名とあったが、おそらく2倍以上の方がこられていた。
 嶋田さんとは20代のころからのお付き合い。めざした方向は違うが、ともに子供のころから鳥の世界に関心をもち、その世界の探求に多くの時間を費やしてきた。
 終了後、平凡社の動物雑誌「アニマ」の関係者と歓談した。アニマは1973年から93年にかけて出版され、野生の生きものに関心をもつ多くの人に愛読された。嶋田さんも私も、そのアニマ世代として成長してきた。なつかしい話、隠されていた話などをいろいろしながら、楽しい時間をすごした。

2018年8月12日(月) ガマの穂

 暑い日が続いている。強い日差しに肌が焼けつくような気がする。
 湘南地方では、林縁や斜面の草原などにタカサゴユリが多数咲いている。場所によっては密生している。花は楚々として美しいが、台湾原産の外来種。種子を大量に風散布して増える。湘南地方では、10年ほど前からものすごい勢いで拡がっている。
 池沼では、ガマが円筒形の褐色の穂をたくさん付けている(写真)。この穂を見るたびに、子供の頃に読んだ「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」の物語を思い出す。『古事記』の中に出てくる話で、毛をむしり取られた兎に、大国主(おおくにぬしのかみ)が蒲黄(ガマの花粉)を取って敷き散らし、その上に転がるよう教える、という内容。
 暑さはまだまだ続く。


2019年8月5日(月)~10日(土) 北海道

 ハリオアマツバメの調査のため、北海道南部を訪れた。繁殖経過のモニタリング、長距離の追跡機器ジオロケータの装着と回収、局地移動の追跡機器GPSタグの装着と回収、給餌食物の採取などを行なった。
 調査は、気心の知れ合った研究仲間との合同調査。楽しく有意義な時間の中で、よい成果が得られた。
 調査地付近では、ハリオアマツバメのほか、アオジ、ハシブトガラ、ゴジュウカラ、ハクセキレイ、キバシリ、チゴハヤブサ(写真)、トビ、ノスリなどが見られた。
 日中は関東地方と変わりないくらいに暑かったが、夜は涼しくなり快適。北海道の魚介類、肉、野菜などの食事も楽しんだ。



2019年7月29日(月) 梅雨明け

 本日、ようやく関東甲信地方に梅雨明け宣言があった。平年より8日、昨年より30日遅い。すでにうだるような暑さが続いており、きょうも同じ。が、梅雨明けと聞いて、不思議と何かうれしい気分に。
 横浜北部の公園の池付近では、ウチワヤンマがよく見られている(写真)。尾の後方にうちわのような形の突起があるのが特徴、名前の由来になっている。ヤンマと名前がついているが、サナエトンボのなかま。
 最近購入して読んでいる本:『音楽の起源』(ニルス・ウォーリンほか編著、人間と歴史社、2013)、『障壁画全集』(美術出版社)の『知恩院』(土居次義ほか著、1969)と『名古屋城』(武田恒夫、1967)。『音楽の起源』は、8月に行なう予定の講演(「大自然のハーモニー、鳥たちが奏でる自然の音楽」)の参考に。『障壁画全集』は、襖絵などに描かれている鳥のことを調べるため。
 どちらも専門外のことではあるが、調べていてとても楽しい。


2019年7月26日(金) 夏日、始まる

 関東では、まだ梅雨明け宣言はされていないが、3日ほど前から真夏のような暑さが続いている。この暑さに合わせて、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシなどのセミ類が一斉に鳴き始めた。
 すっかり夏の気配だが、本日、台風6号が発生。紀伊半島沿岸から東方に進み、あすには関東に接近の予報。雨風が強まる。梅雨明けは、台風渡去後になる模様。
 横浜市北部の公園では、継続観察中のカイツブリが繁殖中だが、卵の数が減ってしまい、現在は一卵のみ(写真)。それでも親鳥は巣の補修をしつつ抱卵を続けている。



2019年7月25日(木) シュテファンさんの教授就任祝い

 中央大教授に就任したシュテファン・ホーテスさんのお祝い会を開いた。シュテファンさんは、30年ほど前、私が日本野鳥の会の研究センターにいたころに、ボランティアとしてドイツからやってきた(6月16日の項、参照)。きょうのお祝い会は、その当時に親しくしていた人たちで開いたものだ。会場は東京の水道橋「菩提樹」。
 30年ほども前のことだが、参加者の記憶はそれぞれかなり鮮明で、シュテファンさんをかこんで楽しい会話がはずんだ。みな、外見はともかく、雰囲気はあまり変わってないようだった。
 シュテファンさんの今後のさらなるご活躍に期待したい。写真は、お祝い会での記念撮影。

2019年7月22日(月) 2つの展示会

 今月下旬から、以下の2つの展示会が開かれている。

1. 特別展「アオバトのふしぎ-山のハト、海に行く」
   会場:神奈川県立生命の星・地球博物館
   会期:2019年7月20日(土)~11月10日(日)
   http://nh.kanagawa-museum.jp/exhibition/special/ex174.html
 
2.嶋田 忠「野生の瞬間―華麗なる鳥の世界」
   会場:東京都写真美術館
   会期:2019年7月23日(火)~9月23日(月)
   https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3412.html

 私はどちらの展示会にも多少関係している。どちらの催しも図録を出版しているが、両方に特別寄稿している。題名はそれぞれ「ハチクマの奇妙な生態と渡り」(神奈川県博)、嶋田忠「野生の瞬間に寄せて」(東写美館)。また、関連行事として、「アオバトのふしぎ」の方では10月19日(土)の午後に同博物館で講演することになっている。演題は「生き物のふしぎ」。「野生の瞬間」の方では、8月17日(土)の午後に嶋田忠さんと同美術館で対談する予定。タイトルは「鳥から学ぶ」。
 本日は、「野生の瞬間」のレセプションがあり、参加してきた。プレイヴェントも兼ねていて、展示も見ることができた。カワセミ、アカショウビン、ヤマセミなどのほか、ニューギニアのフウチョウ類各種のすばらしい写真が展示されていた。

