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折々の記録
 
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2023年



12月21日撮影


10月7日撮影
2023年12月21日(木) 白いカワセミ

 10月上旬に続いて、柏尾川に再度、白いカワセミを見に出かけた。白いカワセミは、元気に飛びまわっていた。10月と比べると、色合いが全体に多少濃くなっていた。
 この白いカワセミの件、以下に少しまとめておく。
 カワセミは、全体として体の上面が青い色、体下面は褐色あるいは橙色をしている。このうち、褐色はメラニン色素による色。青い色は、羽毛(厳密には羽枝)内の微細構造に光があたって生み出される構造色。ただし、構造色の青い体上面も、地色はメラニン色素による暗褐色。
 この白いカワセミをよく見てみると、全体に白いわけではなく、体下面の一部の褐色がメラニン色素の欠如により部分白化している一方、体上面は翼をふくめて淡いが青色をしている。構造色自体はメラニンが欠如しても発色するので、青い色が残っていると見られる。青の淡い程度は体の部位によって異なるが、ふつうのカワセミの青色からすると、この白いカワセミは明らかに淡い。
 このあたりが、この白いカワセミのおもしろいところ。白化は、体下面の褐色部分の一部に見られるが、おそらく体上面の地の暗褐色の羽毛にも生じている。地色が白化しているので、構造色の青い色が鮮やかさを失い、淡い青色に見えているのだと思われる。
 つまり、この白いカワセミは、以下のことを伝えてくれている。
1. カワセミの羽色は、色素由来の褐色と構造色由来の青色からなっている。
2. 体下面の色素由来の褐色は白化するが、体上面の構造色の青は残る。
3. しかし、体上面の地の暗褐色の羽毛も白化しているので、そのもとで構造色由来の青い色が淡く見えている。
4. 言い換えれば、色素由来の暗褐色の地色が、青い構造色をきわだたせる上で「裏打ち」として重要な役割を果たしている。普通のカワセミは、体上面の地色も暗褐色なので、青い構造色がきわだって見えるのだ。カワセミは、メラニン由来の暗褐色と構造色の青を組み合わせて、コバルトブルーの羽色をきわだたせるように進化してきたのだと思われる。
5. 淡くなっている程度は、背面、翼、尾など体の部位によって異なるが、裏打ちされている羽毛の白化の程度が関係している可能性がある。たとえば、翼の裏面の暗褐色は消失し、ほぼ白に見える。そのため、裏打ちの役割を果たすことができず、翼のおもて面の青色はほぼ消え、白に見える。
参考画像:https://ameblo.jp/kaikyou-kawasemi/entry-12821262936.html

6. この白いカワセミによって、カワセミの羽色の決まり方を理解することができるのである。

2023年12月1日(金)、21日(木) 番組謝罪

 11月23日(木)、テレビ朝日の「林修の今知りたいでしょ!」という番組の中のこと。カラスが群れになることをめぐって、私が、「冬は寒さをしのぐために群れをつくる集団生活期。カラスは集団ねぐらをつくり、身を寄せ合って過ごす」と話している、と放送されてしまった。取材される中で、私はそのようなことは一切話していない。そもそも、この「解説」は、明らかな誤り。カラスは寒さしのぎのために群れているのではないし、カラスが身を寄せ合って、といったこともない。カラスは群れて休んでいても、個体どうしは少しずつ離れている。群れがくっついて暖をとるなどいうことはない。こんなまちがったことを私が話すことなどありえないのだが、私の話として流されてしまったのだ。
 火のないところに煙は立たない、と言うが、まったく話していない、しかも誤った情報を、番組は私の話として流したのだ。私が話したという誤った内容は、担当のディレクターがインターネットをながめて適当につくったものだとのこと。
 担当者や担当部署には抗議して、訂正と謝罪を求めている。その一つの結果として、12月1日、番組ホームページの冒頭に謝罪文が出た。

  林修の今知りたいでしょ!|テレビ朝日 (tv-asahi.co.jp)

 また、12月21日(木)には、放送番組の冒頭でも謝罪が述べられた。

  https://news.yahoo.co.jp/articles/657e139ec35fe6b63751ea36436f4af552ca3689
  
 しかし、番組ホームページに謝罪文が出ても、番組で謝罪が述べられても、見る人は限られている。また、テレビで流れてしまったことを取り戻すことはできない。番組の制作者には、猛省を促したい。

2023年11月9日(木)~11日(金) 富山方面

 環境関連の会議出席と富山市近郊での鳥類観察のため、富山を訪れた。
 会議は1日半、その後は鳥の観察。鳥の観察では、知人の案内により、雨晴(あまはらし)海岸でクロサギ(写真)やカルガモなど、富山新港臨海野鳥園でコガモをはじめとした多数のカモ類などを見て楽しんだ。

 富山市内とその近郊のいくつかの場所では、遠く、立山連峰を望むことができた。
 



2023年11月8日(水) 人馴れヤマドリ

 親しい知人の案内で、東京西部の森林にいる人おじしないヤマドリの観察に出かけた。このヤマドリの雄は、何か月も前から同じ場所に居ついており、私たちが出かけた折にもすぐに姿を現わした。換羽が終了してまもないこともあって、羽毛は金剛色に輝き、尾は体の2倍以上の長さがあった。
 事前の情報通り、この鳥は、私たちのまわりを動きまわったり、ときに攻撃するような行動を見せた。私たちは3人でいたが、おそれる様子はまったくなかった。付近に雌はいなかった。
 こうした独身雄の人馴れヤマドリは、珍しくはあるのだが、本州や九州のいくつかの地域で観察されている。関連の論文は以下のとおり。
 
 坂梨仁彦,坂口里美,樋口広芳.2018.人馴れヤマドリの由来とその特異な行動.Strix 34:81-94.

2023年9月23日(土)、24日(日) 白樺峠、乗鞍方面

 23日、インドネシアのボゴール農科大学のSyartinilia教授を案内して、長野県北部の白樺峠に出かけた。サシバやハチクマなどの渡りを見るためだ。Syartiniliaさん、通称Liaさん(女性)は、ジャワクマタカの生息環境解析により東京大学で博士号を取得した方だ。その後、ハチクマの越冬環境の解析や温暖化による分布域の変化などについて、私と共同研究している。
 白樺峠では、サシバやハチクマなどの群れが上昇気流に乗り、タカ柱をつくる様子などを見ることができた。観察場所となるタカ見広場には、数100人になる人が訪れていた(写真)。
 乗鞍岳では、山頂付近でイワヒバリやホシガラスを観察した。短い時間だったので、ライチョウには出合うことがなかった。
 この旅には、地元で山岳ガイドをする植松晃岳さんが同行してくださった。植松さんは信州ワシタカ類渡り調査研究グループのメンバーでもある。おかげで、とても有意義な時を過ごすことができた。感謝!


2023年9月15日(金)~18日(月) 日本鳥学会金沢大会

 金沢市内の金沢大学で鳥学会の大会が開かれ、参加した。数10年前で開かれたのとは異なる新キャンパス。市内から会場までの交通の便はあまりよくなかったが、会場は快適な空間だった。
 私は、「サシバは船に乗って旅をする!」という口頭発表をした。台湾猛禽研究会の呉盈瑩さんと林 勇智さんとの共同発表。春、サシバの群れがフィリピンから台湾方面に北上するさい、夜間、船の甲板などに降りて過ごす、という内容だ。呉さんは東大時代の研究室OG、林さんは呉さんのお仲間。お二人は出席していないので、私が講演した。ほかにも、ハリオアマツバメの巣箱出入り時間、ミゾゴイの渡り衛星追跡、富士山麓のヨタカの繁殖環境特性、日本沿岸地域の海鳥分布、チゴモズの繁殖環境の保全についても共同発表した。
 大会終了後には、兼六園や金沢城公園を訪れた。

2023年9月6日(水) 新刊案内

『世界を翔ける翼』に続いて、同じ出版社から、鳥の生態や行動を扱う楽しい大型絵本が出版された。私は翻訳の監修を務めた。

★ティム・バークヘッド、キャサリン・レイナ―著『鳥になって感じてみよう』.
化学同人,京都.(水野裕紀子訳、樋口広芳監修).定価2,500円+税。
https://www.kagakudojin.co.jp/book/b631538.html

著者のバークヘッドはイギリスの著名な鳥類学者、レイナ―は絵本作家でイラストレーター。バークヘッドの鳥類関連の本は、これまで『鳥たちの驚異的な感覚世界』(河出書房新社)や『鳥の卵―小さなカプセルに秘められた大きな謎』(白揚社)などいくつか出ているが、今回の本は児童向けに構成された大型絵本だ。以下のようないろいろな話題や鳥たちが登場する。大人が読んでも楽しい内容だ。