2019年7月15日(月) 八王子

 鳥関係の知人を訪ねて、八王子に出かけた。知人は、ベニジュケイやヤマドリなどのキジ類を飼っていた。ベニジュケイを飼育している人はめずらしい。この鳥の雄は、全体に赤みを帯びたオレンジ色をしており、そこに灰白色の斑点を多数つけている。繁殖期には、鮮やかな青地に赤い奇妙な模様のある肉垂れを顔から大きく垂れ下げ、雌に求愛する。
 私も中学から大学の学部のころまでは、住まいの庭でいろいろなキジ類を飼育し、繁殖させていた。キンケイ、ギンケイ、ハッカン、キジ、ヤマドリ、チャボ、シャモなどだ。あの頃は、飼育小屋の前で鳥たちの行動を見るのが楽しみだった。いくら見ていても飽きることがなかった。また、かれらが産んだ卵をチャボや自作のふ卵器でふ化させ、ひなを育てるのが大きな楽しみだった。全体に茶色のひなたちは、どんどん大きく成長し、やがて目のさめるような美しい鳥に変身した。
 知人宅で飼育されている鳥たちを見ながら、少年時代の思い出にしばらくひたった。

2019年7月14日(日) 梅雨時の散策

 梅雨空のもと、横浜市北部の公園に出かけた。長靴をしっかりと履き、スワロフスキーの大きな傘を持参。
 池の中やほとりにカワセミやカルガモなど、道ばたにはノカンゾウのだいだい色の花など。ミズキが、まだ緑色の実をいっぱいつけている。繁殖期の鳥の調査が一段落したため、のんびりした気分で散策。
 湿気が多いためか、あちこちでキノコが見られた。名前はわからないが、5種ほどを確認。右の写真のキノコは、何か所かで地表面にびっしりと生えていた。
 関東の梅雨明けはいつごろだろうか。天気予報では、一週間後くらいかと言っている。


2019年7月5日(金) 東京の巣鴨小学校で講演

 豊島区にある巣鴨小学校の児童向けに講演した。環境教育の一環で、特定非営利活動法人Nature Center Risenからのお誘いだった。演題は「鳥ってすごい!鳥が私たちに教えてくれること~」。対象は4年生、70名ほど。ほかに、先生方や区の職員の方が参加していた。
 鳥の飛ぶ能力、渡り鳥のおどろきの旅、カラスの知恵などについて話した。子供たちの反応はすばらしくよく、ときおり感動の声があがり、いろいろな質問もあり、話しがいがあった。別れぎわには20名ほどの児童がやってきて握手をしていった。小学校で話すのはめったにないが(今回は二度目。一度目は母校の横浜市立八景小学校)、よい経験になった。
 終了後、教室の窓から子供たちの遊ぶ姿を見ていて、自分の小学生時代を思い出した。もう60年ほど前のことだが、今でも鮮明におぼえていることもある。景色や子供の格好はずいぶん違っているが、今も昔も快活に動きまわる子供たちの様子に変わりはない。

2019年7月3日(水) 『小鳥草子』 ピアノの夕べ

 『小鳥草子コトリノソウシ』(山と渓谷社、2018年)の著者、中村 文さんによるピアノのミニ・コンサートが開かれ、拝聴した。会場は、東京・神楽坂の香音里。
 中村 文はペンネーム、鳥仲間の中村恵美さんだ。中村さんはいろいろな才能をもっている。文章、イラスト、マンガ、どれも並のものではない。が、ピアノの才能もすばらしい!本日、はじめてじっくり聞かせていただいたが、正直、おどろいた。曲目は、ショパンの「幻想即興曲」、リストの「愛の夢」、シューマンの「トロイメライ」、グリーグの「小鳥」など。曲の間に、鳥たちとの出会いやふれあいについてのお話も。 
 今後のさらなるご活躍に期待したい。




2019年6月25日(火) カワセミ幼鳥

 梅雨の季節が進んでいる。雨が降ったりやんだり、暑くなったり涼しくなったり。ときには、真夏を想わせるような暑さ。ただし、まだセミの声はしない。
 よく出かける横浜北部の公園で、カワセミの幼鳥を見た(上の写真)。全体に成鳥よりもくすんだ羽色。かなり頻繁に水面に突っ込んでいくが、30分ほどたっても漁果はゼロ。まだ経験が浅いようだ。人をあまりおそれず、3mほどの距離にまでやってくる。
 池には、カルガモのつがいが2~3、子連れのカルガモが1、マルガモとカルガモのつがいが2つほどいる。カイツブリのつがいが何か所かに巣をつくりかけているが、産卵している様子はない。オナガが騒がしく動きまわっている。
 池には、ヒツジグサの白い花が、草地には、ホタルブクロ(下の写真)の薄紫色の花が咲いている。
 まだまだ梅雨は続く。



2019年6月20日(木) 姫路

 一昨日に続いて城めぐりをしているようだが、姫路を訪れた。目的はタカ類のサンプル採取。、東京大や鳥取大の研究者らが同行。訪問先は、姫路城内にある姫路市立動物園。
 サンプル採取が順調に進んだため、終了後にみなで姫路城の天守閣に登った。狭い急な階段の登りだったが、天守閣からの眺めはすばらしかった。もちろん、姫路城そのものもたいへん美しく、白鷺城の愛称にふさわしい様相を見せていた(写真)。
 動物園の方たちにはたいへんお世話になった。深く感謝している。




2019年6月18日(火) 名古屋で講演

 名古屋の環境共生・環境創造講演会で、「鳥のくらしと生物多様性の保全」について基調講演した。会場はウインクあいち、主催は(一社)環境創造研究センター。里山の自然や生きものの世界の紹介に始まり、鳥の渡り、温暖化が生物多様性に与える影響などについて話した。好評だったようで、講演後にいろいろな方に声をかけていただいた。
 講演会の前には、地元の方の案内で名古屋城を訪れ、昨年6月に復元された本丸御殿などを見学した。豪華絢爛の建物内部、とりわけ襖絵や天井板絵などを楽しんだ。
 日帰りだったが、有意義な一日をすごすことができた。

2019年6月17日(月) カルガモひなの成長

 横浜北部の公園の池で、カルガモのひなが順調に成長している(写真)。5月31日時点でふ化後3,4日だったので、生後3週間ほどになっている。それにしても成長が速い。雌親とともに泳ぎながら、水面から小さなものをすくいとったり、水中にもぐって何かをくわえとっている。
 昨年は、ふ化後次々にひなの数が減っていったが、今年は今のところ8羽のまま。ツミなどのタカ類が近くにいないためか。
 この池の周辺で子育てをしているのは、この一つがいだけ。ほかに4,5つがいいるが、ひなは連れていない。


2019年6月16日(月) うれしいニュース

 うれしいニュースが続いている。ドイツ人の生態学者、シュテファン・ホーテスさんが中央大学理工学部の教授になられた。シュテファンさんとは30年以上のお付き合い。本日、数年ぶりにお会いして近況をうかがった。
 思えば、シュテファンさんは17歳の時に日本を訪れ、日本野鳥の会の研究センターでボランティアをされた。当時、私は同研究センターの所長。シュテファンさんはこの時すでに日本語をほぼ完ぺきに読み書き会話されており、その才能に驚いたことをよくおぼえている。
 シュテファンさんはその後、再度日本を訪れ、北海道大学や東京大学に籍をおき、植生関連の研究を行なった。ドイツに戻ったのち、しばらくギーセン大学などに所属していたが、このたび中央大学の教授に就任されることになった次第。
 今後は、自然や生きものの世界と人間社会との接点にかかわる研究を推進するとともに、もともと関心の高かった鳥の研究も行なっていきたいとのこと。強力な研究仲間が加わることになる。

2019年6月13日(木) ハチクマの渡り経路安定性についての論文

 長年継続してきたハチクマの渡り追跡の結果にもとづき、渡りの経路や時期の安定性について書いた論文が、Biology Letters誌に掲載された。セントアンドリュース大学の菅澤承子さんとの共著。Biology Lettersは、英国のRoyal Societyが発行する学術誌。
 
Sugasawa, S. and Higuchi, H. 2019. Seasonal contrasts in individual consistency of oriental honey buzzards’ migration. Biology Letters 15: 20190131.http://dx.doi.org/10.1098/rsbl.2019.0131
 
 菅澤さんは、東大時代の私の研究室に在籍していた方で、修士課程ではサシバの渡り経路選択について研究していた。

 本論文では、東南アジア地域を対象に、
 個体の渡り経路や渡り時期が年を経て安定していること、
 ただし、安定性は長期滞在が認められる春の方で顕著であること
 また既存研究と異なり、渡りの時期よりも経路/中継地の方が安定していること、
 理由はハチ食を行なう場所が限定されているためであろうこと、
などについて明らかにしている。


2019年6月11日(火) ハチクマ調査

 ハチクマ関連の調査で、8日(水)から青森県の中央部にきている。このあたりはまだ梅雨に入っておらず、晴天が続いている。ニセアカシアが花盛り、あちこちで白い花をたくさんつけている。
 ハチクマは動きがちょっと鈍いが、調査はまずまず進んでいる。写真は昨日捕獲できた雌個体。黄色い目がきつい顔立ちをつくり出している。各種のサンプルを採取して、分析や実験にかける予定。
 ハチクマ以外では、ヒガラ、キビタキ、カワラヒワ、キセキレイ、カッコウ、ホトトギス、トビ、クマタカなどが見聞きできている。
 今回は総勢10名ほどで来ている。異なる分野の研究者との交流は、有意義で楽しい。


2019年6月6日(木) 葛西臨海公園

 早稲田大学オープンカレッジの講義/実習で、東京の江戸川区にある同地を訪れた。気温が30度Cを超えるなか、海浜や林、内陸湿地を見てまわった。
 干潟では、ウミネコ、コサギ、ダイサギ、チュウシャクシギ、ミヤコドリ、アオアシシギ、カワウ、カルガモ、ホシハジロなどが、林ではオナガ、ヒヨドリ、ムクドリ、シジュウカラなどが、湿地ではオオヨシキリ、ハクセキレイ、コチドリ、カイツブリ、アマサギ、アカガシラサギ(写真)などが見られた。
 鳥の観察と並行して、東京湾岸の自然や生きものの世界の変遷や、葛西臨海公園が設立された経緯、隣接する葛西海浜公園が昨年ラムサール条約の登録地となったことなどについて話した。
 この地は、いろいろな生きものを見ながら、自然環境の保全について考えるよい機会を与えてくれている。



2019年6月2日(日)、3日(月) 富士山麓

 知人の案内で富士山麓を訪れた。富士山の山頂には笠雲がかかり、全体に曇り空だったが、緑の草木の中に、橙色のレンゲツツジ(写真)や赤紫色のサンシキウツギの花々が彩りを添えていた。
 森や疎林の中では、アオジ、コルリ、キビタキ、イカル、モズ、アカモズ、クロツグミ、ヨタカ、ツツドリ、ホトトギスなどが、草原では、ホオアカ、ホオジロ、ノビタキ、ヒバリ、カッコウなどが見聞きできた。おそらく親子と思われる大小2頭のホンドギツネに出合うこともできた。
 かつてのあの鳥たちのにぎわいは見られなかったが、富士山の自然はやはり雄大ですばらしく、生きものの世界も興味深い。そんな大自然の中ですごすことができたのは、とても幸せだった。