「鳥はなにを、どんなふうに感じているの? /ダンスでプロポーズ キモモマイコドリ / 暗やみに生きる アブラヨタカ /湖の王さまと王妃さま コブハクチョウ / 合唱の練習 カササギフエガラス /命を守るポケット コウテイペンギン / ぜんぜん平凡じゃない マガモ /大海原をこえて オオソリハシシギ / 耳をすます狩人 カラフトフクロウ /ハチミツはこちら ミツオシエ / 空から急降下 ハヤブサ /キツネをだます アカアシイワシャコ / 雪そり遊びの初心者コース ワタリガラス /飛び立ちの準備、完了! アメリカヒレアシ / ジグザグ飛行 ワタリアホウドリ /羽毛のある友だち インコのなかま / まほうのコンパス ヨーロッパコマドリ /にぎやかな海鳥のまち ウミガラス / とにかく木をつつく キツツキのなかま /しげみのなかのかくれ家 エナガ / ガをつかまえる ヨーロッパヨタカ /鳥の感覚」



2023年8月8日(火) 新刊案内

 鳥の渡りをめぐる強烈な一冊が出版された。

★スコット・ワイデンソール著『世界をかける翼ー渡り鳥の壮大な旅』
 樋口広芳 監訳、岩崎晋也 訳。化学同人社刊 3,800円+税
 https://www.kagakudojin.co.jp/book/b628946
 
 著者のスコット・ワイデンソールは、鳥類学者ではあるが、大学や研究所などに所属する、いわゆる機関研究者ではない。しかし、鳥の渡りについての彼の知識と経験は、並はずれたものがある。足環標識から最新の衛星追跡やジオロケーターの利用、レーダー追跡に至るまで、さまざまな経験を積み、知識を重ねている。渡り鳥を求めて、世界の各地を旅し、数多くの研究者や保全関係者と交流を深めている。そうした様子が、本書の中にふんだんに盛り込まれている。
 ワイデンソールは作家としても名をあげている。巧みな筆さばきは随所に見られ、本書を読み進めれば、目の前に広がる景観や鳥が渡りゆく姿をいろいろに思い描くことができる。また、かかわりのある人々の心の機微などを豊かに感じとることもできる。単なる知識や経験を紹介するだけでなく、物語の要素を織り交ぜながら話を展開していることで、読み物としての魅力を十分に発揮している。最近の鳥/生物関連の読み物では、リチャード・プラム著『美の進化』(黒沢令子訳、白揚社、2020年)と並ぶ珠玉の一冊だ。 
 私は監訳者として翻訳全体の改善に努めた。また、巻末に解説を書いた。上に述べた案内文は、その一部だ。

2023年7月下旬および8月下旬 北海道十勝

 7月は例年実施しているハリオアマツバメの生態調査、8月は会議と鳥類観察のため、十勝地方を訪れた。
 ハリオアマツバメ調査は、東大時代の研究室OBやOG、地元の研究者などとの共同研究。調査地内に設置した巣箱内に出入りする個体を捕獲し、ジオロケーターやGPSタグなどの装着と再回収などを行なった。新規捕獲も再回収も順調に進み、多くの情報が得られた。
 8月は、環境関連の会議ののち、親しい知人の案内で、帯広市内と近隣の湿地などを訪れた。いくつかの湿原や草原をめぐり、タンチョウの親子(写真)やノビタキなどを観察。短い期間ではあったが、有意義な時を過ごすことができた。

2023年6月17日(土)~19日(月) 三宅島

 2000年噴火後の定期的な生態系回復状況調査。行きは東京調布からの空路、帰りは船旅。
 太路池、村道雄山線、薬師堂、伊豆岬、神着研究ステーション周辺、椎取神社などの森林や草原で鳥類調査。
 太路池周辺や薬師堂、椎取神社の森林では、メジロ、ヒヨドリ、ウグイス、イイジマムシクイ、アカコッコ、、コマドリ、ミソサザイ、ホトトギス、カラスバトなどの常連が目立つが、ヤマガラは減少したまま。ただし、今期、研究ステーション近隣に架けた巣箱の一つでは、ヤマガラが繁殖した(上の写真)。
 伊豆岬や研究ステーション周辺の草原では、ウチヤマセンニュウが元気に囀っている(下の写真)。海岸の岩場には、イソヒヨドリがただずみ、上空にはアマツバメの群れ。

 村道雄山線の植生はさらに回復を見せている。山腹の環状線周辺では、オオバヤシャブシが上方に向かって拡がっている。環状線より下の部分では、ハチジョウススキが後退する一方、ヒサカキやオオバヤシャブシが拡がっている。
 海岸の草原では、ハマカンゾウの橙色の花が目につく。
 夜、眠りにつく前、海岸の波打ちぎわで引いては寄せる波の音が響いてくる。





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