2019年5月31日(金) カルガモ親子

 今年も、横浜北部の公園でカルガモの親子が見られている(写真)。きょう時点で、ひなは8羽、ふ化後3,4日ほど。親鳥とともに泳ぎながら、くちばしを水面につけて何かをつまみとったり、ときには潜水したりして、とてもかわいらしい。警戒心がほとんどないため、道行く人の足もと近くまで寄ってくる。
 この付近にカルガモは5,6つがいほどいるが、ひながかえっているのは写真のこの例だけ。ひなのいないつがいのそばを通り過ぎることがあるが、争いは起きない。これからしばらくは、ひなたちが成長していく様子を見ることができる。


2019年5月29日(水) 三宅島

 昨日から三宅島に滞在中。早朝、研究ステーションの周辺の草原では、ウチヤマセンニュウがさかんに囀っている(写真)。3つがいはいるようだ。
 島の南部、太路池周辺には、コマドリ、アカコッコ、イイジマムシクイ、ミソサザイ、メジロ、ヒヨドリ、ヤマガラ、シジュウカラ、コゲラ、ホトトギス、カラスバト、キジバト、ダイサギなどが生息している。とくに、イイジマムシクイ、カラスバト、ホトトギスの囀りがきわだっている。
 明るい林や照葉樹林の林縁部では、イボタやウツギの白い花が目につく。イボタの花の香りは強烈で、周囲の空気全体がこの香りで満ちているように感じられる。桑の実があちこちで黒く熟し、メジロ、ヒヨドリ、アカコッコなどの食物になっている。






2019年5月25日(金)~27日(日)  国際サシバサミットで講演

 栃木県市貝町で国際サシバサミットが開かれ、参加した。市貝町は、サシバの代表的な生息地で、東大時代に学生とともに10年近くサシバの生態研究をした場所だ。
 初日はプレ・イヴェント交流会、2日目は会合、3日目は現地視察という日程。2日目に、基調講演として「サシバ、渡り鳥が結ぶ人と自然」について話した。会場は小貝小学校体育館。国内外から300名近い参加者があった。
 2日目の会合では、私の講演以外に地元の保護団体や、国内各地、台湾、フィリピンなどの関係団体からいろいろな報告があった。サシバの保全をめぐってこれだけ多くの、またさまざまな関係者、関係団体が一堂に会する機会は今までなかった。すばらしい交流や情報交換の場になった。
 現地視察では、地元の遠藤孝一さんのご家族が中心になって運営する「サシバの里自然学校」を訪れた(上の写真)。古民家と周囲に広がる林や田んぼを利用して、いろいろな活動が展開されている。昼食に、お釜で炊いたご飯や地元の野菜、アユの塩焼きなどをいただいた。周辺地域の巡回中には、サシバを観察する機会にも恵まれた(下の写真)。
 とても充実した3日間だった。


2019年5月18日(土)~20日(月) 長野県野辺山

 好天のもと、鳥仲間と長野県南部の野辺山を訪れた。標高1500~1700mほどのところを見てまわったが、1700mあたりは木々の芽がまだ十分に開いていなかった。森や草原の新緑も、雪をかぶる八ヶ岳もたいへん美しく、鳥の世界も活気に満ちていた。
 草原や農耕地では、ノビタキ(上の写真)やモズ、カッコウが姿を現した。森の中ではアカハラ、クロツグミ、コルリ、ルリビタキ、キビタキ(下の写真)、コガラ、ゴジュウカラ、イカル、ミソサザイ、キバシリ、コムクドリなどがよく見られた。とりわけ、草原では黒・白・赤褐色のノビタキが、明るい森の中では、キビタキの黄・黒・白の羽色がきわだっていた。
 この地域一帯の森林には、ニホンジカが多数生息しており、林床植物の多くが食べられてしまっている。日中でも、ニホンジカが採食している様子はまれならず見られた。
 池沼にはミズバショウが白い苞をつけ、森の中では、トウゴクミツバツツジの薄紫色の花が咲きほこっていた。
 いつもながら、美しい景観やすばらしい生きものたちの世界に感動した。







2019年5月17日(金) 多摩川河口

 今季2度目の多摩川河口。潮の状態がよいこともあって、干潟ではキアシシギ、キョウジョシギ、チュウシャクシギなどのシギ類をはじめ、コアジサシ、ダイサギ、アオサギ、カワウなどをじっくりと観察することができた。
 繁殖時期が近いせいか、キアシシギもチュウシャクシギも、近寄りすぎた個体を追い払うような行動が見られた。チュウシャクシギは、翼を大きく広げて裏面を見せるようなこともしていた(下の写真)。求愛行動のように見えないこともなかった。
 キアシシギは、一か月ほど前に葛西のアオアシシギで見られたように、水面にくちばしをつけたまま走りまわりつつ、小さなものをくわえとっていた。とっていたのは、たぶん小魚。シギが走りまわると、小魚の群れが泳ぎまわり、周囲が小刻みに波立っていた。
 ヨシ原では、オオヨシキリがあちこちでさえずっていた(上の写真)。さえずる雄の間隔は数10mほど、密度はかなり高い。土手から見下ろす形で、楽しみながらしっかりと観察できる。



2019年5月14(火)、15日(水) 福生から奥多摩へ

 知人の案内で奥多摩を訪れた。深い谷沿いに発達した森林が新緑に染まり、たいへん美しかった。だが、おどろいたことに鳥たちの声や姿はとても少なかった。メジロ、ヒヨドリ、シジュウカラ、キビタキ、イカル、クロツグミなどの声がちらほら。この季節、これだけのすばらしい自然が広がっているのにどうしたことか。
 しかし、同じようなことは日本の各地で生じている。サンショウクイやサンコウチヨウなどの夏鳥が1980年代に急減し、その後、場所によっては復活してきているが、多くの地域ではいまださびしい限り。
 救われたのは、クマタカが空を悠然と舞っていたこと。奥多摩の空にクマタカの姿はよく似合う!
 林道でニホンザルの小群に出合った(写真)。人をあまりおそれる様子がなく、路上で腰をつけて休むものもいた。




2019年5月11日(日) 金沢八景・平潟落雁

 週末、横浜市南部の金沢八景駅から平潟湾方面を訪れる機会があった。このあたりは、私が高校時代まですごした場所。小中学生の頃は、平潟湾の水は澄んでおり、泳ぐ姿を見ながらハゼを釣ることができた。今は、すっかり様変わりしてしまっているが、それでも私の好きな景色の一つとなっている。
 左の写真は、天保6~7年(1835~36)に歌川広重が描いた金沢八景の一つ、平潟落雁。180年以上前、このあたりにはこんな景色が広がり、ガンも訪れていたのだろう。神奈川県立歴史博物館の解説文によると、「・・・中空に列をなして飛ぶ雁を配し、前の干潟では人々が潮干狩を楽しんでいる。遠景には規則正しく並ぶ名物の磯馴松が描かれ、さらに、その奥には白帆が見えるのどかな光景である」。

2019年5月7日(火) カイツブリの巣づくり

 横浜北部の公園で、カイツブリが巣づくりを始めている(写真)。白い花が咲くヒツジグサの間に、雌雄で巣材を積み上げている。まだ産卵には至っていない。
 池とその周辺には、カイツブリ以外にカルガモ、アオサギ、カワウ、ツミ、オナガ、ヒヨドリ、ハシボソガラスなどがすみついている。すっかり人馴れしたカルガモは、道ばたで背中にくちばしを突っ込んで休んでいる。人が1mほどのところを通り過ぎても、立ち去ろうとしない。つがいの一方しかいないものは、抱卵に入っているのだろう。
 木々はすっかり緑に包まれている。緑の濃さも増してきている。すでに初夏の気配がただよっている。






2019年5月5日(日) 葉山・森戸川

 連休も、きょうをふくめてあと2日。論文や依頼原稿の執筆、講演の準備などをいくつか済ませることができ、有意義な日々が続いている。昨日は、川崎の多摩川河口にオオヨシキリの観察に、きょうは葉山の森戸川に森の鳥の観察に出かけた。
 森戸川では、オオルリ、センダイムシクイ、サンコウチョウ、ウグイス、ガビチョウなどの姿や声を楽しんだ。サンコウチヨウは来てまだまもないようだ。
 森の緑がとても美しく、ミズキの白い花が緑の中できわだっている。小鳥たちがさえずり、コクサギの葉にカワトンボがとまり(上の写真)、木漏れ日がさす森の中は、おとぎの国のようにも感じられる。
 昼食は、私たち夫婦が「森のレストラン」と呼んでいる場所で。どこの高級レストランよりも、ぜいたくな雰囲気の中で食事をとることができる。
 ササやぶの一角にウグイスの巣があった(下の写真)。そっと覗いてみると、赤い卵が5つ。無事に子育てまで成功してほしい。

2019年5月3日(金) 三浦半島小網代

 今年のゴールデンウィークは10連休。遠出はやめて、三浦半島のいくつかの場所を訪れている。きょうは小網代から油壷あたりを散策。緑の森と湿地がとても美しかった。ノダフジ、ヤマツツジ、ハマダイコンなどの花が見頃。そこにアオスジアゲハ、カラスアゲハ、モンキアゲハ(写真)、アカタテハなどのチョウが飛びかっていた。
 鳥はウグイス、メジロ、ヒヨドリ、イソヒヨドリ、ガビチョウ、ハシブトガラス、カワウ、トビなど。一瞬、ヒクイナのような声が聞こえたが、未確認。
 連休中の好天の日とあって、たくさんの人が訪れていた。



2019年4月24日(水) セミナー「鳥類による構築行動-カレドニアガラスの道具作成に注目して」

 英国セントアンドリュース大学の菅澤承子さんに、上記テーマでセミナーを開いていただいた。菅澤さんは、私のいた東大の生物多様性科学研究室で修士課程を終えられたのち、渡英。セントアンドリュース大学でカレドニアガラスの道具作成にかかわる行動研究によりPh.D.を取得された。一時帰国されている機会を利用してお話しいただいた。会場は慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎。
 カレドニアガラスは、南太平洋のニューカレドニアにすむカラス。小枝を加工してフックのついた道具をつくり、樹木の穴などから昆虫の幼虫を取り出して食べることで知られる。飼育下でのいろいろな実験も行なわれており、おどろくほどの知能を発揮することがわかっている。菅澤さんは、現地に設置された飼育施設で、小枝からフック付きの道具をつくる過程をつぶさに観察し、結果をいくつかのすぐれた論文にまとめている。セミナーでは、その概要を紹介し、また鳥のくちばしがもつ機能性に関連した今後の研究の展開について話された。
 セミナー終了後には、懇親会が開かれ、鳥や行動分野の研究者などと楽しいひとときを過ごすことができた。




2019年4月22日(月) 葛西臨海公園

 好天のもと、東京江戸川区の葛西臨海公園に水鳥類の観察に出かけた。
 干潟には、すでに頭が黒くなったユリカモメの数百羽の群れが休んでいた。ホウロクシギ(上の写真)やミヤコドリ(下の写真)、コサギ、ダイサギなどもいて目を楽しませてくれた。ホウロクシギは大きく湾曲した嘴を砂泥に深く差し込み、貝などをくわえとっていた.
 内陸の湿地では、ハクセキレイ、コチドリ、イソシギ、アオアシシギ、チュウシャクシギ、カイツブリ、ホシハジロ、キンクロハジロ、カワウなどが採食または休息していた。 
 興味深かったのはアオアシシギ。水面にくちばしをつけたまま足早に動きまわりつつ、小さなものをくわえとっていた。この行動は時おり見られるが、今回は2,3羽がさかんにやっていた。とても素早い行動で、見がいがあった。
 のんびりと、じっくりと鳥たちの観察ができ、よい一日だった。

2019年4月19日(金) 若緑広がる

 サクラの花が散り、木々が緑の葉を広げ始めた。横浜北部、仲町台のせせらぎ公園では、ケヤキやコナラの新緑が始まっている。空気が薄緑に染まっているかに見える(写真)。
 公園に続く道沿いには、まったく人おじしないカルガモが何羽もいる。1週間ほど前までは、どれも2羽のつがいになっていたが、このところ1羽だけになっているものが目につく。雌の方が産卵し、抱卵に入っているようだ。マルガモのつがいも、雄1羽だけが姿を見せている。
 カイツブリのつがいも、巣づくりを始めたようだ。昨年どうよう、ツミが姿を現した。シャガやシラン、ヤマブキなどの花も咲き、生命(いのち)が躍動してきている。



2019年4月14日(日) 三宅島2

 島の南西部にある富賀神社の付近に、近年にはめずらしく、あまり人おじしないアカコッコの雄がいた。私から2mほどのところに現れ、採食していた。イタチ放獣前にはめずらしい光景ではなかったが、近年ではきわめてまれと言える。おかげで、じっくりと観察することができた。
 研究ステーションのすぐそばの海岸には、ハヤブサの幼鳥がいた。突き出した岩の上に止まって、ヒヨドリか何かをねらっているようだった(写真)。ただし、狩りはなかなか成功せず、やがて姿を消した。
 研究ステーションからほど近い火の山峠入り口では、ヒダリマキマイマイが路上を移動していた。マイマイ類は2000年噴火のさいの土石流や火山ガスの噴出によって激減し、見かけることは非常に少なくなった。

2019年4月13日(土) 三宅島

 きょうから三宅島。噴火後の生態系回復状況の調査が目的。午前中と午後の2回、太路池へ。
 森の中では、コマドリ、イイジマムシクイ、ミソサザイ、ウグイス、シジュウカラ、ヤマガラなどが囀っていた。ちょっと変わったところでは、クロツグミが池のほとりの林内でさかんに囀っていた。私にとっては、50年間で初めての記録。
 水辺では、チュウサギなどのシラサギが15羽ほど、緑の景色の中できわだっていた(写真)。渡りの途中と考えられる。こんなにまとまって見られるのはめずらしい。アオサギ3羽、オオバン約10羽、オシドリの雌1羽。
 好天にも恵まれ、すばらしい一日だった。





2019年4月6日(土) 八丈小島のクロアシアホウドリ

 今年も八丈小島にクロアシアホウドリの繁殖地を訪れた。昨年より急激に繁殖個体数が増え、今期は30羽近いひなが生長している(昨年は7羽)。繁殖地のあちこちで、まだ繁殖に至らないつがいや、盛んに求愛行動を行なう若鳥の群れなどが見られる。今後、順調に進めば、100羽を超えるつがいが繁殖するものと思われる。うれしい限りだ。
 産卵に至らないつがいが、2羽で巣にずっと座ったままでいる光景は、じつにほほえましい(上の写真)。来季に向けて、きずなを深めているように見える。成長しつつあるひなは、もふもふの羽毛に包まれ、たいへんかわいい(下の写真)。人をまったくおそれず、奇妙なものを見るようなそぶりで人を見つめる。
 今後の保全上の課題としては、ネズミやカラスなどによる捕食の回避、繁殖地の環境管理、調査・保全体制の強化などがある。これらがうまく進めば、八丈小島がアホウドリ類の一大繁殖地になることはまちがいない。

 なお、現在、小島のクロアシアホウドリの繁殖地への立ち入りは、地元の関係団体などによって厳しく規制されている。

2019年3月30日(土) 久しぶりの弘明寺公園

 横浜市東部にある弘明寺公園。カラスによる水道の栓まわし行動を観察したこの地を久しぶりに訪れた。曇りがちの天気だったが、園内は花見客でにぎわっていた。ソメイヨシノもオオシマザクラもヤマザクラも満開。人のにぎわいのなか、カラスの姿はちらりほらり。
 ハシボソガラスによる水道の栓まわし行動を観察し始めたのは、昨年の3月中旬。その後、栓をまわす雌ガラスが消失する4月下旬まで、頻繁に公園に通った。水を飲む時と浴びる時で栓のまわし方と出す水の量を変えるカラスの行動を、胸をときめかしながら観察した。この「折々の記録」の今月初めの項にあるように、観察結果は論文にまとまり、新聞やテレビをもにぎわした。
 あの水道ガラスと過ごしたひと月半、ほんとうに幸せだった。水場から5,6mほど離れたベンチに腰かけ、暖かな日差しを浴びながらの観察。世界的にも珍しい光景をじっくりと味わうことのできる充実感。あんなすばらしい時間は、もうこないかもしれない。
 そんな思いを抱きつつ、美しい春景色の中の散策を楽しんだ。



2019年3月28日(木) サクラ見頃

 東京、横浜や湘南地方では、サクラが見頃を迎えている。本日、東京ではソメイヨシノが満開とのこと。横浜では、ソメイヨシノ、ヤマザクラ、オオシマザクラ、シダレザクラ、カワヅザクラがすべて見頃。サクラの木の下で花見をしている人たちを、あちこちで見かける(写真)。気象庁などによると、今年は例年より満開の時期が5日以上早いようだ。
 サクラの花には、メジロやヒヨドリが次々にやってきて花蜜を吸っている。モミジやケヤキの木々は、すでに若葉を出し始めている。その間をエナガのつがいが飛びまわっている。すでに巣づくりや抱卵に入っているようだ。
 冬のあいだ見かけなかった場所で、ジョウビタキを見かける。が、すぐに姿を消していく。北への旅立ちが始まっているようだ。

2019年3月21日(木) サクラ開花

 摂氏20度になる暖かな春分の日、東京や横浜で気象庁によるソメイヨシノの開花宣言があった。横浜北部、徳生公園の日当たりのよい場所では、すでに数日前に開花し、美しい花を見せているところもある。コブシの花はあちこちで見ごろ。
 徳生公園の池では、キンクロハジロが30~40羽ほど群れている。白黒の雄が8割ほどを占め、池の景色を美しく彩っている(写真)。カルガモは2羽ずつのつがいに分かれ、ゆったりと過ごしている。コサギは、水辺で静かに採食しながら、冠羽や背中の飾り羽を春の風にたなびかせている。



2019年3月9日(土)  ヒキガエルの産卵

 久しぶりに横浜北部の県立四季の森公園を訪れた。ウメやロウバイが満開、モモが見ごろ、フクジュソウの開花やフキノトウなど、植物の世界はにぎわっていた。鳥は、シジュウカラ、ヒヨドリ、メジロ、カルガモ、カワセミ、コサギなど。
 一番目立ったのは、二ホンヒキガエル。池沼に多数の個体が集まり、コッコッコッコッコッという声を出しながら、交尾(写真)、産卵、追いかけあいなどをしていた。ひも状の卵塊が多数見られた。
 暖かい日だったので、池の中のアカミミガメがみな、石の上などで日向ぼっこをしていた。

2019年3月5日(火) 水道の栓まわしガラスについての報道

 ここ数日、British Birds誌に掲載されたカラスの特異な行動についての報道が、新聞やテレビをにぎわせている。以下は、朝日新聞の記事(3月2日、朝日新聞デジタル)。動画にアクセスできる。

 https://digital.asahi.com/articles/ASM3161QTM31ULBJ00W.html

 テレビでは、3日から5日にかけて以下の情報番組や報道番組などで放送された。テレビ朝日(グッドモーニング、羽鳥慎一モーニングショー、ワイドスクランブル、スーパーJチャンネル、Abema News)、TBSテレビ(あさチャン!、ビビット、めざましテレビ、Nスタ)、フジテレビ(とくダネ、プライムニュースイブニング)、日本テレビ(スッキリ、ニュースエヴリィ)、CBCテレビ(ゴゴスマ)、毎日放送(ちちんぷいぷい)。
 反響はあると思っていたが、予想をはるかに超えて、ここ数日は各局、各番組への対応に追われた。まだしばらくは、関連の報道が続くようだ。
 視聴者からも関連の情報が寄せられ、うれしい日々を送っている。

2019年3月1日(金) カラスによる野外水道の栓まわし行動論文を発表

 上記の論文がBritish Birds誌に掲載された。書誌情報は以下。
Higuchi, H. 2019. Carrion Crow manipulating water taps for drinking and bathing. British Birds 112:167-169.
 論文の要点は以下の通り。
★昨春、横浜市の公園で野外の水道の栓をまわして水を飲むカラスを観察。
★栓をまわして水を飲むのは、公園をなわばりにしていたつがいの雌。
 雄は雌が出した水を飲みに来るだけで、自分では栓をまわすことはしなかった(できなかった)。
★この雌は、飲水のためだけでなく、水浴のためにも栓をまわした。
★飲水時と水浴時では、栓のまわし方や出す水の量が違っていた(写真)。
★栓のまわし方は、飲水、水浴ともに厳密に決まっており、一番効率的な方法だった。
★公園内には、問題のつがい以外に10数羽のカラスがすんでおり、野外水道へのアクセスは可能であったが、栓をまわして飲水や水浴をする個体は一羽もいなかった。
★この雌は残念ながらオオタカか何かに襲われて死亡してしまった。
★都市にすむカラスが、人間のつくり出したもの、水道を巧みに使って生きていることが注目される。


 栓の内側を嘴でコツンとたたき、水を少しだけ出して飲む。


 栓の縁を嘴でくわえてぎゅっとひねり、大量の水を出して浴びる。


2019年2月24日(日) ウグイスのさえずり

 暖かな日差しのもと、葉山の久留和の里を散策した。梅の花が見ごろ、あちこちでメジロ(写真)やヒヨドリが蜜を吸いにきていた。ウメ以外に河津桜も見ごろを迎えている。白とピンクの花々が野山を彩っていた。メジロは河津桜にもやってくる。
 ウグイスのさえずりが、何か所かで聞かれた。私にとっては今年初めて。いつ聞いても、ウグイスのさえずりは心地よい。シジュウカラも、さかんにさえずっていた。
 3か所ほどで、エナガが2羽ずつに分かれて飛びまわっていた。そろそろ巣づくりの季節。
 いよいよ、春が来た!

2019年2月22日(金) 「ニワトリはなぜ首を振って歩くのか?」

 NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる!」で、上記のテーマが取り上げられ、解説の役目をになった。NHK総合テレビ、夜の8時台に放送された。

   http://www4.nhk.or.jp/chikochan/

 テーマの答えは、鳥の目が頭の横についていること、眼球を動かせないことと関係している。歩行している間に目に映る像が流れてしまうので、像を一瞬止めてしっかり周囲を見る必要がある。そこで、振っている頭をいっとき固定することを繰り返す。そのため、前後に振っているように見える、ということだ。簡単な話ではあるが、わかりやすく理解してもらうのにちょっと工夫が必要。番組では、パントマイムなども使いながらおもしろく説明してもらった。
 鳥の首振りは、地上を歩きながら足もと近くの食物を見つけて食べる鳥に見られる。キジ類やハト類、ツル類やクイナ類などがその代表だ。目が横についている鳥では、歩いている間、遠くより足もと近くの方が像がぶれやすい。したがって、眼の位置を一瞬止めながら、しっかりと近くを見ているわけだ。
 たかが鳥の首振り、と思われるかもしれないが、意外に興味深い問題が潜んでいる。くわしく知りたい方は、藤田祐樹(2015)『ハトはなぜ首を振って歩くのか』(岩波書店)を参照されたい。関連の問題についてきっちりと書かれた好著だ。
 この番組は、あすの朝、8時台に再放送される。

2019年2月15日 『旅する動物図鑑②空の生きもの』の出版

 本日、上記の書籍が筑摩書房から出た。著者は水野昌彦さん、私は監修をつとめた。監修の役割ではあったが、かなり突っ込んでかかわったので、出版をうれしく思っている。
 本書では、鳥から哺乳類、昆虫、クモまで14種(類)の動物の空の旅を紹介している。登場するのは、キョクアジサシ、アネハヅル、ツバメ、シロハラアマツバメ、ハチクマ、オオフラミンゴ、カワラバト、メキシコオヒキコウモリ、オオカバマダラ、アサギマダラ、ウスバキトンボ、サバクトビバッタ、クモ類、トビウオ。それぞれで、移動の時期、経路、方法、理由などを紹介している。
 子供向きの書籍ではあるが、個々の動物の旅の概要を知る上で大人にも楽しめる内容になっている。このシリーズでは、ほかに①陸の生きもの、②海の生きもの、の2冊が出版されている。




2019年2月10日(日) 梅の開花

 湘南地方では、ウメの開花を迎えている。場所によって大きく違うが、陽だまりなどではすでに八分咲きになっているところもある。
 きょうは、三浦半島の津久井浜方面を散策した。畑の縁のウメが、一分咲きから二分咲きほどになっていた。そこはかとなく咲くウメの花を見ながら、早春の訪れを感じた。
 畑や小川沿いでは、ハクセキレイ、カワセミ、コサギ、コガモ、カルガモ、トビなどが見られた。
 風は冷たかったが、快適な一日をすごすことができた。


2019年1月23日(水) 舞岡

 このところ舞岡通いをしている。今年は、タシギがきておらず、ちょっとさみしい。その代わり、クイナの姿が見られる。ただし、なかなかきちんとは現れない。例年になくシメが多い。しかも、人をほとんどおそれない個体がいる。アオジやカシラダカも目につく。ヤマシギやアリスイもいるにはいるが、なかなか目につかない。ガビチョウは相変わらず目立つ存在。
 この時期、タイワンリスの動きが活発。見られる個体数も多い。
 きょう不思議に思ったのは、舞岡駅から舞岡公園に至る水路内のあちこちに多数のシジミの死骸があったこと(写真)。どうやら、上流方面に生息するシジミが何らかの原因で死亡し、このあたりに流れ着いてきた模様。この地域にシジミがこんなにたくさんいるのは知られていなかったのでは。





2019年1月12日(土) 横浜市舞岡

 曇り空のもと、今年初めての舞岡。昨年末までいたオジロビタキは、環境改変のため姿を消していたが、シメ(上の写真)、アオジ、クイナ、ガビチョウ、ハシボソガラスなどがよく観察できた。シメやアオジの中には、ほとんど人おじしない個体がいた。ガビチョウは、あまりさえずっていなかった。落ち葉をひっくり返しながら採食している個体が目立った。クイナは湿地の草むらの間で、泥の中にくちばしを差し込んで採食していた。
 ハシボソガラスについては、路上で車にひかれた木の実を食べているものがいた(下の写真)。途中からしか見られなかったので、どのように置いたのか落としたのかは不明。木の実は、かたい殻のあとがなかったので、クルミではないかもしれない。砕けた身を丹念にはがしながらしつこく食べていた。
 池には、コガモとカルガモ、カワセミがいた。コガモは雌のみ2羽。
 この時期には珍しく、人の姿がまばらだった。

2019年1月1日 神奈川県真鶴岬

 迎春。新しい年が始まった。このところ、1年の経つのがはやく感じられる。歳のせいだろうか。今年一年が健康面でも研究面でもよい年であることを願いたい。
 晴天のもと、夫婦で神奈川県西部の真鶴岬を訪れた。途中、列車の窓から雪をかぶった富士山を遠望。正月らしい景色。
 岬では、クスノキの大木が生い茂る森を抜けて海岸へ。熱海の初島、伊豆諸島の大島、伊豆半島などを望む。夫婦岩(写真。名称不詳)をながめながら、ウミウ、トビ、ユリカモメ、ウミネコ、セグロカモメなどを観察。クロサギの姿は見られず。森の中に再び入り、シジュウカラ、ヤマガラ、ヒヨドリ、メジロなどを観察。
 真鶴岬の森林は、魚付き林として知られる。魚つき林とは、海に豊かな栄養分をもたらし、魚群誘致や漁場保全に貢献する森林のこと。神奈川県内では屈指の大きな森だ。



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